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「マウリポリの20日間」:ロシアのウクライナ侵攻を追う20日間。ドキュメンタリーの良さと悪さが浮き彫りになる良作。

<あらすじ>
2022年2月、ロシアがウクライナ東部に位置するマリウポリへの侵攻を開始。これを察知したAP通信のウクライナ人記者ミスティスラフ・チェルノフは、仲間とともに現地に向かった。ロシア軍の容赦のない攻撃による断水、食料供給や通信の遮断……瞬く間にマリウポリは孤立していく。海外メディアが次々と脱出していくなか、彼らはロシア軍に包囲された市内に残り、死にゆく子どもたちや遺体の山、産院への爆撃など、侵攻するロシアによる残虐行為を命がけで記録、世界に発信し続けた。取材班らも徐々に追い詰められていき、チェルノフたちは辛い気持ちを抱きながらも市民を後に残し、ウクライナ軍の援護によって市内から脱出することになる。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

夏になると戦争という影を感じるのは、もう小さい頃の想い出すらになっているなと思います。40代の僕が覚えているのは、ちょうど小学生くらいになると「火垂るの墓」(1988年)であったり、「はだしのゲン」のTVアニメシリーズであったり、実写ドラマでも、第二次世界大戦における日本をテーマにした作品が必ずテレビでやっていたし、広島・長崎の原爆投下日はもちろんのこと、終戦記念日も、日本全土が沈黙と黙とうに包まれるどこか厳粛とした季節であったことが強烈に覚えています。それが戦後でいうとちょうど40~45年くらいのこと。それから半世紀が経ち、戦後でいうと来年(2025年)で80年となり、もちろん今でも各地で戦時を振り返るイベントはありますが、年々ニュースで触れられるくらいで戦争の記憶というのがどんどん希薄化している日本の夏だなと思う昨今ではあります。

そんな今でも世界各地で戦争は行われています。日本で今でも注目されているのはロシアのウクライナ侵攻であったり、イスラエルのガザ地区及び周辺国との戦争であったりしています。それこそミャンマー問題など抑うつされ、内乱やテロ闘争になっているものも含めれば、世界各地で大小問わず争いは行われていて、その飛び火は日本でもテロの脅威であったり、サイバー攻撃だったり、危機感を持って臨まないといけない日々ではあると思うのですが、私たちにとって、最も近いはずの戦争の記憶すら失われつつあるなという現実。戦争をどう見るかという思想的なところは左右分かれるとはいえ、争いを起こさないにはどうすればよいのかとか、平和であるとはどういうことなのか、、もっとも身近な素材を使って、常に学び続けないといけないなと思うのは、震災・洪水などの災害は起こる度に、危機意識が自然と再教育されるのと対象的だなと感じているからです。

話はだいぶそれましたが(笑)、こういう話をしたのは本作のような戦争ドキュメンタリーが観ていて、すごくシンボル化されているなーと感じるからです。僕とかが小さい頃、例えば祖母のような戦争体験者から聞いた恐ろしい話とは対象的に、本作で登場するマウリポリの悲惨さはもちろん酷く・恐ろしいことではあるのですが、各所の映像はニュース等で流される素材としてよく使われていて、リアルに起こっていることだけど、映像というフィルターを通している分だけ、どこか見飽きているようなフィクションさを感じてしまうのです(これはとても失礼な話だとは思うのですが。。)。災害映像とかもそうなんですが、今ではXやInstagramなどのSNSを通じて、よりリアルな映像がどこのフィルターを通さずにダイレクトに伝わってくるからこそ、それが日常化されてしまっていて、その映像が語らなければいけないメッセージが逆に伝わりにくい社会になってしまっている。映像は多くある分、そこに描かれるものの意味であったり、自らの見識みたいのを常に鍛えないと、逆の意味でぬるま湯状態になるなーという恐ろしさを感じてしまう鑑賞になりました。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズなんばにて


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