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石灰沈着性腱板炎 ~介入はどうする?~

肩関節の疼痛が出現する疾患に”石灰沈着性腱板炎”があります。石灰沈着性腱板炎は、一般的に30~60歳代に発症し、男性よりも女性に多いと述べられています。有症状の発生率は6.8%と報告されています。


この”石灰って何者?”となりますが、簡単にいうと、”石灰は骨や歯と似ている成分”です。その石灰が肩関節周囲に存在する組織の中にできてしまい、悪さをすることで肩関節に機能障害が出現します。

では、石灰はなぜできてしまうのでしょうか?


実は石灰ができる明確な原因はわかっておらず、今も議論が続いています。ですが、推論として”退行性石灰”と”反応性石灰”の2つの原因が考えらえています。

退行性石灰
・血管分布の減少に伴い、局所的な組織の酸素濃度が低下することにより、組織が壊死し、石灰が生じる

反応性石灰
・腱組織の微細な損傷に伴い、線維軟骨置換(化生)が生じ、石灰が生じる

J.K.G. Louwerens:Evaluating treatment options for calcific tendinitis of the rotator cuff. 6 November 2020

これらのことから、セラピストが石灰の発生を予防するためにできることは、局所の血流を増加させることや腱板筋の損傷を予防する(インピンジメントや過負荷)ような介入が挙げられるかもしれません。しかし、石灰は無症状であることも多く、現実的には予防は難しいと思います。

そのため、私は石灰が出来てしまい、肩関節に症状が出現したときの対応が重要と考えています。対応のポイントは”石灰のできる場所”、”石灰のステージ”が大切と考えています。

そこで、この記事の後半ではセラピストが石灰の患者に対応する際に考えるべき”石灰のできる場所”、”石灰のステージ”の2つについて記載していきます!

1.石灰のできる場所

石灰のできる場所は腱板筋群の中でも、圧倒的に棘上筋が多いと報告されています。


棘上筋の中でも、腱組織の低酸素リスクがある領域の「クリティカルゾーン(無血管領域)」の近位棘上腱内で最も一般的にみられると報告されています。また、superior facet と middle facet の境界部周囲に石灰が存在すると症状が残存しやすいと述べられています。

高橋憲正 et al. 肩石灰性腱板炎手術症例の臨床的特徴. 肩関節 34.2 (2010): 499-502.


では、石灰が生じると必ず機能障害や疼痛が生じるのかというと、そうではありません。エコーで肩関節を評価すると石灰が見つかることも多く、疼痛や可動域制限に関与していない場合も多い印象があります。(無症状肩で石灰の発生は2.7%から20%の発生率)


そのため、石灰があっても無症状の場合もあるため、”石灰=疼痛”ではないということがわかります。


では、石灰が問題になるのはどんな点なのでしょうか?


2.石灰のステージ

石灰の沈着にはステージが存在し、そのステージによって臨床症状が異なる可能性があります。中でも、石灰化期の再吸収期に疼痛が生じやすいと報告されています。


また、石灰の臨床像は4つのパターンに分けて考えられており、激痛と機能障害が出現する急性期は石灰の吸収段階と関連していると考えられています。


そのため、石灰のステージや臨床像(症状)を確認しながら、石灰の影響を評価していく必要があります。基本的に急性期、慢性期の評価方法は問診(臨床症状)と画像所見になります。


2-1.急性期の評価と介入

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