うつ病を克服した芸能人を励みに
現代社会において、うつ病は多くの人々が直面する深刻な問題となりました。ご自身ではなくとも、会社や友人、ご家族にうつ病を経験した方が一人はいるのではないでしょうか。
うつ病は適切な薬物療法や精神療法によって寛解が目指せる病気です。実際に克服された方の体験談は、同じ悩みを抱える方々にとって大きな希望となることでしょう。
今回は、芸能界で活躍する中でうつ病を克服した著名人の体験談をご紹介します。彼らの勇気と努力が、皆さんにとっての励ましとなることを願っています。
※病気や希死念慮に関する内容を含むので、不安定な方はご注意ください。現在希死念慮がある方は、各種相談窓口へぜひご相談ください。
NON STYLE 石田明さん
NON STYLEと言えばM-1で優勝された後、テレビなどでも独特の存在感でご活躍されていました。(井上さんは今何をやっているのか定かではありませんが)石田さんは多方面に活躍されており、どことなく優しい雰囲気で、奥様のことも大事にされています。個人的に好感を持っています。
でもそんな石田さんにも、過去うつ病を発症されていた時期があるのですね。きっかけはM-1の優勝で突如クローズアップされ、レベルの違う演者達の中で力不足を痛感したことのようです。
(そういえば、キングコングの梶原さんも似たようなご経験をよく話していました。賞レースなどの影響で急に売れると、激しい環境の変化で心身を病むのは仕方がない気もします)
このエピソードを聞くと怖くなるのですが、実際に希死念慮はこうした形で生じることも多いそうです。つまり、意識の上では『そう』したくないのに、体が勝手に、無意識に惹かれて意志を遂げようとするのです。
抑うつ症状が強くてボーッとしている時、それでも体に何かさせようとするが、それは本音ではやりたくないし、本能的に『そう』すれば楽になることが分かっているので無意識にやってしまうのかもしれません。
しかし、特筆すべきはそんな状態でも病院に行かず、ついには家を出られなくなるまで我慢し続けた石田さんの『責任感の強さ』です。
私は(そこまで仕事のプライオリティが高くないので)そんな症状だったらもうとっくに休職ないし退職して家で寝ているでしょう。そのためか、体が勝手に動くという経験をしたことはありません。何百人何千人がガッカリしても特に躊躇なく休むと思います。結局、自分が元気でなければ人の役に立つこともできないと考えています。
石田さんが責任感の強い方だからこそご本人のショックも強かったものと思いますが、今は寛解しご活躍されていることに励まされます。記事の内容から、急性症状が強かったのか、依存性の高いベンゾジアゼピン系の頓服薬(デパスとか)を処方されていたのではないかと思われますが、奥様の素敵なサポートで、依存せず抜け出せたエピソードにほっこりします。
ネプチューン 名倉潤さん
名倉さんは、ヘルニア手術の侵襲が原因で発症したうつ病により、2019年8月から2か月間以上休業されたそうです。
うつ病の原因がはっきりしているのも稀なら、2か月で仕事が出来る程度に寛解するのはなかなかスピーディーで稀です。もともと身体症状が原因となっていたのであれば、むしろ適応障害のように、身体症状が落ち着くと共に精神症状も落ち着いたのかもしれません。
このようなエピソードは確かにうつ病の方からよく聞きます。あとで考えると「なんで?」と思うほど自分を責めてしまいがちです。
上記の記事には奥様へのインタビューが載っていますが、奥様も大変だっただろうな……とも感じます。自分のことじゃないので何が起きているのかますます分かりませんし、不安で混乱するのに、それをパートナーに伝えて支えてもらうことが難しい状態です。しかも精神病ですから「自分が側にいながら……」という罪悪感を覚えるかもしれません。
実際に、記事中でネプチューンの堀内健さんが『もっと話しておけばよかった』『ちょっと責任感じましたね』と語っておられますが、まぁ、身も蓋もありませんが、話しておいてもどうにかなるもんでもないです……。
明らかに本人が苦しんでいるのに放置していれば別ですが、うつ病にかかる方は典型的に『真面目で責任感が強い』と言われ、苦しみを他人に見せることは甘えだと感じる方も多いのです。記事から読み取れるところ、名倉さんもそんなご性格だったようです。
もちろんその性格は素敵なもので、悪いわけではありません。うつ病は誰かが悪い訳ではありません。しょうがない。もし発病前にご本人といさかいがあったとしても、ちょっと罵られただけで病気になるわけでもありませんし、実際には様々なことが複合して発症するはずです。
なので、うつ病の当事者も周囲の方もどうかご自分を責めないでください。
記事の中では、やはり「2か月は早すぎる」「本人が復職を望んでも、もっとしっかり休むべき」という意見が書かれていますが、私もそう思います。うつ病は良くなったと思っても、悪化と回復を繰り返すことがあり、2か月だと本当に治ったのかどうか判断がつきづらいと思います。ご本人がよほど強く望んだのかも知れません。
とはいえ復職されてから再発したという話も聞かないので、無事復帰が叶って何よりでした。今もなお第一線でご活躍されているので非常に勇気づけられます。
長嶋一茂さん
10年以上前のことだそうですが、もともとパニック障害を罹患されている時に、親しい方を立て続けに3人亡くされたことがきっかけでうつ病を発症されたそうです。
これは珍しいことではなく、特に重症・慢性のパニック障害をお持ちの方は、うつ病や他の不安症を併存するケースが多いのです。
希死念慮が強く、毎晩包丁を握るほどだったとのこと。
治療の流れは分かりませんが、「お子さんの存在」や「開き直り」が立ち直りへのきっかけだったとのこと。
それ自体は美談で良いのですが「気の持ちよう」で何とかなるように読み取れるので、そこだけ注意が必要かなと思いました。
書いていないだけできちんと医師にかかって(毎晩包丁を握るほどなら、本来は入院治療の方が良い気がしますが)投薬治療もされていたそうです。抗うつ薬が合わず悪化し(それは本当によくある)、余計に苦しまれたこともあるそう。
(私も個人的に、うつ病の治療薬は本当に副作用がひどくて困りました。なかなか効かないので過去に薬ジプシーしていて、眠気が出るくらいなら可愛いもので、発疹が手足にブツブツ広がったり、母乳が出たり、アカシジアが出たり散々な目に遭いました……とはいえ、副作用の出る・出ないは個人差が大きいので過度に心配する必要はありません)
長嶋さんの場合はむしろパニック障害の方が根深いようですが、体験や長嶋さんなりの克服法を本にされているので、同じご病気の方や、ご家族、周囲の方は一読されると良いかも知れません。
最後に
うつ病は決して乗り越えるのが簡単な病気ではありませんが、今回ご紹介した芸能人たちのように、希望を持ち続けることで光が見えることもあります。
彼らの体験談が、同じように苦しんでいる方々にとって少しでも励みになれば幸いです。うつ病は誰にでも起こりうる病気です。私たちは一人ではありません。
うつ病になったとしても、なかなか治らなかったとしても、それはあなた自身の努力が足りないからではありません。
時に一進一退で、自分が良くなっているのかどうかすら確信が持てず、不安な日々を送られるかもしれません。
それでも、いつか、「あの時は大変だったね」と過去形で話せる日が来ることを信じて、焦らず一日、一日まずは生きてください。それだけでいいんです。今は信じられなくても、その日々が積み重なり、いつか実を結ぶ日が来るでしょう。
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