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トランス・ボイス/TransVoice

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英語の発音で、ひょっとしたら人生が変わるかもしれません。 大学の英語科で実践した発音体得のコツを紹介。
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2018年7月の記事一覧

help がなぜ「ヘルプ」になってしまうか

help がなぜ「ヘルプ」になってしまうか

学生が発音で苦戦する単語のひとつに、help がある。

「ル」の音が「プ」と分離して「ヘルプ」になってしまい、直すのに苦労する。実際の英語は、「ヘウ(プ)」のように全体が融合する。

コツとしては、発音 /l/ のところで、すでに唇を合わせて/p/ を先どりしておくと、 /l/ と/p/ が融合する感覚がわかってくる。

最後の /p/ は、英語の息である/h/ を唇でブロックして、力が凝縮し

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voices を「ヴォイセス」というのは鋭い耳

英語の voices を、カタカナで「ヴォイセス」とか「ボイセス」と書いているのを見かける。曲名とかグループ名に例があるようだ。

先日、コーラスの指揮者(日本人)が、複数の声部のことを「ボイセス」と言っているのをラジオで聞いた。

英語の複数語尾 -s はけっこう読み方が複雑で、 s, z, is の三通りがある。houses のように、複数になると語尾が/ziz/ になる特殊な例もある。

v

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「弓矢を上に射る」 よい声のコツ

テノール歌手の竹田昌弘氏が、素人にもわかる発声のコツを書いている。

それによると、

■歌の発声とは、「響き」をつくることである。

「響き」の基本技術は三つある。

①「支え」… 横隔膜を深く安定させることだが、その要領は、「上方へ弓矢を射るとき、弓を下方に引きおろす感覚」である。 これによって声がぶれず、声に芯ができて自然なビブラートがかかる。

これは背中から下へひっぱる(下方への引力を感

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英語にも「ふりかな」がある

英語にも「ふりかな」がある

アルファベットは「表音文字」だという説明がよくある。

だが、この言い方は誤解を招きやすい。

ドイツ語やスペイン語、フランス語のように、つづりで発音がほぼわかる言語もある。

ところが英語の単語は、接頭辞や接尾辞のように定型的に読める部分もあるが、全体の読み方(発音・アクセント)は、つづりだけではよくわからないことが多い。

この点で英語のつづりは、ひらかな(表音文字)というより、漢字(表意文字

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of は「オブ」?

of は「オブ」?

先日、学生と発音練習をしていて、前置詞 of の発音が意外に難関であることがわかった。

他の部分は上手なのに、of だけが日本語風に「オブ」と聞こえる学生がいたので、他のうまい人の発音を参考にして、直してみるように指示した。

しばらくしてもどってくると、「僕のof は他の人と同じだと思うし、それでいいと他の人も言います」という。

発音の微妙なところは聞き分けられない。これはありがちなことだし

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英語の r は巻き舌で発音する?

英語の r は巻き舌で発音する?

英語の名物音素である /r/ は、「巻き舌で発音する」(舌先を上あごのほうに巻き上げる)としばしば説明される。

音声学の教科書に「いわゆる巻き舌音」と書いてあるのを見たことがあるし、NHKの英語番組でバイリンガルの講師が「巻き舌の音です」と説明するのを聞いたことがある。

(英語のつづり r は、a,i,u,e,o の母音つづりの後ろにあるときは /r/ ではなく 別の音 /ɚ/ になるので注意

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声は身と場をすくいあげる

声は身と場をすくいあげる

声にはかならず先行する身体行動があると指摘する本がある。

グレゴリ・クリースチ(野崎・佐藤訳)『スタニスラーフスキイ・システムによる俳優教育』白水社、2006年。

「声に先行する身体行動」とは、その言語、その声にふさわしい身体の構えをとること。

それぞれの言語に、特有の「構え」がある。それを実感できるのも、外国語学習の楽しみのひとつだ。

この本でおもしろかったのは、警官の例。

信号無視の

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英語をついついローマ字読みするから日本語風の発音になる

英語をついついローマ字読みするから日本語風の発音になる

日本人は、日本語をローマ字でも書ける。

ひらかなをアルファベットで書くための「ローマ字」が明治時代に発明され、それを学校で教えたからである。

そして結果的に、われわれが覚えたローマ字と英語のアルファベットは、まったく同じ文字をつかっている。

そのため、次のような誤解が生まれやすくなった。

<英語のアルファベットをローマ字読み(つまり日本語流に発音)すれば、英語になる>

さすがに最近は、本

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