ヨドロウ(社会保険労務士法人 淀川労務協会)

業歴60年。新大阪の「社会保険労務士法人 淀川労務協会」です。(職員:30名、顧問先:…

ヨドロウ(社会保険労務士法人 淀川労務協会)

業歴60年。新大阪の「社会保険労務士法人 淀川労務協会」です。(職員:30名、顧問先:約650社) 人事コンサルティングと社会保険事務のアウトソーシングが主業務です。 記事執筆:三浦 裕樹/MIURA,Yūki TEL:06-6676-7750

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《コラム》 パワハラのメカニズム

パワハラが起きるメカニズムの一形態について、少し述べてみたいと思います。 部下の育成や指導には様々な手法がありますが、指導しても部下から期待した反応や効果が得られない場合に、自分の「理論」や「考え」を更に相手に受け容れて貰いたいと望み、それに拘り、屋上に屋を架すように自分の理論を受け入れて貰うための「別の理論」を重ねて使おうとすることがあります。 この現象は、往々にして、次のいずれか、もしくはその両方により生じます。 ❶の傾向が強い方の口癖は、「俺が若い頃は・・・」とか

    • 早出残業と居残残業

      残業とは、労働契約上の所定労働時間を超えて労働した時間のことを言います。 従って、早出残業と、所謂、居残残業(所定終業時刻後の労働)の時間外労働時間としての法的性質は全く同じです。 一方、労働基準法上の労働時間となる「使用者の指揮命令下にある時間」、つまり労働時間該当性は、労使で争われた場合、裁判所の評価はやや異なります。 居残り残業は、通常はそれまでの労働から引き続いて為されるものですから、使用者が「職場に滞在はしていたけれども、労働には従事していなかった」とする客観性

      • 営業中の休憩時の怪我と労災認定

        A:労働者が業務上の負傷の認定を受けるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。 1)業務と傷病等との間に一定の因果関係があること【業務起因性】 2)労働関係に伴う危険が現実化したものと経験法則上認められること【業務遂行性】 ※業務起因性が認められるためには、先に業務遂行性が認められる必要がある。 まず、出張中は、その出張業務の目的や遂行方法について「包括的」に事業主が責任を負い、使用者の指揮命令下にあるとして、全般的に業務遂行性が認められます。 従って、その間の

        • 《コラム》認知的不協和とリテンション

          甲さんはエンジニアに憧れてA社に入社し、着実に経験と実績を積み重ねてきました。 ところが、ある日、乙部長に呼ばれ、「来月から経営企画室に行って貰う」と辞令を手渡されました。 面食らった甲さんは、「なぜ経営企画室なのでしょうか?私は一流のエンジニアになるために、これまで必死で勉強し、実績でも同世代ではかなり上位のはずです。エンジニア業界は進歩が速く、経営企画室の仕事をやっている間に、同期のライバルに置いて行かれるのがとても怖いです。どうしてなのでしょうか?」と乙部長に尋ねました

          合意退職のトラブルについて

          顧問先様から「能力が足りなくて頭を抱えていた社員と話し合った結果、退職されることで合意しました」と、事後報告としてご連絡頂くことがあります。 ここでの「合意退職」は、正しくは、「個別的同意による労働契約の解消=合意解約」であり、労働契約の当事者たる「労働者と使用者」が合意して、将来に向けて労働契約を解約・終了させることをいいます。 私が「どちらからの申入れですか?」とお尋ねすると、「話し合った結果なのでどちらからとも言えません」とお答え頂く事も多いのですが、「退職したい」

          月給者の月跨ぎの休日振替に賃金の「控除・支給」調整が不要との誤解

          これが、賃金規程等における「日給月給者」の労働者への一般的な賃金支払い定義です。 例えば、所定労働日が、7月:20日、8月:21日と月の所定労働日数が異なっていたとしても、所定労働日の全ての時間を皆勤したのであれば同一の給与月額で賃金支給して良いという仕組みです。 休日の振替は、一般的には、「予め労働日と休日を入れ替えること」とだけ説明されることが多いですから、例えば、7月の所定休日と8月の所定労働日を振り替えて、7月:21日、8月:20日の所定労働日を皆勤すれば、いずれ

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          【ニュース】定額減税、給与に反映しない企業は「労働基準法違反も」 官房長官...の見方

          賃金はその全額を支払わなければならない(全額払いの原則)とするのは、賃金の一部を控除して支払うことを禁止するものです。 これに対し、労働法コンメンタール(厚生労働省労働基準局編)によれば、但書として次のように定めています。 つまり、全額払いの原則はそもそも控除が無い前提で法制化されており、法令に別段の定めがある場合には一部控除を「認めている」 但し、その控除は「労働の対価を残りなく労働者に帰属させる」ような控除であるべきで、定額減税を給与に反映させない(明細への記載の趣旨

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          【ニュース】家族手当、誰のため?「未婚で家族養っている人は対象外」とされた福岡市の女性団体職員の不満…の見方

