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2019コンテンツベスト15

 2019年に自分が触れたコンテンツからベスト15を選んでみました。
 対象は2019年公開コンテンツです。

 この記事を書くために去年の記録を整理していて、本は全然新刊を読んでいなかったことに気づきました。映画と漫画はあまり意識しなくても新作に触れていたけど、本は意識しないと新刊を手に取らないみたいです。2020年はもう少し新刊を読む。

 あと、ランキングとは別に、2019年は個人的に印象的な出来事が幾つかあったので、ついでにこの記事でメモしておきます。

4月:批評再生塾終了
5月:平成→令和
7月:京都アニメーション放火殺人事件
10月:東浩紀Twitter撤退
11月:佐々木敦批評家引退宣言
12月:「ダイヤモンド・オンライン」に庵野秀明の手記掲載

 もちろん、もっと他に色んなこともあったわけですが。台風とか助成金問題とか。平成31年~令和元年は出来事の密度が濃かったですね。
 あと、これは毎年そうなのかもしれないけど、著名人の訃報も記憶に残るものが多かったです(梅原猛、橋本治、モンキーパンチ、ジーン・ウルフ、小池一夫、加藤典洋、武本康弘、瀧本哲史、吾妻ひでお、眉村卓、シド・ミード)

 2019年はいろいろと印象的な一年でしたね。
 前置きが長くなりましたが、それではベスト15を挙げていきます。


15位 映画『パラサイト 半地下の家族』

 つい一週間程前に、有楽町で先行上映を友人と観ました。ボン・ジュノ作品を観たのが初なので、他作品と比較することができないですけど、劇場スクリーンに横いっぱいに広がる大きな「窓」の映像の強度がすごかったので、それだけでも素晴らしい作品を観れた気持ちががあります。あと豪雨の街の映像も美しかったです。どっちの映像も、物語の構造を的確に映し出していてよかったですね。
 後半は三谷幸喜の作品みたいなコメディ調になって、そこは良し悪しという印象でした。
 あ、あと先行上映回の特典として、上映後にボン・ジュノからのコメントと、主要俳優たちからのコメントが劇場で流されたんですが、これがマジでクソみたいなコメントだったので、鑑賞体験が台無しだったことは書いておきたい…。どちらの映像も90秒ほど。主に「この映画はネタバレ厳禁でお願いね!」というマナー喚起メッセージで、作品の余韻をゴリゴリすり減らされました。許せねえ。

14位 漫画『かわいい後輩に言わされたい』川村拓

 圧倒的インスタントご都合主義漫画だ!僕のことをすごい好きでいてくれる可愛い女の子が出てくるだけの、ただそれだけの漫画だよ!最高かよ!!
 2019年のご都合主義コンテンツで最も好きです。あまりに僕に都合のよいフィクションなので僕にとってほぼポルノかもしれない。ポルノ楽しい。
 作者の川村拓は『事情を知らない転校生がグイグイくる。』とかいろいろ描いてていろいろ売れているっぽいが僕はこの作品がベストだと思ってます。しかし、息切れが早そう&フィクションとしてポテンシャルが高くなさそう、という作品なので、僕はいつまで楽しく読めるのだろうか?という不安と戦いながら楽しみに読んでいます。
 最初はTwitterで公開していたと思うけど、いまはマンガクロスでweb漫画として連載中。
 不穏なこと言いつつもめっちゃ好きです。

13位 映画『冴えない彼女の育て方fine』

 ラノベ原作の劇場アニメ。今年は劇場アニメが豊作だったわけですが(『Fate HE2章』『海獣の子供』『Helo World』『君と、波に乗れたら』『プロメア』他にも色々あった)、なんの因果か僕が選んだのはこれですよ…自分の業の深さを感じますよ…。
 メインヒロインの恵がただただ可愛くてですね…。
 あと、主人公の安芸くんがクリエイターとして頑張る姿が、とてもね、良くてですね…一緒に観に行った友人から「お前はクリエイターとして安芸くんに負けている。安芸くんのほうが頑張っていた。安芸くんを見習ってお前も頑張らねばならない」というディスをくらったので僕も安芸くんに負けないよう小説を頑張らねばと思っています。
 劇場特典小説が週替わりで7冊配布されましたが、友人諸氏の協力を得て7冊コンプリートしましたよ!みんなマジでありがとう!頼んだ5人の友人、みんな『冴えカノ』観たことなかった事実を思うと、本当にありがとう!という感謝しかでてこないぜ…。(でもみんな映画楽しかったと言っていたので良かった)

