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TEACCH Autism Programって?

*この記事は、YouTubeで配信している音声を記事にしたものです。

よこはま発達相談室の佐々木です。僕らは、医師・心理士・言語聴覚士・ソーシャルワーカーなど、様々な専門職が連携を取りながら発達障害の方々の支援を専門にさせて頂いております。特に年齢の制限はなく、対面/オンラインと可能な限りそれぞれの方々のニーズにあわせた形でご相談をさせていただいております。

今回は「TEACCHってなんだろう?」というテーマについてお話をしていきたいと思います。

僕たちが大事にしているSPELLとTEACCH

よこはま発達相談室では、職種に関係なく開設当初より大事にしている2つの軸があります。それが、SPELLとTEACCHです。

SPELLは英国自閉症協会が提唱している支援のフレームワークであり、noteを書き始めた頃にまとめさせて頂きました。

TEACCHはアメリカのノースカロライナ大学を拠点に実施されている支援プログラム(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children:自閉症とその関連する領域にあるコミュニケーション障害の子どもたちの治療と教育)です。その実践がASDの方々やそのご家族にとって非常に価値が高く、多くの国の自閉症支援に影響を与えているのですが、僕たちが大事にしたいと思っているのは、TEACCHの基本理念です。

TEACCHの9つの哲学

TEACCHプログラムの創始者であるエリック・ショプラー先生は、TEACCHの実践の基礎となる考え方を、TEACCHのPhilosophy(哲学)として、下記のような9箇条にまとめています。

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どれも大切な考え方なのですが、ここでは、多くの方にとってこの項目を見るだけではイメージがつきにくい2つに絞ってまとめていきたいと思います。

認知理論と行動理論を重視する

支援プログラムを考える際には、ASDの方々の認知特性(ものごとの捉え方や感じ方)から支援方法を考えていこう、そんな意味です。具体的に、どのような認知特性があるかは、以前noteにもまとめておりますので、ご関心ある方は過去の記事からお読み頂ければと思います。

TEACCHでは、ASDの方々の認知特性を変えようとはしません。なぜなら、特性があることで不都合を感じることもあるかもしれませんが、同時に魅力的な面も多いと考えているからです。

ただし、多数派が作った社会の中では、多数派の考え方を理解したり、自分にとって不都合の少ない方法を手に入れることは役に立つとも思います。その時のポイントとして僕が思うことは、「認知特性そのものは変えられないけれども、そのことと行動が変わらないことは別である」ということです。

例えば、求められていることがわからないために混乱しているとします。そうした時に、「今の状況が理解できないという認知特性は変えられないので、混乱する状況も変えられないのか?」と問われれば、そうではありません。僕たちができることは、「認知特性は変えられないけれども、その方に届ける情報は変えられる。受け取る情報が変わることで、行動も変わる」という発想が重要だと考えています。イメージとしては、下記のような感じです(もちろん、そんなに単純でないこともありますが)。

求められていることを口頭で説明する→混乱する
求められていることを視覚的に説明する→混乱せずに行動できる

TEACCHでは、ASDの方々が、何をするのかを自分で理解できていること、求められていることが予測できることを重視しています。意味が理解できる環境下で学び、自分にとって意味のある時間を過ごせること、「できた」「わかった」と思える機会が増える過程は、自己肯定感を育むことにつながると考えているからです。

ジェネラリストモデル

ASDの方々の支援では、医師、心理士、保育士、教師、言語聴覚士、ケースワーカー、作業療法士や理学療法士、指導員、ヘルパー、就労支援の専門家など、その時々の状況に応じて、多種多様な支援者が関与します。

日本では、療育活動は保育士や指導員の先生方が担い、相談や心理・発達検査は公認心理師などの専門家が担当するといった棲み分けがなされることが少なくありませんが、TEACCHでは、どのスタッフでも知的に重度〜高機能の方々のテストや療育、成人本人や保護者のカウンセリングも全てを行えるようにトレーニングがなされます。つまり、それぞれの専門家が自分の専門性を有し、スペシャリストであると同時に、全体を見渡し理解する視点を持ったジェネラリストとしての姿勢を重視しています。

僕たちもこうした考え方は大事にしているため、僕は心理の立場ですが、医師の診察や言語聴覚士の指導に同席したことは何度もありますし、またその逆もあったりします。もちろん、一人で全てを抱え込んだり、あらゆる領域のことができなければならないわけではありません。ただ、自分の専門領域以外のことを知っておくことで、様々な角度からより柔軟な支援を考えることができたり、広い視点で見立て(アセスメント)を立てることができるようになるため、支援プランにも幅がでてきます。

例えば、発達障害に関する特性を把握する際には、発達障害のことだけを知っているのでは不十分で、定型発達のことや関連する精神科的な知識も必要です。また、それぞれの方にとって、今必要なサービスはなんなのかプランを考える際には、そもそもどんなサービスがあるのかを把握していないと、必要なサポートをし損ねてしまうことにも繋がりかねないのではないか、そんな風に考えています。

そのため、「スペシャリストでもあり、ジェネラリストでもある」というのは、僕たちが大切にしていきたいと思っているTEACCHの理念の一つです。

本日は、TEACCHの哲学について、ごく一部ではありますが説明させて頂きました。本日も最後までお付き合いくださりありがとうございました。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

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