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「対話」の中から聴こえてくる、イノベーションの産声|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

「実現すべき未来」を共につくるために、目的を共創し、新しい産業をカタチにしている組織があります。それが、『新産業共創スタジオ』です。

新産業共創スタジオは、今までになかった産業を”共創”し、社会に新しい価値を生み出すことを目指しています。そのための重要なファクターとなるのが、「対話」です。今回は、今年2月17日(水)に開催されたセッション『Industry-Up Day(s)』の様子をご紹介します。

イノベーション創出のためには、まず社会の中に埋もれている”目的”の解像度を高めることが重要になります。実現したい未来の輪郭が、オープンかつフラットな関係の中で生まれる対話によってはっきりと見えてくるからです。

新産業の創出は、「対話」から始まる

高度経済成長、バブルを経て、時は流れ・・・コロナ禍を迎えた現代。CO2排出、食糧危機、貧困、ヘルスケアなど、商品・サービスの完成度を高めるだけでは解決できない課題に直面しているのが、実情です。もはや1社1個人の力では、埋もれた目的を掘り出すことすら難しい時代が、やってきています。

ファシリテーターを務めるのはSUNDRED株式会社 留目 真伸さん。さらに株式会社フィラメントより角 勝さん、西日本電信電話株式会社(NTT西日本) 白波瀬 章さん、そしてエール株式会社の篠田さんも登壇し、「対話で生まれる新しい人生デザイン」と題したディスカッションが始まりました。

共創を成功させるための対話から「対聴」へ

———1社では解決できない課題に対し、どうやって新しいエコシステム(ビジネスにおける生態系)をつくれば良いのか。これはMBAでも教えてはくれません。そこで注目されているのが、「対話」です。価値観の異なる企業や人材が、対話を通じて同じ目的・世界観を共有できるかどうか。そこから共存共栄の関係が生まれれば、未来は変わるはずです。新産業と対話は、どのようにつながっているとお考えですか。

篠田さん:エールは、社外の複業人材による「オンライン1on1」サービスを提供しています。利用されているクライアントの多くが、業界の最先端を走っている企業、あるいは新たな分野を開拓してきた企業です。1on1の導入がもたらすのは、社員個人の成長と組織のパフォーマンスの向上です。

結局、仕事はコミュニケーションで成り立っています。社員一人ひとりの感情が言語化されると、企業内で「聴く連鎖」が生まれ、新しいアイデアを創出しようと思えるようになるわけです。

例えばコミュニケーションを「キャッチボール」で例えてみましょう。ボールを投げる側が「話す」、ボールを受ける側が「聴く」とします。上手にキャッチボールを続けるには、受ける側の技量が重要になりますよね。コミュニケーションも同じです。私たちは「話す」教育はわりと受けていますが、「聴き方」は習っていません。では改めて、「聴く」とはなんでしょう?

聞く・・・【with judgement】判断しながら相手の話を聞きます。
聴く・・・【without judgement】 肯定的な意図を前提に、相手を受け止めます。

聞くと聴く

組織にとって大切なのは、「聴く」。相手と価値観が異なっていても、聴くことに意識を向けて、丸ごと受け止めます。それが心理的安全性を高め、フラットな関係を築いていきます。

では新産業創造、という視点から考えてみましょう。
イノベーションを進め、新たな産業を生むには「組織の内外をつなげるコミュニケーション」が不可欠です。文脈が異なる人たちとのコミュニケーションは億劫に感じてしまいがちですが、「聴く」に意識を向けて対話ができれば、心理的なブレーキを外していけると思います。対話、よりも「対聴」と言った方がいいかもしれませんね。

新しい働き方と生き方が、社会に価値を生む

———近年、新産業のあり方や新たな価値創造の仕方が変わってきています。新しい働き方・生き方がどう変わってきたのか。キーワードを挙げながら、聴かせてください。

角さん:「自分の持ち場を決めない」ですね。コロナ禍で家にいることが増えて、部屋を片付けたり、麦茶を補充したりするようになりました。すると妻が「あら、お父さんでもできるのね」と(笑)。けっこうショックでした。今までできていなかったんだと気づかされると同時に、「自分の持ち場はそこじゃない」と思っていたんです。妻がやってくれることへの、甘えがありました。相手への期待ばかりで、自分は動いていないことはおそらく他にもあるでしょう。

持ち場を決めてしまうと、相手との対立関係が生まれてしまうかもしれないと、初めて気づきました。変化に対応できるようになるには、そもそも自分の守備範囲を意識しないことが、大切だと思ったんです。

白波瀬さん:「自分ゴトかどうか」でしょうか。「夢を持て」「やりたいことをやれ」とよく耳にしますが、そうじゃない人もたくさんいますよね。会社の中で「やらないといけない」と取り組んでいた仕事が、いつの間にか”自分ゴト”となり、「こういうのをやってみたい」と思うケースは、意外とあるのではないでしょうか。

