見出し画像

Rxヒッツ! ~平成・令和の「日本レコード大賞」大賞受賞曲~

【はじめに】
この記事では、平成・令和の「日本レコード大賞」大賞受賞曲を、Rx独自のヒット指標を通じて見ていきたいと思います。

※Rxヒット指標は、チャート好きである「あさ(@musicnever_die)」さんの思想や問題意識をもとに、1人の音楽ファンとして、対象範囲などを拡張して楽しませて頂いているものです。(概要は、後日、記事にします。)

0.記事を書くキッカケ

この記事を書くキッカケとなったのは2021年11月12日にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にアップされた『Winter,again/GLAY』の動画です。

立冬を過ぎたこの時期に、唐突に「日本レコード大賞」受賞曲がパフォーマンスされたことに驚きを隠せませんでした。

また、直後(11月17日)に放送された「ベストアーティスト2021 20周年スペシャル」では、レコード大賞に縁のあるビッグアーティストが何名も登場し、少し早い「歳末の大型音楽番組」感を味わうことが出来ました。

そうして少しずつ年末を感じる季節にあって、現在は毎年12月30日に開催をされる「輝く! 日本レコード大賞」を前に、今一度、他の“レコ大”受賞曲を振り返ってみようと思った次第です。

1.平成・令和の大賞受賞曲と得点内訳

早速、リストアップしたものを見ていきましょう。「№」の欄は、第何回かを意味します。第32~34回は部門ごとに大賞が決まっていましたので、2つを併記しています。

画像3

累計pt(ポイント)は、ヒットの度合いを大体で数値化したものです。この中では「TSUNAMI」が突出して高く、370万を突破しています。また90年代の前半は、CDバブルの時代に当たり軒並み200万を突破していますが、直近(令和に入ってから)も200万近いヒットを果たしており、その時期を代表するヒット曲が大賞に選ばれる形に戻ってき始めているようです。

2.得点内訳に見るトレンド

数字の羅列では分かりにくいので、Excel(にぶち込んで)簡易的にグラフにしてみました。それがこちらです。

画像3

① セールス(青色)

2000年代まででかなりのウェイトを占めるのが、青色のフィジカルセールス部分です。「TSUNAMI」を筆頭に、「君がいるだけで」や「愛は勝つ」らがダブルミリオン相当のヒットを果たしています。

一方で、21世紀に入ると、それまでに比べると「アーティスト人気」などのウェイトが高まった結果、セールスが活気を失い、浜崎あゆみやミスチルをしても50万を超えない時期を迎えます。

そして、2010年代以降は、「あさ」さんも仰っている通り、CDセールスがヒットの指標としては殆ど機能しなくなりました。2連覇を果たした乃木坂46の楽曲でも(むしろ健闘はしていますが、)20万前後となっています。

そうした意味では、令和に入って「パプリカ」や「炎」といった楽曲達が、着実に10万枚以上売り上げている事は数少ない明るい話題かも知れません。

② カバー(橙色)

カバー指標も、基本的には古い楽曲の方が有利で、平成1桁の時代の楽曲はほぼ2桁を計上しています。2000年以降では、カバーが広く愛されているかが二極化。「パプリカ(米津玄師Ver.)」が1億再生を記録している点や、「TSUNAMI」や「蕾」が多くのアーティストに歌われている点は評価できると思います。

③ デジタル(灰色)

デジタル配信については、2000年代中盤以降に本格化した指標であるため、まさに「CDセールス」とバトンタッチするかのようなタイミング感でした。

「蕾」や「Ti Amo」は、RIAJによってダブルミリオン認定されるほどの人気曲であり、アーティスト初の大賞受賞の後押しとなる大衆へのヒット感が、この「デジタル」で色濃く反映されていることが分かります。

④ 再生数(黄色)

再生回数の指標においてはやはり令和の大賞曲が強さを見せ、計3億回近い再生数を記録しています。

同指標の3位はコブクロ「蕾」です。この公式MVは2014年にアップされ、先日8,000万再生を突破してます。(他のMVは多くが2021年アップのため、単純比較はできませんが。)

3.合計ptにみる「レコード大賞」の趨勢

ではここで、4要素の合計ptを補記し、時系列に並べてみましょう。それがこちらです。※点線は5回の移動平均(↓)

画像3

この表から、恐れ多くも「日本レコード大賞」の趨勢の体感を、わがヒット指標の数値と照らし合わせていきたいと思います。

① 1990年代前半

まず、1990年代前半は、紅白とバッティングした結果、視聴率10%台にまで低迷をしますが、選出される楽曲(特にポップス部門)は、年間チャートの上位曲であり、その年を代表する楽曲だったと言えます。合計ptも200万を越え、他の候補にそこまで見劣りはしないと思います。