12位 漫画『古代戦士ハニワット』武富健治

「なんかすごい漫画が始まってテンション上がってきたぜー!!」枠です。面白いけど序章的な話が長い…僕らの期待をどこまで煽ってくるんだ…早く四巻が読みたい…。
 古代史+特撮ヒーローという趣向の作品で、三巻時点ではまだ最初に出現した敵と戦っています。早く展開が進んでほしいけれど、戦闘の小休止中におにぎり作って大勢で食べている場面とか、トラックが乗り付けるところとか、警察や自衛隊の会話とか、そういう戦闘準備の描写がとてもわくわくします。なので読者としてもかなりの長期連載を覚悟して読んでいこうと思います。
 余談ですが、2019年の「なんかすごい(略)上がってきたぜー!!」枠のもうひとつの候補は『望郷太郎』でした。

11位 映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』

 ラノベ原作の劇場アニメ。今年は劇場アニメが豊作だったわけですが(『Fate HE2章』『海獣の子供』『Helo World』『君と、波に乗れたら』『プロメア』他にも色々あった)、なんの因果か僕が選んだのはこれですよ…自分の業の深さを感じますよ…。
 メインヒロインのめぐみんがただただ可愛くてですね…。
 異世界転生ものって僕はあまり数を見てないしそんなに好きでもないんですが『このすば』とか、あとは『慎重勇者』もそうだと思いますけど、他の異世界転生ものに比べて作品のフォーマットがしっかりしているので楽しい、という感じがします。『このすば』とか見てると『ラブひな』を読んでいたときの気持ちを思い出します。『慎重勇者』はあかほりさとる作品とか『エルフを狩るモノたち』とか思い出しますね。
『転スラ』とか『本好き』とか『超人高校生』とかは、雑な感想ですが、延々と何かが発展していく話だからなのか、ゲームのプレイ動画を見ているような気分になります。そのせいか作品自体を好きになることが少ないですね。

10位 映画『スパイダーマン:スパイダーバース』

 ペニー・パーカーちゃんがただただ可愛くてですね…。
 アメリカで作られたアニメ映画なのに、日本のコンテンツ文化のよいところが上手く翻訳され取り入れられていてすごいです。以前は日本のほうがこういう作品を作るのが上手かったはずが、気づけば先を越されている感があり、その衝撃は大きかったです。ペニー・パーカーがメカを操作しながら内部でお菓子を食べているのとか、めちゃくちゃ萌えをわかっているじゃないですか…(ちょっとうろ覚えですけど、あの場面、メカ内部を断面図で描いてたと思うんですけど、その演出も正しくてすごい)。クロスオーバーものとしても、『スパロボ』とか『仮面ライダー』よりもすごいことやっていると感じました。
 富野監督が「アニメの仕事をやるんだったら、あれを追い抜け、あれを潰せ」とコメントしたらしいですが、まあそう言うよね、と思いました。少なくとも、今年の日本のアニメで、これより面白かった作品はなかったですね…(『片隅に』の新作は未見です)。
 余談ですが、日本語吹替だとピーター・パーカーの声が宮野真守なんですよ。『シュタゲ』のオカリンと同じ声優です。それを踏まえると、マイルスを諭すピーター・パーカーの声が、並行世界のオカリンの声のように聞こえて、大変エモい気持ちになるわけですよ。オカリンは並行世界を正すことの大変さをよく知っているからな…。オカリンの意志を次いで、マイルスが頑張るとか、超良い話に思えてきますね…アツい…。

9位 本『名探偵コナンと平成』さやわか

 平成30年の歴史を『コナン』を読み解きながら総括するという大変面白い本です。令和が始まり、平成を振り返る必要性は今後も高まっていくと思うのですが、そのためにも読んでおくと役立つやつです。
 あと、「THE批評」みたいなド直球の批評書だと僕は思いました。いわゆる学術書や専門書ではなく、新書なんですけど、批評がやるべきことを愚直にやってやるぜ、という著者の意気込みがすごかったです。
 一応補足すると、学術書や専門書よりも本書が優れているという話ではないです。批評というジャンルで大事なことは「説得的なロジックで対象を語ること」だと思います。そのための手法には、アカデミックだったり現代思想だったりそれ以外にもいろいろあるわけですが、要はその手法で説得的なロジックを組み立てなくてはいけない。そしてそれさえ組み立てることができるなら、批評ジャンルはどんな手法や対象も許容するわけです。そういう批評の根幹のポテンシャルをすごく意識した本作りが成されていると感じたので、「THE批評」だな、と思ったわけです。
『コナン』が好きな人は誰でも楽しめる本なので、是非『コナン』ファンにも読んで欲しい一冊です。
 あと今年のさやわかさんの仕事は『ゲーム雑誌ガイドブック』、「愛について――符合の現代文化論」、「さやわかベストハンドレッド2019」などもすごかったです。特に『ゲーム雑誌ガイドブック』は、『名探偵コナンと平成』と同じで平成史(の一部)を振り返る本としても読めるので、合わせて読むと良い感じだと思います。

