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支援を考える際に大切にしている二つの基準

よこはま発達相談室の公認心理師の佐々木です。

この2ヶ月間、TwitterInstagramFacebookstand.fmなどは更新しておったのですが、noteだけ更新できずでした。今回は久しぶりの更新です。今回は、「支援を考える際に大切にしている2つの基準」というテーマでまとめていきたいと思います。

「誰のためか」

一つは、今の支援が「誰のためになっているのか、ご本人のニーズを満たすものになっているのか」という視点です。ぼくらが「良かれ」と思ったことが、必ずしもご本人にとってはそうではないこともあります。その結果、

  • 「ご本人のニーズ」と「周囲のニーズ」が必ずしも一致するとは限らず

  • そこにズレが生じてしまった場合には、「ご本人のための支援」ではなく「周囲のための支援」になってしまう

ということが生じます。その辺りについては、以前も別の記事にまとめたのでそちらをご確認ください。

人生の豊かさにつながるか

もう一つ大事な視点は、その支援プランが達成できた場合に、その人の人生の豊かさに繋がるかどうかです。できることが増えたとしても、その結果、「楽しい」「良かった」と感じられることが増えなければ、それは「誰にとって良かったのか?」と疑問が生じないでしょうか?

例えば、コミュニケーション支援を例にとってみます。コミュニケーションと言っても幅が広いので、さまざまなプランが出てくると思います。

  • 「おはようございます」「ありがとうございました」と挨拶をする

  • 「できました」と報告をする

  • 「〇〇に行きたい」「〇〇が食べたい」と要求を伝える

  • 「手伝ってほしい」「助けてほしい」とヘルプを求める

「おはようございます」「ありがとうございました」などを言えることで、その方の生活の質(QOL)の向上に繋がるなら良いと思います。でも、挨拶よりも「手伝ってほしい」「〇〇ちょうだい」と言えた方が、今のその方の人生がより豊かになると判断できれば、そちらを積極的に教えることの方がもっと大切なのではないかと、ぼくは思います。

たとえば

支援現場では「見通しを伝えることが大事」とよく言われると思います。そのための、具体的な考え方として、

  • スケジュールを使う

  • 予告をする

  • 先行きを予測可能なものになるように伝えていく(Aだったら〇〇、Bだったら〇〇など)

というものがあります。でも、その時にもだた伝えたら良いわけではなくて、

  • どの情報を伝えたらためになるのか

  • 知りたい情報って何なんだろうか

  • とそれを知れることによって負担が軽くなるのか

こうした視点から考えていくことが重要で、これらの視点が抜け、伝えたいことだけをお伝えしていった場合にはうまくいかない場合が多いです。

以前お会いした方で、見通しを伝えるためのカレンダーを使っておられる方がおりました。そうした発想はとても良いことだと思います。ですが、「いつもビリビリに破いてしまうので、どうしたら良いか?」とご相談をお受けしました。

提示されている予定としては、ご本人の楽しい活動よりも、作業所はいつなのか、病院はいつなのかという、そこまで楽しみにしている予定ではないものが中心でした。もちろん、どれも重要な情報ではあると思います。

でも、ご本人が知りたいのは「いつものコンビニにいつ行けるんだろうか」「いつドライブなのか」「いつ外食なのか」ということのようでした。そこで、親御さんとも相談しながら、まずはそうしたご本人にとって動機のある情報を中心にお伝えしていきながら、「カレンダーって便利」と思ってもらうようにしましょうと方向性を変更しました。

そうした取り組みを続けた結果、カレンダーを破ることはなくなり、徐々に楽しみではないけれども大切な情報(通院など)を入れても、自分でよくチェックしてくれるようになりました。

まとめ

支援を考える際には、色々な形があります。それは十人十色と言っても良いかもしれません。その際に大事なことは、

  1. ご本人のニーズがあるか

  2. 人生の豊かさに繋がるんだろうか

という視点ではないでしょうか。とはいえ、ぼくも不十分だったり、悩んでばかりです。けれども、悩んだ時ほど、今日お伝えした二つの視点から考えてみるようにしています。

ちなみに、支援を考える際には、「そもそも自閉症スペクトラムの方々ってどんな風にものごとを捉えているんだろうか」を知ることがヒントになると思います。相手のことを知らなければ、どうやり取りをしていったら良いかわからないというのは、ぼくらでも同じですよね。これらについても過去にまとめたので宜しければご覧ください。

もっともっと深堀りをしていくと、ご本人の豊かさに加えて、ご家族や支援者の方々のウェルビーイングを考えていくことが重要だとも思いますが、その辺りはまた別の機会にお話をしていきたいなと思っております。

それでは、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
音声でも配信しておりますので、そのURLは下記に貼っておきます。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

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