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英語の r は巻き舌で発音する?

英語の名物音素である /r/ は、「巻き舌で発音する」(舌先を上あごのほうに巻き上げる)としばしば説明される。

音声学の教科書に「いわゆる巻き舌音」と書いてあるのを見たことがあるし、NHKの英語番組でバイリンガルの講師が「巻き舌の音です」と説明するのを聞いたことがある。

(英語のつづり r は、a,i,u,e,o の母音つづりの後ろにあるときは /r/ ではなく 別の音 /ɚ/ になるので注意。ここでは、前に母音つづりがないときの発音 /r/ の話をしている)

英語の /r/ が「巻き舌音だ」と説明されるのは、じっさいに舌先が上がることがあること、ドイツ語やイタリア語、スペイン語のようなヨーロッパ諸語の r が巻き舌音になる場合があることからの類推であろう。

じつは、現代英語の /r/ は、巻き舌で言うことが本質(必須の条件)ではない。

おもしろい記事があったので紹介しよう。

「Rの指導では、よく『舌を巻く』と表現が使われます。ところが、舌を巻くと口の中の空間が縦に広がり、こもった音になってしまったり、巻いた舌をもどすとき、知らず知らずのうちに舌先が上あごに触れて、L のように言ってしまうことがよくあります。

Rの発音の最大のポイントは、舌の形ではなく、口がつくる空間の形です。Rを発音するときは、舌を巻くのではなく、のどの奥に向かって舌を収縮させるのです。」(R&M. Habbick," Teaching Pronunciation in Japan(2)" The English Teacher's Magazine, May 2006, pp.38-39)

そして、英語のつづりに r があるとき、上記のように、その前に母音つづりがあるかないかで発音が変わることを知らない人もいるようで、これがまた混乱の原因になっている。

英語教育の学会で、つづりの r をすべて巻き舌で発音する発表者がいた。気持ちよさそうに、しきりに舌を巻く。あんまり巻くので、聞いている私も舌を巻いた。

「r は巻き舌」という思い込みは、いったん忘れたほうがいい。舌先を上げてもよいが、英語の場合「のどの奥に向かって舌を収縮させる」ほうが本質である。

そちらを練習したほうがいい。

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