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「プレバト!!」俳句で旅気分!(その1)【2021/8/12更新】

【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」で披露された俳句と、それに対する夏井先生の解説をもとに、俳句づくりのポイントを探っていこうと思います。

とはいえ、私も俳句初心者の身ですので、記事の内容に関しては、決して「正解」ではなく、解釈の一つとして捉えていただきたく思います。

今回は、「地名」がワンポイントとして使われているような俳句を、エリア別に取り上げ、『地名入り俳句で旅行気分を味わおう』をコンセプトに進めて参ります。

北海道

“北海道”の俳句というと、『地の涯に倖せありと来しが雪』/細谷源二 を始め、雪や寒さに焦点を絞った俳句が浮かびますが、
プレバト!!では、希望・暖かさ・温もりを感じる俳句が披露されました。

絶望を感じた細谷源二氏の前述の句とは対照的に、
馬の子という春の季語で明るく十勝を詠んだのが『鈴木光』さんの一句。

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・馬の仔の立ちて十勝の缶コーヒー 鈴木光

この句は想像に基づく句ということでしたが、北海道転勤した経験に基づき詠んだのがアナウンサー・登坂淳一の一句。これも北国の短い夏を待ち望む明るい一句だと思います。

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・田植終え北の大地も日ざし待つ 登坂淳一

2020年の金秋戦4位となった句は、北海道を訪れた千賀名人が詠んだ際に、偶然地震に遭い、そこから連想した一句です。札幌時計台のことだそう。

・時計台無音 震源地の夜長 千賀健永'

東北地方

松尾芭蕉の『おくのほそ道』以来、多くの俳句が詠まれてきた東北地方。
現在でも温泉地を始め、旅行・観光地を多く擁しています。

・寒に覚む窓には月白の蔵王 馬場典子
・福島の空よ氷柱に透ける空 河合郁人

そして、東北が生んだ Mr.プレバト!! こと「梅沢富美男」永世名人は、福島県の出身。方言や独特の単語をうまく織り込んだ俳句を披露しています。

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「梅沢富美男」の東北を詠み込んだ俳句(一部)
・じょんがらのごと雪しまく車窓かな
・蜜柑「け」とばっちゃが降りた無人駅
・魚市場(いさば)のかっちゃスカーフはあけび色

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2011年3月11日に起きた「東日本大震災」を経験した東北地方。梅沢名人は東北地方の思いを俳句に込めてきました。

「梅沢富美男」の震災を詠み込んだ俳句(一部)
・震禍七年港に揚がる初さんま
・原子炉と溽暑に眠る町の黙
・旱星ラジオは余震しらせおり
・廃村のポストに小鳥来て夜明け

他にも、東北出身でなくとも、復興へひたむきに向かう東北に思いを寄せる俳句が詠まれてきました。

・大槌の風の電話や梅一輪    馬場典子
・忘れるな冬晴れ越えて東北へ  北山宏光
・復興の町こたつ列車の結露拭く 三遊亭円楽

特に馬場典子さんが詠んだ『大槌(おおつち)町』の「風の電話」を大胆に取り合わせた俳句などは、『地名・固有名詞』の持つ力を最大限に信頼した堂々たる一句だと強く感銘を受けました。

東日本大震災以前からの、そして東日本大震災以降の「東北」を詠み込んだ俳句が、詠まれていくことを期待してやみません。

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関東地方

まずは北関東を代表して、プレバト!! 史上歴代1・2位の高得点を叩き出した伝説の回から、「尾瀬」の【水芭蕉】を詠んだ2句をご紹介。

・空の底強き風恋ふ水芭蕉 杉山愛
・号令も風となりけり水芭蕉 又吉直樹

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関東地方と一口に言っても、都市部以外には多くの自然が残されています。例えば、南関東・千葉県は「房総」という地名を大胆に打った一句から、
中田喜子さんが初挑戦で80点を叩き出した明るさに満ちた作品。

・春愉し房総の空ひた走る 中田喜子

そのまま「愉し」と描ききる上五のパワー。感情がありありと伝わります。そして、房総と限定したことで、具体性が一気に高まり特別感が増します。

( 箱根 )
今度は、神奈川県は「箱根」です。修学旅行など「観光地」としても有名。

・はこね号これより初夏に入ります 藤本敏史

まず、この「はこね号」という列車名からして、箱根に向かう車中の高揚感が伝わってくるようです。初夏という季節とも呼応してくる良い句です。

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もちろん、観光地として「自然の豊かさ」も俳句の題材となりましょう。名に箱根が含まれる植物を詠んだ一句、これも中田喜子さんです。

・雨後の空箱根うつぎの咲う径 中田喜子

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動植物の中でも、こうした地名を含むもの、或いは特定の土地を連想させるものをうまくアクセントとして俳句を詠めるようになると、手練れって感じがしてきますよねww