画像4

② 1990年代後半

そのトレンドが崩れたのが1995年のtrf でしょう。エイベックス初の大賞受賞となりましたが、オリコン調べで年間27位、わが指標でもミリオン未達。

画像5

続く2年は、安室奈美恵が連覇を果たしますが、その翌(1998)年のglobe(wanna Be A Dreammaker)に至っては、オリコン年間47位でした。

エイベックス系列が初の大賞から4連覇を果たし、そのうち2アーティストが年間Top20圏外の楽曲という事で、視聴率もわが指標の移動平均も低調。

③ 2000年代前半

2000年代前半。TBSに関係する2曲(TSUNAMI、Sign)こそその年を代表する楽曲ですが、エイベックス・浜崎あゆみは、単純なヒット力ではパワー不足の感が否めず、年間17→9→32位での3連覇には、事務所の影がチラつくのが正直な感想でした。(Voyageとか、個人的には好きなんですがww)

画像6

④ 2000年代後半

そして、2005年の「Butterfly/倖田來未」の大賞受賞は、オリコン年間85位な事などが大きく報道され一時期話題を呼びました。ただ「デジタル配信」にヒットが移った過渡期であり、合計ptは50万を突破してることからして、同情の余地が無いことはありません。

画像8

しかし、この2005年に視聴率10.0%(過去最低)を記録し、その翌年からは「12月30日」に放送することとなり、紅白の裏番組を撤退するのみならず、賞の存続自体に疑問の声が上がることも目立ちました。

リニューアルの2006年は、13年ぶりに演歌勢(氷川きよし「一剣」)が大賞を受賞。(個人的にはドラマチックでカッコ良く映りました。)わが指標的には伸び悩んでいますが、演歌としては同年のオリコン最高売上をマーク。

画像7

続く2007年は「蕾(つぼみ)」が、わが指標的にはCDバブル期に匹敵する大ヒットとなりました。CD・デジタル配信ともに最大のヒットを遂げると共に、YouTubeでも再生数を稼ぎ、「TSUNAMI」以来(21世紀では最大級)の大賞受賞曲となりました。

⑤ 2010年代(平成時代)

EXILEが3連覇(2008~2010)含む4回、AKB48が2連覇(2011~2012)、三代目J Soul Brothersが2連覇(2014~2015)と、アーティスト・パワーが顕著となった平成20年代。

画像10

最初の大賞受賞時はしっかりとヒット(わが指標ではミリオン相当)しているのですが、連覇を果たす時の楽曲は初受賞時の楽曲の勢いを超えられないという流れが浮き彫りになります。

画像10

そうした中で、事務所的に諸々の力学が働いたからなのか、非エイベックス系から、2016年には「西野カナ」が平成生まれのソロ歌手として初めて大賞に輝きます。確かに、デジタル分野の先駆者で、配信ミリオン数などでの実績は申し分ないのですが『この楽曲たる必然性』には正直、疑問符でした。

ただ、ここでソニー系列に力学が傾いたことで、2010年代後半から、ソニー系列が「令和の音楽業界」への脱皮をいち早く済ませ、「レコード大賞」で強さを発揮していくこととなります。

⑥ 2010年代(令和時代)

アーティストパワーによる連覇が目立った結果、移動平均線は大きく後退。同じくTBS系列で放送されていた「日本有線大賞」の終了を受けて、賞そのものの存在価値が問われる事態となりました。しかし、

画像11

令和に入ると状況が一変をします。ソニー系列の“5連覇”は、ヒット指標の移動平均線を大きく向上させる結果となったのです。

具体的に言えば、Foorin「パプリカ」とLiSA「炎」という、その時期を代表するヒット曲が「大賞」に選ばれるという至極“当たり前”のことが果たされることによって、復調の兆しを見せはじめたのです。

画像12

従来のセールス指標ではなかなか補足しづらい“真のヒット曲”たる両曲は、再生数という新たなヒット指標がしっかりと示してくれています。

ここに来て、ようやく「CDセールス」以外の指標の有効性を、権威側が少しずつ認めるようになってきているものと信じたいものです。何せ令和新時代は始まったばかりです。今年はどんな曲が選ばれるのでしょうか。裏切られることに一抹の不安を覚えつつも、12月30日を待ちたいと思います。以上、Rxでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?