プロフェッショナル「俳人/夏井いつき」 の心に残る言葉を纏めてみた(後半)

【はじめに】
この記事では、2021年12月7日にNHK総合で放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」『17音、言葉の力を信じて〜俳人・夏井いつき』から、私(俳号:Rx)が特に心に残った言葉をまとめました。

前半の記事はこちらからどうぞ(↓)

4.「青き踏め」夏井いつきのコ口ナ禍は

夏井いつき
(37歳で俳壇賞受賞した頃から「統一感がない」と言われ、それをマイナスと一旦捉え「統一感を模索」するも、「バラバラでも良いんだ」と開き直ったのは40代の終わりになってからという夏井組長。)「『何でもありの夏井いつきじゃないと夏井いつきじゃないよね』っていう感じで。」

「ありのままの、自分でいい」

「青き踏め」の26句から、こんな句も紹介されていました。名句!

5.半生や俳句の杖は「ぬちぐすい」

夏井いつき
「歳時記 読むことに癒やされたね。歳時記 読むのが趣味だった。」

26分過ぎ

30歳で教師を辞め、恩師に啖呵を切った手前、「俳人として生きていく」道しか残されていなかった30代の夏井いつきさん。26分50秒あたりから、自身の句集を開き、半生を振り返ります。
「日記」のようでも、「アルバム」のようでも、そして「自伝」のようでもある。それが俳人の『句集』です。

夏井いつき
「葉っぱを全部落とした木のことを『裸木はだかぎ』って言うんだけど……まぶしいものを見てるのもしんどいよね。

《 俳句は心の杖/俳句は人生の杖 》

夏井いつき
俳句というアイテム、杖を1個もっとくと、その自分のしんどいことを、人にぶつける言葉じゃなくて俳句という書く言葉で昇華できる。」

29分00秒

《 俳句は「ぬちぐすい」 》

夏井いつき
『命の薬』って書いて『ぬちぐすい』って読むんですって、沖縄のほうの言葉で。……心が楽しいことをするのも「ぬちぐすい」だし、
 俳句を作ることで私は命の薬をもらって、「ぬちぐすい」をもらいながら生きていて、
 今度、私が俳句という名の何かを1つの作品として残すと、それがまた誰かの「ぬちぐすい」になるという“循環”になってるんだなって気づいたことがあって。
 結局俳句ってそういう効果をお互いにやりとりしながら、みんなが幸せになっていくような、そういう力を持ってる文芸なんだなって。」

29分30秒~30分25秒

6.ディレクター「生家」処分についてくる

番組を3つに分けてちょうど「3パート目」にあたる30分過ぎからは、夏井いつき組長が、「生家の処分」をする話題がメインとなっていきます。

これについての裏話は、YouTube「夏井いつき俳句チャンネル」で、ディレクターが出演された回でも紹介されていますので、ぜひご視聴ください。

愛媛県南宇和郡内海村(現在の愛南町)出身の「夏井いつき」さんが、生家を処分するということで、急遽ディレクターが同行して取材することとなったんだそう。俳句とは一見、関係のないシーンを敢えて続かせます。

※殆ど一言一句、正確に文字起こしをしている「プロフェッショナル」ですが、さすがに夏井組長が父親との思い出話の中で口にした「ホープ」という銘柄は、「タバコ」とNHKらしく言い換えておられましたねww

(句帳にメモを取った内容を、インタビュアーに絶対言わない夏井組長。)
「どこかで活字になったものを見ていただいて、『あ、あのとき、これがあのときの』ぐらいに思って頂けたらいいかなぐらいかな。」と、最初はディレクターを軽くあしらっていましたが、

その3日後、『俳句づくりしている時に声をかけない』ことを条件に吟行に同行することを提案し、ディレクターも納得・了承します。

実家に滞在した約5時間、カメラを回し続け、何とか作句する瞬間をとらえようとしますが、結局まったく俳句を作らずに終了。その後の取材で、

夏井いつき
「句帳は開かないことはないけど、忘れそうなことがあったときだけ(書き留めるぐらい)」

と答えます(これが組長の作句における「俳句のタネ」の集め方でして)。

7.わがこころ十七音じゅうしちおんへ結球、す

その翌日、短冊にペラペラと文字を書き連ねていく夏井組長。

夏井いつき
「自分の脳の中に映像をストックしていくっていうか、映像をあとで引き出すための目次みたいな言葉を句帳に書きつけとけば、あとでその目次の言葉によって、その映像がカシャンカシャンって出てくるんです。
 次から次に出てくる“記憶のネガ”みたいなものを、深堀りしないでとにかく文字にしていけば、あとでそれをきちんと整え直すことはできるけど、1回こう……記憶のネガがどっかに脳の中で迷い込んでしまったら、それが出てこなくなるから。
 こういうときは何でもいいから適当にでも良いからタッタタッタ作っておいて、あとで詰めていくって感じですかね」

38分00秒~39分05秒

夏井いつき
自分のために俳句を書くんだから、俳句のために自分の思いをゆがめるのは違うと思う。
 頭で空想で作ってると、かっこいい言葉見つけたから、じゃ本当はこっち表現したかったんだけど、でもかっこいい言葉見つかったから、いやいいやそっちでもとかって、最初の思いを捨てて言葉のほうに酔ってしまう。心が無かったら言葉探してもしょうがないから。

39分35秒~40分20秒

結球、する

夏井いつき
「球として結ぶ。1句がね、きれいな球になってくれるというか。水の球
がきれいに丸くなるじゃない、あんな感じ。……1句がこーんな大きいときもあるし、こんなここから先ぐらいの小さく結球した作品のときもあるし、ちゃんと自分の喜怒哀楽とか、このときに自分が何を思ったとか、そういうの全部きれいにパッキングされて1句として、こうやって『あ、うまく結球して』ぴゅって放つような感じ。自分の力で、この球はふわって飛んでいける。

ディレクター「結球した瞬間っていうのは分かるんですね?」
夏井いつき「なぜか分かります。」

40分30秒~41分40秒

夏井いつき
「父とかもちゃんとこの句の向こうに生きているみたいな、そういう感覚が持てて、穏やかになる。」

42分20秒

【エンディング】全力で遊ぶ

「3時間、全70句が生まれた」というナレーションの後で、雑誌『俳壇』に投稿する10句の自選の模様も少し描かれ、その後、お決まりの質問で番組はエンディングを迎えます。

― プロフェッショナルとは

夏井いつき

「俳句ってね、真剣な遊びなの。本当に。もう真剣に自分の心と体を喜ばす真剣な遊び。自分はもう一生、真剣に遊びつくす、と、それだけ。」

44分00秒

( 後日談・ちなみに )
この「夏井いつき」さんの回が放送された当日(2021/12/07)、スガシカオさんの公式YouTubeチャンネルに、(オリジナルのバンド「kōkua」としてではなく、)ソロシンガー・スガシカオさんバージョンのMVがアップされました。上のリンクからお聴きください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?