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一本の電話で救われた話

一昨日、4ヶ月ぶりに元職場の先輩に連絡をした。

年は私よりも8個上(多分)。奥さんも子供もいて、パパをしながら先生を続ける、私の師匠のような存在。笑いと叱りを交えたメリハリのある指導は全校でもトップクラス。「この先生に任せれば間違いない」と、職員室の誰しもが認める学校のエースである。

昨年度は学年部が同じだったこともあり、ほぼ毎日お互いのクラスのことを話しては笑ったり、解決策を考えたり、常に頼らせてもらっていた。先輩でありながらも自分にとっての「先生」であった。

そんなお世話になった先輩に「今休職しています」とはなかなかすんなり伝えることができず、前に会った時から4ヶ月が経過した一昨日まで、なんとなく連絡できずにいたのだ。そんな先輩に電話するきっかけになったのは、一昨日見た夢だった。

休職してからというものの、寝つきが悪いのか毎晩のように鮮明な夢を見る。大体は身の回りの友達や家族が出て来る夢なのだが、一昨日は偶然にも先輩がでてきたのであった。

「これは何かのタイミングだ」と思った私は、勇気を振り絞って連絡した。返信が来てからは、今まで自分は何を怖がっていたのかと思うくらいいつも通りのやりとりで、もっと早く連絡すればよかったと心底後悔した。

その流れで昨日、近況報告を兼ねて久しぶりに電話をすることに。


第一声、「おっつかれさまでぇ〜す。」

なっ、懐かしい・・・いつも聞いていたあの声、一瞬で去年までの記憶が蘇った。それから最近の過ごし方や私の心境の変化を伝え、「もう戻らないつもりでいるんです。」ということも話した。

そんなことを言ったら一発、喝を入れられるのではないかと内心ヒヤヒヤしていたが、返ってきた言葉は

「先生、頑張りすぎたんだよ。自分が選んだ道なら、それでいいと思う。」

というものだった。

・・・そうだ、この人こういう言葉を掛けてくれる人だった。

それからしばらく他愛もない話をした後、ボソリと先輩はこう言った。

「でもね、さっき言ったのは実際建前で。俺はもう一回先生と一緒に働きたいと思ってます。今でもライバルですからね。」

ヒョロっ子でペーペーだった私を、先輩はいつも「ライバル」だと言ってくれていた。競い合うわけではなく互いに学校を良くしていこう、学級をよくしていこう、そんな希望を馳せて毎日働いていた日々を思い出した。トラブルが解決するといつも「あぁ〜よかったね。」と自分のことのようにホッとしてくれていた先輩。

一生のうちで心から尊敬する人にはなかなか出会えないものだが、そんな神様のような人に出会え、その一言をもらえただけでも3年間頑張ってきた甲斐があったんじゃないかって、全部全部、救われたような気がした。


最近孤独感で凝り固まっていた私の心が、ジュワ〜っと溶かされ、一瞬心が揺らいだのは言うまでもない。だが決意は揺らぐことなく、迷わず進まなきゃという気持ちになれた一本の電話。

「この人に出会えてよかった」なんて軽々しく言えるものではないけど、昨日の電話は、そう確信できた数十分間だった。


いつか自分も、そう思ってもらえる日が来れば、生きている意味があるんじゃないかな。

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