8位 漫画『アリスと蔵六』今井哲也

 今年でた9巻が最高だったのでランクイン。読み始めて5ページで泣いて、読み終えてまた泣きましたよ。幼女の家出が、世界の秘密や戦時中のスパイの冒険とリンクしていくんですよ? すごくない? ジュブナイル冒険ものとして圧倒的に正しすぎる作品…。冒険とは、まさにこういう物語ですよね…。
 幼少時の家出って、誰しもやりがちですけど、ふつう現実には大したことは何も起きないですよね。でも本人のなかではこのくらい壮大でエモい出来事なんですよ。成長すると忘れてしまう感覚ですよ。今井さんは大人なのにその感覚を描けるのすごくない…?

7位 漫画『ダンジョン飯』九井諒子

 4巻くらいまでは、ハクスラ+食事漫画という組み合わせの妙が面白い漫画という認識だったのですが、ここ最近は物語の枠がどんどん広がっていて、ファンタジー世界の社会問題をリアルに描くというすごい漫画になってきました。多くのなろう系や異世界ものは、現実社会の社会問題とかを別の世界で描いたりしているわけですけど、『ダンジョン飯』は現実世界にない異世界の社会問題を、さももっともらしく描いているわけです。社会問題だから、あちらを立てればこちらが立たなかったり、根本的な悪の存在とかはいないわけです。九井さんは世界観を構築する能力が本当に高い…。
 あと登場人物みんなかわいい。よくわからんキャラや、最初は魅力を感じなかったキャラも、登場回数が増えれば増えるほど人格の奥行きが見えてきて最終的にみんなかわいく見えてくる。愛おしい…。当初ラスボスかと思われていた迷宮の魔法使いも最近はかわいくなってきたよ。かわいそうではなく、かわいい、と思わせるところがまたすごい。

6位 イベント『ニッポンのマンガ#5 マンガは歴史と社会を語れるか──安彦良和の古代史/満洲と山本直樹の『レッド』を出発点として』大井昌和×さやわか×稀見理都×東浩紀

 このイベントは日本の漫画批評にとって非常に重要なものだと思うのでみんな観たほうがいいやつ。あとふつうにめちゃくちゃ面白い漫画の話が聞けるやつです。
 安彦良和も山本直樹もいま若い人にはそれほど読まれていないわけですけど、手塚治虫から始まった日本の漫画は、社会との緊張感を常に抱えながら発展してきた歴史があるのだから、その系譜の漫画はもっと読まれたり語られたりしていってほしいんですよね。別にそれが日本の漫画の主流になってほしいとかじゃなくて、みんなが『進撃の巨人』とか『鬼滅の刃』とかを読んでいる片隅で、ちゃんと安彦良和や山本直樹やその後に続く作家が読まれたほうが日本の漫画文化にとっても日本社会にとっても良いことだと思うのです。
 漫画に関わる多くの人がこのイベントに注目してくれたら、漫画好きの一人として素朴に嬉しいです。

5位 映画『真実』

『万引き家族』の是枝裕和監督作品。仏日合作でフランスが舞台。ピークを過ぎた大女優が出版した自伝がもとで、娘夫婦やマネージャーが振り回されたり揉めたりする話です。
 この自伝というのが、彼女に都合よく出来事が編集(改変)されていて、その暴力性がまわりの人間を攻撃していくわけです。その解決もまた嘘によってもたらされる構造がとても好きだし、最後に孫娘が口にする「これは『真実』なの?」みたいな感じの台詞がとてもよい(しかしこの孫娘、この台詞だけ利発過ぎやしないか?)。
 この映画で描かれている自伝は、ある種の暴力の象徴だと思います。これは意外と日常のなかにも見つかるやつだし、権威がもたらす暴力とは異なるもののような気がします。そこがとても興味深かったです。
 あと、『万引き家族』のイメージが強すぎて、絶対この家族は不幸な目に遭って終わるのだと思ったけど、そんなことなかったです。よかった。

