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産休・育休中の者に対する賞与減額・不支給の可否


 男女雇用機会均等法 第9条3項(以下、均等法)では「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定められており、指針で示される不利益取扱の例の1つに「賞与等において不利益な算定を行うこと」が含まれています。

 従って、「賞与の不支給の判断や減額算定を行う理由が妊娠や出産であってはならない」という事になり、逆に言えば「妊娠や出産が理由ではない」のであれば不支給や減額も是認されうるという事になります。

 例えば、住宅販売会社の営業職の査定方式において、評価期間中の出勤率90%以上を支給対象者とした上で完全歩合型賞与を採用している場合、妊娠・出産を理由に出勤率が90%に満たない事を理由として賞与支給対象者から除外することは均等法違反にあたる可能性が高いですが(年間総収入に占める賞与の比重等で事案毎に判断される)、支給対象者には含めたものの販売実績がゼロなのでその他の社員と同様に賞与不支給とする取扱いは問題ないという事になります。

 即ち、「出勤出来なかったのだから販売出来ないのは当然なので一部支給する必要がある」という主張は「完全歩合型賞与が有効である事」を前提として通らない事になります。

 一方、この賞与に最低保障部分が含まれており、評価期間における実勤務期間に比例して最低保障部分が決まる制度においては、産休・育休期間を除外した実勤務期間を基準に最低保障部分の支給額を取り決める事は基本的に有効です。

 但し、この場合でも労働者の被る不利益等との総合的較量によっては民事的に争われて無効となることもありますのでご注意ください。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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