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外国人部下の評価を下す前に -ちゃんと目標設定されていますか?

異文化適応でよく語られるU字曲線モデルというものがあります。
海外に赴任した初期はハネムーン期と呼ばれ、全てが新鮮で、期待に溢れ、異文化もポジティブに受け止めようとし、その後カルチャーショック期、回復期、適応期と続きます。
(その後の発展で、帰国時の再適応まで含めることもあります。また、異文化だけでなく転職や進学などの環境変化でも使われます)
単純化しすぎていると批判もあるモデルですが、予め知識として持っておくと、これまでの常識が通じず戸惑ったり、誰かが悩んでいる時などに、現在地を知るために役立つことがあるかと思います。

さて、そのハネムーン期。人によって程度や期間は異なりますが、赴任後数ヶ月経ってフェーズの変化を迎えていそうな管理職の方とのセッションが増えてきました。

四半期の変わり目で1on1をされていたり、人材の異動があったりと状況はさまざまですが、部下のマネジメントにおける問題が徐々に顕在化し始めるタイミングのように思います。赴任初期から現地スタッフとも意識的にコミュニケーションをとって、一見無難にスタートしたように見えた方こそ、戸惑いを感じ始めるころかもしれません。

海外でよくあるお悩みは、上司である自分から見ると部下の成果が期待したほどではないが、本人の自己評価が高いというもの。
着任した当初は市場や社内事情に明るい人材が頼りになるように見えたけど、実は新しいことに消極的で・・というようなケースをよく聞きます。

そんな時に考えていただきたいのは、その方の役割と目標はどのように設定されているかということ。そして、それは上司も部下本人もしっかり共通認識となっているかどうかということです。

これまで色々な国で仕事をしてきましたが、地域を問わず、実は現場で感じるパフォーマンスの問題は、個人の能力でなく役割認識に起因することが多いです。

現場で意外と忘れられがちなのは、目標設定なくして評価はできないこと。
何をもって成果とするのか、そのためにどのようなプロセスが必要なのか、その部下は完全に理解していると言えるでしょうか?

マネジメントの大切な役割の一つが人事評価ですが、結局のところ期末に声の大きさを競い、鉛筆を舐めて評価を決めているという話は今でも耳にします。

ある企業の現地法人では、現地社員のエンゲージメントの低下を問題視し、人事改革に取り組んだところ、若手からベテランまで多くの社員が「自分はプロジェクトマネジメントをしているのに、同僚と比べて評価が低い」と感じていることがわかりました。当然ながら、人によって担当している業務の幅や難易度に差があるのですが、これまでの仕組みと上司の説明不足、部門の力関係などが認識のずれを生んでしまっていました。

本来、目標管理とは期初に決めた目標に対して達成度合いを測定し、人材のさらなる育成を目的として活用するものです。昨今言われるように、環境変化のペースが早いために頻度高く目標を変えていくというのも原理は同じです。

そして、メンバーひとりひとりに適正に目標を設定して、支援しながら本人の能力を引き出して成果を上げていくのがマネジメントの役割となります。

その時に、各人の等級や役割に合わせた目標設定と認識合わせが重要なのはいうまでもありません。「部下もわかっているはず」という前提でそのプロセスをおざなりにすると、自己評価と上司評価のずれを生んだり、モチベーションの低下を招いてしまいます。また、外資企業との採用競争の中で、評価の不透明さは、日本企業への就職人気が落ちている要因の一つともなっています。

この部下は能力が低いと決めつけたり、外国人は自己主張が強いというステレオタイプでまとめてしまう前に、四半期の変わり目のタイミングで、改めて部下ひとりひとりの現状と期待を見直してみるのはいかがでしょうか。
業務のアサインメントを大きく変えるのは難しいかもしれませんが、なぜあなたにこの仕事を依頼していて、どのような成果を期待しているのか、その先にどんな展望があるのかを改めて伝えて対話することで、目標の解像度が合ってくることと思います。
また、その時に「何をするか」だけでなく「どのようにするのか」も伝えることで、会社の価値観や文化に則った働き方を示すこともできるでしょう。

繰り返しとなりますが、目標管理は本来、人材育成を目的としています。これを評価のツールと位置付けてしまうと、新たなチャレンジが生まれにくくなってしまいます。期待役割とそれに対しての評価は公正である必要がありますが、それに加えて柔軟性のある目標を設定し、現地社員にきちんと伝えていくことは、会社へのエンゲージメントに良い影響をもたらすものと思います。

では実際にこんなケースではどうすればよいのか?と悩まれたら、お気軽にご連絡ください。
グローバルビジネスの最前線で戦う皆様を心から応援しています。

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