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契約期間満了日付での解雇?

例えば、令和5年1月1日~12月31日を契約期間とする有期契約の労働者(勤続期間6年)がいるとします。
当該労働者が10月1日に普通解雇事由に相当する不祥事を起こしたとします。
この場合、契約満了日が近いので、解雇ではなく、相対的に不当とされるリスクが低い12月31日付での雇止め(契約不更新告知)を一般的には選択します。

この雇止め予告通知をなした後に、当該労働者が無期転換申込権を行使したとします。

無期転換申込権における無期転換とは、「同一の使用者との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって使用者の諾否によらず当然に無期労働契約に転換されるルールのことを言います。

この場合に、次の行政通達があります。

 有期契約労働者が無期転換申込権を行使することにより、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約がその行使の時点で成立していることから、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日をもって当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする使用者は、無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約を解約(解雇)する必要があり、当該解雇が法第16条に規定する「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となること。
また、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日前に使用者が当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする場合は、これに加えて、当該有期労働契約の契約期間中の解雇であり法第17条第1項の適用があること。 なお、解雇については当然に労働基準法第2キ0条の解雇予告等の規定の適用があるものであること。

基発0810第2号「労働契約法の施行について」P29のキ


有期労働契約は令和5年12月31日の深夜24:00に満了し、引き続き、無期労働契約は令和6年1月1日の深夜0:00に成立します。

通達では「無期労働契約を解約(解雇)する必要があり」とありますから、上記の例では、無期転換を申込された事により、会社が本来なすはずであった普通解雇を主張しようとした場合、解雇日を令和6年1月1日以降としなければならないことになります。

この点について、顧問弁護士に相談させて頂いたところ、行政に確認頂き、令和5年12月31付での雇用解消が成立しないという問題を避けるため、解雇が有効であるとの前提のもとに同日付での解雇として取り扱って良いのではないかとの見解を得ました。

一行政の見解ですので確定事項ではございませんが、有期労働契約の契約満了日付での解雇が成立するという、非常にイレギュラーなケースかもしれません。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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