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ポスト・コロナ時代に遺したいもの

新型コロナウイルスの第三波が押し寄せつつあった昨年末。写真家の故星野道夫さんについて調べていて、こんな言葉が目に留まりました。

「いいか、ナオコ、これがぼくの短いアドバイスだよ。寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ」

(「旅をする木」文春文庫から、自身の結婚パーティーで、妻の直子さんに友人のカメラマンがかけた言葉)

星野道夫さんは、アラスカの大自然に魅せられ、そこに生きる動物や植物たちの力強くも美しい生命の輝きと、現地の人々の営みを写真に撮り続け、数多くの文章を残された方です。その星野道夫さんと奥様がご結婚される時に、ご友人の方が奥様にかけられた言葉だということですから、きっとこれから星野道夫さんと人生を共にすることになる奥様への、励ましのメッセージだったのでしょう。

その文章を見た時、私は現在のコロナ禍という全く違う状況に、不思議な共通点を感じました。寒いことが、人の気持ちを暖める・・・。離れていることが、人と人とを近づける・・・。

新型コロナウイルスによって人と人の接触が阻まれ、ソーシャルディスタンスによって孤立に追い込まれることが多い現在ではありますが、これほどまでに会えない人に焦がれ、その身を案じ、無事に再会できた時の喜びを強く感じる時代は、かつてなかったのではないでしょうか。自分と直接関わりのない、知り合いの知り合いのまた知り合いの、その先にいる顔を見たこともない誰かを守るために、これほどまでに人々が自分たちの暮らしを変え、色々なことに我慢を重ねている時代も、かつてなかったのではないでしょうか。

ワクチンが普及し、新型コロナウイルスの流行が終息していけば、人々の暮らしは急速に元の日常を取り戻していくことでしょう。その一方で、もしかしたら私たちは、今のコロナ禍が教えてくれた大切なことを、忘れてはいけないのではないかという気もしています。そこで私なりに、「ポスト・コロナ時代に遺したいもの」というテーマで、いくつか考えてみました。

1.リモートワークやオンライン会合

言うまでもなく、このコロナ禍でオンラインの技術が急速に普及し、多くの職場や人との交流の在り方が大きく変わりました。その一部は、おそらくコロナが終息しても定着していくことでしょう。人と人が直接会い、触れ合うことによる情報交換の量と質は何にも代えがたいものがありますが、一方でオンラインにより、現地に赴けない人でも仕事や会合に参加できるという大きな可能性が開かれました。海外や遠方にいる人はもちろん、子育て中や介護中、あるいや闘病中など、様々な事情により社会参加が難しかった人々にとって、これはとても心強いツールです。

2.体調が良くない時に休みやすい環境づくり

日本では多くの職場で、体調が良くない時に休むことは当たり前ではありませんでした。少し無理をしてでも頑張るのが当たり前、休んだ人は評価が下がるような職場では、体調が悪くても申告することができません。しかし無理をすればその人自身の回復を遅らせるばかりか、他の人に病気をうつしてしまう恐れがあるということが、今回のコロナ禍で明らかになりました。これを機会に、体調を崩した人が自分のためにも、職場のためにも、正直にそれを申告し、必要なだけ休ませてもらえる職場環境づくりが進むことを、強く願います。

3.感染対策やワクチン接種への意識の高まり

今まで冬が来るたびにインフルエンザが猛威を奮い、そのためにたくさんのお年寄りが亡くなっていると知ってはいても、自分や家族以外の人々のためにマスクをしたり手洗いをしたり、ワクチンを接種するということには、あまり意識が向いてこなかった人が多いのではないでしょうか(医療従事者は別です。医療従事者は患者さんを守るために、常に感染予防に気を配り、毎年必ずインフルエンザの予防接種をしています)。新型コロナウイルスの流行により、私たちは感染症がいかに弱い人たちにとって脅威であるかということを学びました。これからは、自分を守るためだけでなく、自分の大切な人を守るため、そして誰かの大切な人を守るため、感染症が流行するシーズンには「かからない・うつさない・広げない」ための感染対策を意識したり、進んでワクチンを接種する習慣が根付いていくといいなと思います。それによって、学校での集団接種の廃止により増えてしまったインフルエンザ関連の死亡者も、再び減らしていくことができるかもしれません。


いくつか挙げてみましたが、これらは他の人の状況に想像を巡らせること、自分の行動が他の人に及ぼす影響について思いを馳せること、つまり「思いやり」という点で、共通しているのかもしれません。

多くの犠牲を払ったコロナ禍ですが、だからこそ、次の時代により良く生きるための知恵を汲み取り、未来への礎としたいですね。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


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