地域の中小企業におけるDXツールの浸透における課題とは?
今回はIT導入補助金の記事の続きとして、そもそも地域の中小企業でどれくらいDX・ITツールの普及が進んでいるのか確認してようと思います
情報源
このあたりの情報は中小企業庁のページにも情報があるので先にリンクを置いておきます。補助金や今、国が考えている政策についても記載があります。
中小企業白書はこちら
年度予算はこちら
そもそもなぜDXが必要か?
DX(SX/GXも含め)は様々なところでその必要性が議論されていますがそもそもなぜDXが必要なのでしょうか?
DXの定義
まずそもそもの定義を確認しましょう。経済産業省の資料によると以下の通りです。
2025年のDXの壁
そんなDXの実現が急務である理由の一つが以下とされています。どちらかというと大企業向けの説明ではありますが、「早く変革しないとデジタル競争の敗者になってしまう」というのがポイントになります。
中小企業はなぜやらないといけないか?
これらの中で中小企業がなぜDXに取り組まなければならないのか?そこについては、以下のように私は考察しています。
人材難:日本全体の人口減少、地域からの人口流出
競争環境の変化:グローバル化を含めた地域商圏の崩壊
これらを解決する手段として、DXによる生産性の向上が必須であり、望ましくはさらなるイノベーションの促進が必要
特に人手不足については地域において深刻化しています。一方、これらをデジタルの力で解決した先進事例においては、事業のさらなる展開を実現した会社もあります。
実際に中小企業庁は中小企業の課題の一つである生産性の向上に向けて以下のようなDXを中心とした施策を今年度も展開している。
身の丈ITとDXツールの浸透における課題
そんな中、中小企業庁が令和元年に出した記事が以前話題になりました。身の丈ITと呼ばれるもので中小企業の身の丈に応じたツールの普及について議論されたものです。ネーミングは個人的にはあまり共感しませんが。。
この章では以下の資料から画像を引用させていただきます。
引用元
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/191010smartsme02.pdf
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/191101smartsme02.pdf
ここで議論されているのは、
中小企業の業務効率化とイノベーションのためにITツールの導入が必要だが、リテラシや費用対効果の問題で導入が進んでいない
ITツール事業者は地方における営業力の不足から地方での浸透を進めることができていない
このギャップを埋める支援者・販売者が不足している
ということです。
実際に小規模事業者の中でITの利活用が進んでいる割合は以下の通りでまだまだ余地があるということです。
そんな中で昨今は安価なSaaSという形で身の丈ITツールが普及している。ただし選択は依然として困難。
届ける主体としても各種のルートはあれど、いわゆるテックタッチではなく、ハイタッチなものがメインで導入事業者のリテラシも含めて課題はありそう。
実際に単にSaaSを販売するだけではなく、経営レベルのコンサルティングも一緒に支援をしないと普及・導入が進まないことが課題となっている。
一部の大企業はセンターB事業者としてSaaSの拡販を担っている。
さらに別の議論として、導入のハードルに対する因数分解がされている
課題としては、
費用対効果の明確化(コンサルティング含む)
リテラシー問題の解決
である。
費用の面での補助としてはIT導入補助金が挙げられる。この報告書では人口密度や経済規模を考慮するとバランスよく、と書かれている。
少し興味があったので、最新のIT導入補助金の交付決定事業者の報告があったので、「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)4次締切
交付決定日:2023年8月1日」について県別の分布を可視化してみた。
データの引用元:
https://www.it-hojo.jp/r04/doc/pdf/r4_grant_decision_digitalwaku_04.pdf
こちらでわかるようにもちろん経済規模の問題はあれど、首都圏に補助金事業者の採択が集中しており、いわゆる地域ではなかなか採択が伸びていないという現状がある(2019年もほぼ同じ傾向である)
補足情報:国内主要SaaS企業の調査結果
特にバックオフィス業務でよく使われるSaaSとしてはビジネスチャットが挙げられる。そのサービス提供者であるChatwork社が開示している情報によれば、ビジネスチャットですら80%以上の企業が利用をしていないという実態がある。もちろん電話や紙といったツールから抜けられないということはあるだろうが、まだまだSaaS/DXの浸透が遅れていることがよくわかる。
そこでChatwork社は、ここまでで述べてきた課題も踏まえSaaSだけではなく、さまざまな業務・経営課題の解決もBPaaSとして提供をするように事業の方向性を打ち出している。
ここから見えること
つまり身の丈ITというキーワードで捉えれば、企業・提供者・支援者の存在が重要であるが、支援の補助金がある場合でも地域でのITツールの導入は進んでいないことがみて取れる。
昨今の中小企業庁の動き
中小企業庁の今年の資料によると、スケールアップ・パワーアップというキーワードのもと、特に後者でDXにおける取り組みの概要が報告されている。ポイントは
IT導入補助金などの活用
支援機関「みらデジ」の活用
地域の面的DX
となっている。また多数の資料の中で、人材(イノベーション・デジタル)についても多く触れられている。つまりDXという基礎力の上で次のさらなる成長を後押しする施策と見える。その意味でもDXという基礎が地域に広がるかどうかが大きな転換点となりそうだ。
成長志向の中小企業の創出を目指す政策の 検討成果と今後の方向性
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/037/dl/002.pdf
中小企業の飛躍的成長に向けた政策の方向性 ー 「100億企業」への成長に向けて ー
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/037/dl/s01.pdf
特に新卒・中途・兼業を含めた人材活用の成功事例についてもまとめられておりぜひご一読いただくのがよいかと思います。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/037/dl/s03-2.pdf
成功事例
今までの事業開発といえば、STP/4P/PEST/SWOTなどのいわゆるマーケティングでの側面が強かったが、現在はデジタルツールによって、できることが増え、「地域の小さな会社でも安価なデジタルツールを使うことで既存事業の強化と新規事業開発が実行できる」というところがポイントと考えられる。
以下、2021年版 中小企業白書・小規模企業白書 ~中小企業の新事業展開事例集 概要から引用をさせていただきました。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/2021jirei.pdf
補足:バックオフィスとフロントオフィス
ここでキーワードとしての補足をしておく。よくバックオフィス業務、フロントオフィス業務という言葉が出てくるがその意味については以下のように解釈していただければ良い。
DXの浸透と成功のためのポイントとは?
DXの実現のためにはいくつかのパターンがある
パターン1:経営者自身が意志を持ち自ら実行する実行
経営者の方は地域におられる方でももちろん優秀な方が多く、その方がDXを強く志向されている場合、自らツールを使いこなしDXを実現するパターンがある。特にSaaSなどデジタルツールを使えば、個人がエンパワーすることができ、一人でもイノベーションを起こすことも可能である。
パターン2:DXツールを使いこなす従業員によるボトムアップ施策
経営者のコミットメントは必要であるが、多くの場合DXツールを使いこなすのは若手人材である。その若手人材がSaaSなどを使いこなし、今までできなかったことを次々と実現するパターンがある。
パターン3:外部や複業・兼業人材の活用
それ以外であれば外部のSIerなどの活用もよいが、失敗事例もある。特に補助金の利用が終わって長続きしないなどの例がある。
成功のためには?
・ベンダー任せではだめで、自分たちでできる人が必要。内製化。
・スモールスタートで階段を登っていくのが良い
・社員のバイアスの話:地域のDXは厳しい。トップダウンが大切。