やりたいことを「やれること」に変えれば、仕事へ思い入れが持てるようになる。すると、「もっとうまくやりたい。でもできない」と悔しさを感じるようになり、一線を超えようとする。そのチャレンジが次の力につながっていくと考えています。そのために必要なのが「対話」です。対話がきっかけとなって人との出会いを生み、課題や仕事が”自分ゴト”になっていく気がしています。

篠田さん:「やだな」を言語化して、認めてあげて、叫ぶ!ちょっと白波瀬さんと重なる部分もありますね。新しい生き方・働き方って、「主体的に」「夢を持って」「やりたいことは何?」・・・そんな論調が強くないですか?でも私自身、そういう価値観で動いてきたわけではありません。むしろいろいろな人との対話を通して、「これは自分と合っていない」と違和感を覚えるポイントをクリアにすることで、自分の進むべき道が見えてきました。これは新産業も同じだと思います。対話によって、好みや多様性が見えてくる。それが、新しいビジネスチャンスにつながる気がしています。だからこそ、利害関係のない人にじっくりと話を聴いてもらうと、自分の中で言葉になっていなかった部分がふと出てくる。それを丁寧に、少しずつ集めていけば新産業のタネも出てくるはずです。

新産業の原動力になる「個人の共感」

———目的思考で行動する『社会人=インタープレナー』たち自身が「社会課題を解決できるエコシステムを作りたい」と思っているだけでは、実現は難しいものです。産業としてどのように肉付けしていくのかを考えていくためにも、対話が必要になってくるわけですね。

角さん:インタープレナーとは何かという定義は様々だと思いますが、「相手にポジティブな興味を持って、話が聴けるかどうか」は大切だなと実感しています。相手の話につい前のめりになって、「面白くて仕方ないです」という気持ちが伝わると、関係が深まって、新しいプロジェクトが生まれていく。そんな経験を、私自身もしています。間口を広げて聴くことは、行動につながり、変化にも強くなります。

白波瀬さん:対話の中から、「共感」が生まれてくる瞬間ってありますよね。相手の話を聴いているうちに「ああ、そうそう」となっていく。良いところを紡ぎながら共感へたどり着くと、お互いの顔つきもグッと変わっていきます。SDGsに代表されるような共通する社会的価値観ができてきた中で、次の社会が求める目的を達成するには1社だけでは難しい。複数の企業が対話によって解像度を高め、物事が動き始めるといいなと思います。

篠田さん:今までの「新規事業の進め方」は、ほとんどがトップダウン型。社会も組織も、全て上下が決まっていました。官公庁は上で、民間企業は下。大企業は上で、中小企業は下。男は上で、女は下。情報を上から発信する側が強い立場にいて、次の動きを決められたんです。ところが今は、その関係がフラットになってきた。好機がどこにあるのか、正解は何かもあいまいです。むしろ、個々のユーザーにフィットしたものが産業になってしまう時代ですから。それぞれが欲しい仲間を集め、情報を得て、判断していく。そうした今の世界観にも「聴く」が合っているように感じています。


新しい産業、新しい生き方のために「今日からできること」

———新たな産業の創出、さらには人生を豊かに生きるために共感できる目的を掲げて、「やっていかなければ」と思います。が、なかなか簡単にはできません。具体的に今日から、何をしていけばいいのでしょうか?

角さん:「これが自分たちの強みだ。だから活かせる場所を探そう」と言って失敗している例を、よく見かけます。鍵にあう鍵穴を探すのではなく、相手の話を聴いて合わせてみる。そうすれば、ネットワークも広がり、お互いを高めあいながら新産業が生まれるのではないでしょうか。

白波瀬さん:今まで当たり前だった「仮説を作って、確認する」流れをやめてしまいましょう。時に、仮説はソリューションそのものになってしまうからです。本来は何に困っているかを聴くために、仮説を立てているはず。意識をフラットに戻し、本当に必要なソリューションを共感の中から生み出していきましょう。

篠田さん:緊急事態宣言が解除されれば、皆さんも職場に出勤するようになるでしょう。そうなると、いつも同じメンバーとランチに行っていませんか?もったいないです。月1回でも、月2回でもいいので別のコミュニティの人とランチをしてみましょう。同僚の知人を連れてきて、ランチに混ざってもらうんです。自分とは価値観が異なる人の話を聴く機会を増やしていけば、仕事のアクションと結びつきやすくなると思います。

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新しいビジネス、働き方、そして生き方。いずれも他者とのオープンでフラットな「対話=対聴」から始まるものでした。

”対聴”は、組織の多様性を浮かび上がらせ、新産業に欠かせない共感の種を発見するファーストステップになる。そんな可能性を感じさせるセッションでした。


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