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inaca
2019年2月9日 21:28
この掌編は、1分以内で読めますサテン生地のパジャマを着た彼女の、白さが際立つ両脚を見るのが僕は好きだった。剃り跡のチクチク感さえなく、サテン生地と同等の滑らかさを、僕の右手の人差し指は感じていた。彼女は一つ息を吐いて、僕の右手の甲の部分を覆い隠すように、小さな手を置いた。「あなたの指で触れられる感触、私は好き」「別にいやらしい意味じゃないんだ。ただそうやっていたいだけ」「私があなたの耳
2019年2月19日 21:20
この記事は1分以内に読めます毛糸のマフラーを編んでいる暖炉の残り火は、パチパチと音を立て冬の静けさをさらに演出させた前後に揺れる椅子のそのリズムがあなたのリズムなのよ 普段、編みもしないマフラーは歪な形を描いて行く君が残した香り、その足跡の続きを僕は不器用ながらもこの椅子に座って君がよく座っていた椅子に揺られてワインを零したような濁りのあるくすんだ色を別の手が紡ごう
2019年2月20日 21:18
それは、遥かに美しい。銀色の白雪を背に、影が伸びる。幾分、細まったその影は、白昼の太陽の日差しによって眩しくなる、ひどく固まった雪の光と共に、私の進行方向に伸びている。眩しいのだ。一面が、化粧を施したように、美しい。目を細める。空と地面が磁石の如く、引き寄せあって、中央に一つの線が出来上がっている。白色と藍色。この空間を、瞬き一つで、私は消すことができる。一瞬にして、世界が消える。 私は、
2019年2月24日 17:39
この掌編は、3分以内に読めます「あなたの匂いがする…」寒そうにしていた彼女に、首のつまったカシミヤのニットを差し出した時、彼女はそれを両手に大事そうに持って、そうひっそりと呟いた。それは、吐息混じりの、淡い街灯の光が消えかかるような、頼りない声だった。「あたたかいよ、カシミヤで出来てるんだ。毛布を着ているような、着心地さ」「あなたって、いい匂い…」日が暮れ肌寒くなる季節。薄手のカ