4位 漫画『qtμt キューティーミューティー』絵:ふみふみこ 原作:さやわか

 5巻で完結。ゼロ年代批評がやり残した課題を誠実に引き受けた作品です。なのでゼロ年代批評とか、美少女ゲームとか、舞城王太郎とか好きな人は絶対読んだほうがいいやつですよ(なぜかあまり言及されていない気がするけど…)。『仮面ライダー龍騎』がやろうとしていた「バトルロワイアルから全員で降りる話」をちゃんとやっている。パラフィクションっぽさもあるし、やはり批評好きな人は読んだほうがいいやつですよ。
 あと『パトレイバー』の内海にめっちゃそっくりな悪い奴がでてくる。どのくらいそっくりかというと、顔がそっくりです。

3位 映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』

 ちゃんと伏線を回収して、ちゃんと終わった…すごい…(SW9のことを思い出しながら…)。
『スパイダーバース』と同じ話になっちゃいますけど、日本のコンテンツのほうが以前はこういう作品をつくるのが上手かったと思ったんですけど…。これを超える日本の作品が出てくるのはいつになるのだろうか、と思うとやや気が重い。
 エンドロール後の「カーン…カーン…」と、ドクター・ストレンジが指を一本立てる場面がたまらなく好きです。あと、ソーがオンラインゲームの対戦相手をディスるとこね。あのソーはたまらないよね…ちゃんと『マイティソー』を全部観ておいてよかったと初めて思いました。
 アイアンマンとキャプテン・アメリカの物語はうまく閉じられたと思うので、あとはキャプテン・マーベルの扱いとか、次作の『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』で出してきたテーマとか、今後のシリーズでどう展開していくのか気になるところです。あと今年公開される『ブラック・ウィドウ』はアクションシーンがしょぼく見えないかと心配です。

2位 美術『輝けるこども』弓指寛治(あいちトリエンナーレ2019)

 去年、弓指さんの展示は三つ見たけど、そのなかで一番良かったやつです。あいトリの展示のなかでも一番よかった(あいトリは全部観れたわけじゃないけど)。
 6名の小学生が亡くなった交通事故の取材をもとに製作された作品群で構成された展示です。テキスト、絵画、事故車、展示経路などが織り合って、ひとつのインスタレーションが出来上がっていました。
 被害者にも加害者にも取材を行った上で「交通事故には被害者と加害者以外にも何かが関わっているのでは?」という問いから「自動車」を描いた絵が展示のなかに数多く含まれています。交通事故なんだから自動車が関わっているのは当たり前なんですが、実際にはそんなに深く考えたことがない視点でした(せいぜいリコールや免許の話題くらい)。亡くなった子供のひとりは『トランスフォーマー』のバンブルビーが大好きだったという事実が展示に組み込まれていて、「人と車(道具)の関係」を深く再考させる展示になっていたのがとても興味深かったです。たまたまその日、長谷敏司『BEATLESS』を読んでいたので、「人と道具の関係」というテーマがより印象深く記憶に残りました。
 人の死について考えることは決して厭世的なものではなく、人の生活に深く根差した思考であることを、弓指さんの展示を観に行くと実感します。


1位 演劇『海底で履く靴には紐がない ダブバージョン』オフィスマウンテン

 一月にこまばアゴラ劇場で行われた演劇フェスティバル「これは演劇ではない」で上演された作品のひとつ。
 2019年に触れた表現で、最も強度を感じたのがこの作品でした。
 山縣太一さんの一人芝居で、演劇ともダンスとも簡単に名指せない複雑な身体表現に圧倒されました。物語の要素も少ないし、激しい動きも多くはないのですが、それでも舞台の上に立つ山縣さんから目が離せなくなる。山縣さんが動いていない間も、舞台上で次に何が起こるのかと緊張感が絶えず、自然とものすごく集中して観てしまう。
 やー、最高の体験でした。
 でも山縣さんの表現がなぜあんなにすごいのか、全然言語化できないです。僕にとって未知の表現でした。だからものすごく印象に残っています。でもまさか、一月に触れたコンテンツが今年の一位になるとは思わなかった。






番外 2019年でもっとも連載を楽しみにしていた漫画
『よふかしのうた』コトヤマ

 あーもう最高かよ。最高。最高。最高…。

おわり。

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