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愛に正解・不正解はない『初めて彼を買った日』

こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。

胸がときめくような恋愛か、衝動にかられて始まった恋愛か、長年連れ添った相手への愛情か。どのフェーズであっても人は人を愛さずにはいられない生き物だと思っています。

私は石田衣良さんから大人の恋愛のイロハを教わりました。どの恋愛もひとしく素敵で、どの恋愛もひとしく尊いもの。恋愛であっても、友情であっても、人を愛する気持ちはいつまでも持ち続けたいなと思います。

今日ご紹介する作品は、大人向けの恋愛小説の名手であり、私が愛してやまない石田衣良さんの『初めて彼を買った日』についてです。

『初めて彼を買った日』のあらすじ

もうすぐ28歳の誕生日を迎える瑞穂は、親友の里香からプレゼント代わりにあるカードをもらう。それは「クラブ・パッション」というボーイズクラブのカード。若い男の子が、1時間1万円で何でもしてくれるらしい。瑞穂は女性にとっての最高の年齢を27歳だと思いこんでいた。ところがその1年間をセックスどころかキスさえ1度もせずにあと10日で終えようとしているのだった。瑞穂は迷った末にクラブ・パッションに連絡し、ビルの高層階のレストランで相手を待った。現れたのはリョウという、大学生くらいの清潔感のある男の子だった……。大人気「娼年」シリーズのプレストーリーとなる表題作を含む8編を収めた、セックスにまつわる愉悦の世界を美しく楽しむための魅惑の短編集!

『初めて彼を買った日』のおすすめポイント

本作はさまざまな愛の形を表現した短編集。表題作の『初めて彼を買った日』は石田衣良さんの人気シリーズ『娼年』のプレストーリーにあたるもの。もちろん『娼年』を読んでいなくても、短編としても楽しめる作品です。

今回は、私が好きな作品に絞ってご紹介します。

・ひとつになるまでの時間

この作品は久しぶりに再会する夫婦の話。単身赴任で札幌にいる妻が翌日、東京に戻ってくるというタイミングから物語は始まります。2人は会える前日に、電話で会話しながら、言葉だけでお互いを高め合います。相手がどんな状況なのか、どういう状況なら燃え上がるのかを妄想を言葉にしながら、翌日の再会を楽しみに電話を切るのです。

この作品を読んで、距離がスパイスになることもあるのだなと感心しました。「結婚が墓場」だと捉える人もいれば、この夫婦のように結婚してもなお愛情を深め合える夫婦もいる。2人にとって、「ひとつになるまでの時間」があるからこそ、お互いを思い合い、乗り越えられるのだなと感じました。

・遠花火

大学4年生の和也と32歳の叔母のお話。幼い頃のキスが忘れられず、叔母の住む街にやってきます。名目上は自分の就職を祝ってもらうためですが、内実、あの日「なぜ叔母は自分にキスをしたのか」を確かめたかった。その理由を辿る旅なのです。

幼い頃の記憶だからこそ鮮明に覚えていることってありますよね。それがまた未経験の頃なら誰しも。その経験が、和也の恋愛における趣味や趣向に大きく影響するのが面白いなと感じました。歳の差が10あっても好きになってしまったものはどうしようもないし、抗えない。突き動かされた恋愛は、きっとそういうものなのでしょう。

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(当事者間にしかわからないこともある)

当事者間でしか体験できないこと

恋愛は当事者間でしか経験を共有することはできず、他の恋人たちがどう思い、どう行動し、何をしているのかは想像できないもの。だからこそ、恋愛小説が売れるのではないでしょうか。

恋愛に正解・不正解はないですが、他のカップルが何をしているのかを覗き見るには小説や漫画はぴったりだと思うのです。石田衣良さんの作品は大人の描写が多めなので、好き嫌いは別れると思いますが、性愛の奥深さを感じられる作品が多いことも事実です。

さまざまな短編集の中で描かれる男女は、恋人だったり、夫婦だったり、バイト仲間だったり、店員とお客の関係だったりさまざま。いろんな形があっていいし、どれも正解。興味が沸いた方はぜひ読んでみてください。

ではまた〜

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