そして大涌谷の名物を食する空気感と臭いが伝わってきそうなこんな句も。

・冬の風硫黄ほのめく黒たまご 小手伸也'

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( 鎌倉・湘南 )
続いて、県の中・南部パート。まずは湘南から。

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・江ノ島や叩き付けたい苦い夏 徳光和夫
・波蹴立て跳ねる鳳凰荒神輿 中田喜子

江ノ島や湘南の海に、様々な思いを寄せる方も多いことでしょう。徳光さんの『叩き付けたい』という言葉遣いに思いが込められています。

高浜虚子も人生の半分以上を過ごしたという湘南・鎌倉。河野玄斗さんが、正確に800年と俳句を詠みましたが、おおよそ千年の歴史を持つ古都を詠む句をまずは3句ご紹介します。

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・梅揺する強き風あり東慶寺    山村紅葉
・実朝のやぐらをぐらし月煌々   林修
・さみだれやこころ濡れゆく明月院 熊谷真実
・扇川また見失い緑さす      村上健志

85点という番組史上2位タイの句に詠まれた「東慶寺」を始め、観光名所には事欠かない鎌倉。しかし、やはり象徴は「鎌倉の大仏」でしょうか。

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・大仏の御手から月は生まれます  藤本敏史
・大仏を拝むボクサー朝の月  千原ジュニア

少し北上して、東京都と神奈川県との境付近から、こんな固有名詞が登場。東大王に勝利したこの句を、局も喜んでくれたそうです。

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・ペン止めてFMさがみ聴く秋夜 北山宏光

さらに、東名高速道路でのちょっとした出来事を描いた俳句もありました。オリジナルが「ミニカツ丼」だったのを、先生は地名に合わせ「天丼」に。

・雪晴れや海老名下りのミニ天丼 雨宮萌果'

( 東京地方 )
東京都下でも、高尾山など自然を詠んだこともありましたが、多くは首都・東京の都会を詠んだ俳句です。「プレバト!!」の出演者の多くが東京在住、2010年代以降の都心を舞台に、都会を詠み込んだ俳句が次々生まれてます。

例えば、東京の観光名所と「雪月花」、昔ながらの季語を取り合わせた句。都会に自然や季節を感じ取った作品からご紹介いたしましょう。

・皇居へと響けるひづめ初桜     中田喜子
・オレンジ色の東京タワー雪温し   秋吉久美子
・台風の羽田ババ抜き百回戦     上田彩瑛
・アイフォンに桜蕊降るハチ公前   石野真子
・花火果て電車空く間のデンキブラン 森口瑤子

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( 銀座 )
そして、「修学旅行」の観光名所から、少し高級感溢れる街・銀座へと。

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・エルメスの騎士像翳りゆき驟雨 村上健志 [人]
・畳まれるマダムの日傘三越前  小籔千豊
・雑煮の香雨の銀座の生中継   竹内涼真&鈴木亮平

地名や街そのものに力があると、そのパワーを俳句に落とし込む事ができ、迫力や臨場感にも結びついてくるでしょう。

中部地方

続いて、中部地方へと参ります。まずは、『富士山』の俳句から。

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・御降りの洗いて清し富士青し   梅沢富美男
・初富士や北斎のプルシャンブルー 東国原英夫
・空のあお富士の蒼へと飛花落花  梅沢富美男
・花震ふ富士山火山性微動     東国原英夫 [天]
・千年の樹海の風と枯葉の香    横尾渉

太平洋側の「富士山」に続いては、日本海側へと向かいましょう。

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・「とき」発車旅憂わしき花追風 中田喜子
・新潟の楽屋の窓の夕桜     小林幸子

造語の季語「花追風(はなおいて)」で昇格を果たした【中田喜子】さん。「とき」発車して、上越新幹線から新潟への旅も良いですし、北陸新幹線で北陸へと向かう旅も良いですね。

北陸特有の季語がいくつかありますが、それに現代の命を吹き込んだのが、富山県出身の【柴田理恵】さん。北陸への愛が溢れる俳句をご紹介。

富山出身の特待生【柴田理恵】の北陸季語俳句
・もてなしの豆腐ぶら下げ風の盆 [秀]
・降り立ちて夜のしじまにあいの風
・「犯人逮捕」干鱈を毟る母の黙

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歳時記で地元(富山)の風土が季語となっていることを知り、それで俳句を詠むことに成功した句たちです。いずれも高評価だったことを見ても、地元の季語を使いこなす強みは、他の土地の者には出せない強みだと感じます。

そして、北陸の旅は石川県は加賀へ。特待生昇格を決めた一句です。

・旅芝居はねて今宵は加賀おでん  大和田獏

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おわりに(その1)

ここまで、北海道・東北・関東・中部地方を「プレバト!!」の俳句で旅してきました。次回(その2)では、西日本から世界を旅します。
では、次回の旅(記事)もお楽しみに! ではまたっ、俳号:Rxでした。


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