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孤独を求めてしまうこと



人並みに傷ついて大人になったし、振り返ってみれば傷跡も見えるけれど、そのどれも今思い返してみると大したことなかったようにも思う。


でも気付けば人を信用できない人間になっていたし、フィーリングが合う人に出会ってもその後の悲しい結末を勝手に予測してそれ以上踏み込まないようにした。だから友達は少ない方だ。


今日急に体調を崩して今日のうちに気付く人は誰もいないだろう。もし万が一のことがあっても知れるのは最速で月曜日。最初に気付くのはきっと会社の上司だ。もしくは、気を遣って連絡を控えている母親の我慢のキャパが運よく超えることがあれば少し早く気付かれるかもしれない。そんなもんだ。



土曜日。朝起きて、アレクサに話しかけるとカーテンが開き、リビングの電気がつき、テレビからニュースが流れてくる。溜まった洗濯物を洗濯機に入れてスイッチを押す。朝食か昼食か分からないものを食べながら、昨日飲んだハイボールの量を空いた炭酸水のペットボトルから逆算する。


週末のテレビはいい。穏やかな雰囲気を肺いっぱいに吸い込むことができる。食後のコーヒーを飲んでいると、ふと同期と話したドラマのことを思い出した。あのドラマはどこかで配信されているのだろうか。どうやらTVerで観れるらしい。


だってさ、ゲームで言ったら、レベルアップしないで、何回も何回も同じこと繰り返してるわけじゃん。余裕でクリアできるステージを。

道上まりぶ(柳楽優弥)『ゆとりですがなにか』より


自分もいわゆる”ゆとり世代”な訳で、括り方とか、個人差あるだろとかいろいろ思うことはあるけれども、耳の痛いセリフもちらほら。


何のためにその大学に入ったか、その会社を選んだのか、その会社を辞めて入ったのがなぜこの会社だったのか。昔から飽きっぽい自分はもしかしたら会社員が向いてないのかも知れないと感じながら次の道が決まる前に会社を辞めるなんて思い切ったことする勇気はなくて、そんな風に毎日を過ごしてたら意思とは裏腹に仕事やチームを回すことが年々上手くなっていって、あれ結局向いてんじゃんなんて思ってみたり。


会社という世界の中で、社会という宇宙の中で、目立たないように安住できる場所を探しながら、そんな自分に気付いてほしいという天邪鬼な気持ちもあって。ギラギラしたような気持ちを持っていた時代があったか分からないけど、20代前半はもう少し未来に希望があったのだろうか、自分に期待していたのだろうか。


いや、こんなことを考えていること自体自分への過信なのかもしれない。危ない、沸々と湧き上がってくる「こんなもんじゃない」があと少しで自分の口から出そうだった。


気付けば3話を観終えた。なんだ、4話がないじゃないか。放送当時とあまりに違う感じ方に戸惑っているけれど、やはり面白かった。


ここまでアレクサ以外とは会話もしていないが、まだ寂しさは感じていないみたいだ。でも例えばこれが一生続くと考えた時に少しだけ不安に思う自分もいる。ただその不安の解消をした時にこの時間がなくなることも同時に不安だ。やめよう、これ以上考えても今日の自分から答えは出ないのだから。



すっかり日課になってるiPhone15proのステータス確認。処理中のまま動く気配のないことを確認してから、星野源『いのちの車窓から』をKindleで購入した。


先日Netflixで配信されている『LIGHTHOUSE』を一気見して、星野源と若林正恭という2人の人間に惚れ込んでしまった。静かな雷に打たれたような感覚。言葉への感情の乗せ方、相手の言葉に対する返しの表現、どれもそっと心に入ってくる。


土足で人の心に入ってくる人が嫌いだ。できればノックしてほしいし、お邪魔しますと言ってほしいし、靴も揃えてくれると嬉しい。2人の話し方、話の聞き方はそれが全てがなされていた。


きっと2人のファンからしたら周知のことで、特にラジオをよく聞く人からしたら当たり前のことなんだろうけど、自分には本当にもう衝撃だった。回を重ねるごとに若林さんが星野さんにどんどん前のめりになって、好きだと伝える。伝えたくなるほど魅力的な星野さん、そしてそれを素直に伝えられる若林さん。安直な形容詞だが素敵な人たちだ。


もっともっとこの人たちの文章を読みたいと思った。誰かにとっては昔から知っていたことも自分にとっては今とても新鮮で、今だから刺さること響くことがあるのかもしれない。新しい何かに触れるのは楽しくてしょうがないな。


手を繋ぎ帰ろうか 今日は何食べよう
「こんなことがあった」って 君と話したかったんだ

星野源『喜劇』より


スピーカーから流れる曲の歌詞に胸がチクリ。今日初めて”寂しい”という感情に気付いた。それなのにその瞬間にも自分の中に根を張る「人はどうせ裏切るから信用するな」が大きく成長している。


一人でいることは寂しいけど同時に絶対に裏切られることはないという安心感も与えてくれる。自分の意思で一人でいれば、誰かに一人にされることはないから。


人を自分の心に招くこと、人に招かれた心に入ること、それらを恐れないこと、自分がするべきことは見えているのに、安全な道「孤独」を選んでしまう。



18時。軽い夕食でも作って、今夜もハイボールを飲もう。とりあえず今日のところはこれで特上の幸せを感じられるのだからいいだろう。


いつかこれを笑いながら話せる相手がいれば話せばいいし、いなくてもその時は数少ない友達に話せばいいか。その友達も捕まらなければアレクサもいるし、この場所もあるし。なんとかなるよ、きっとね。


今日の答えが出た所で曲も変わっていた。


「なんてことない」なんてことない!...けど
形のない何かで交われる
君の体をWi-Fiが通り抜け 道草で腹を満たす
またその場所に君はいた
もしかすると孤独は一人ではないって...

みえる!

Starting off with you and I
さらしものだけの 夢があるだろう
まだ変わらない 怠けた朝が
歩みを照らしだす

星野源 feat. PUNPEE『さらしもの』より


寂しいのか、自分で自分を幸せにできるのか、よく分からない人間のひとりごとをまた聞いてやってもいいよという方、またここでお会いしましょう。それでは。




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