          諸手当の新設や改廃のご相談をお受けする際、まず取り組まなければならないのは「何のため? 誰のため?」にそれを行いたいのかについて、担当者様と必要な議論を繰り返すことです。 既存の顧問先様は、検討段階からご相談頂く事が多いのでスムーズに議論を進めることができますし、日常的に頂戴している労務諸問題の根底にある原因の解消や、従業員満足の向上手段の構成要素の1つとして、必要に応じて、こちらから顧問先様にご提案させて頂く事もございます。 一方、新規先様から、「●●という手当を、●●

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          傷病手当金支給申請と休業補償給付請求と雇用契約の解消

          例えば、上司からのパワハラが原因で精神疾患に罹患し休業を余儀なくされたと主張する者は、まず労災保険への休業補償給付請求を検討する事になります。 精神疾患がパワハラの影響を受けて発症した事が明らかな場合であっても、それが労災認定基準をクリアするか否かは別問題ですので、業務起因性が伺える精神疾患だけれども労災保険による給付は受けられないという事は起こり得ます。 因みに、令和4年度の労災認定率(請求件数に対する支給決定件数)は35.8%です。 労災請求を考える中で、認定は簡単では

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          労働者死傷病報告書の提出で困っていること <労働者派遣>

          労働者派遣における労働者死傷病報告の提出手続きに関する法律関係は次の通りです。 イ.派遣先が派遣先所轄労働基準監督署[甲]に労働者死傷病報告を提出する義務(安衛法第97条) ロ.派遣元が派遣元所轄労働基準監督署[乙]に労働者死傷病報告提出する義務(安衛法第97条) ハ.派遣先が派遣元に派遣先が提出した監督署受理済の労働者死傷病報告(写)を送付する義務(労働者派遣法施行規則第42条) 施行規則第42条は「派遣先が派遣元に送付しなければならない」とされており、「派遣元は派遣先

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          ≪コラム≫ 減給の制裁は人権侵害?

          少し驚いた相談事例がありましたのでご紹介させて頂きます。 RBA(Responsible Business Alliance)行動規範とは、電子機器業界中心に、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷に対する責任を促進するために示した基準であり、2004年にHP, IBM, DELLなどが中心となって作成したEICC (Electronics Industry Code of Conduct)が業界の枠を広げるために改称し制定されたものです。 近年、サプライヤーに対してRB

          契約期間満了日付での解雇?

          例えば、令和5年1月1日~12月31日を契約期間とする有期契約の労働者(勤続期間6年)がいるとします。 当該労働者が10月1日に普通解雇事由に相当する不祥事を起こしたとします。 この場合、契約満了日が近いので、解雇ではなく、相対的に不当とされるリスクが低い12月31日付での雇止め(契約不更新告知)を一般的には選択します。 この雇止め予告通知をなした後に、当該労働者が無期転換申込権を行使したとします。 無期転換申込権における無期転換とは、「同一の使用者との間で有期労働契約が

          労働者派遣における実労働時間管理と賃金と派遣料金の支払いの関係

          労働者派遣における実労働時間の把握責任等は次のとおりです。 これに基づけば、タイトルの問題は次のように整理されます。 イ)派遣労働者の実労働時間の把握は派遣先のみがその責任負っている。 ロ)つまり、派遣元は派遣先から提供された実労働時間情報に基づき計算を行い賃金を支払えばよい。 ハ)一方、派遣先から派遣元への派遣料金の支払いの根拠となる時間は、必ずしも分単位で支払わなければならない訳ではなく、労働者派遣契約(派遣元と派遣先との企業間契約)の取り決めによるので、法的な縛

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          弁護士からのタイムカード等の提出要請に素直に応ずるべきか?

          元従業員から委任を受けた代理人であるとして弁護士等から内容証明等の書面が届き、次のような書類の提出を請求されることがあります。 請求の根拠としては、「未払い賃金が発生しているため」とのみ記載され、「裁判手続きにおいて被告(使用者側)が争うのであれば、民事訴訟法220条、221条により主張立証責任の根拠としてどうせ提出しなければならないのだから、無用な手間を回避し紛争の早期解決を図るために最初から任意で提出しなさいよ」というのが言い分のようです。 確かに間違いではないのです

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          「過労自殺」と「本人の性格」

          神戸市東灘区の病院「甲南医療センター」で勤務していた26歳の男性医師が昨年5月に自殺し、本年6月5日付で西宮労働基準監督署が労災認定したとのことです。 報道によれば、死亡直前1か月の時間外労働は207時間50分で、3か月平均でも月185時間を超えており、自殺するまで約3カ月間、休日が1日もありませんでした。 正に、「常軌を逸した過酷な労働」であり、労災認定された以上、使用者の安全配慮責任は免れないでしょう。 さて、過労やメンタルヘルス等の問題が生じた際に、当該労働者のパーソ

          月途中就任の取締役報酬の考え方

          取締役は会社との委任契約なので役員報酬を日割り計算することは委任契約の性質に反し、法人税法上の定期同額報酬の原則から日割り計算すると一部損金不算入という問題も生じるので、一般的には任期途中であっても満額支給するのが通例です。 一方、法的には、民法上の原則として受任者は特約が無ければ、委任者に対して報酬を請求することが出来ないとされていますので、取締役は特約が無ければ会社に対して報酬を請求することはできないことになります。(民法648条1項) しかし、取締役と会社との委任契