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それでも愛しい娘 その2
おかしいのは私!?
発達障害にたどり着くまでの長い間、色々なところへ相談してきましたが、答えはいつも同じ。「お子さんに問題はない」、「お母さんの心配し過ぎ」、「もっと大らかに子育てを楽しみましょう」、「外で頑張っている子供は、お家で甘えさせてあげることが大事です」などなど。神経質なお母さんを安心させようとする言葉ばかりで、理解どころか逆に私がおかしいかのように言われました。
問題のない、ただおとなしいだけの子供をつかまえて「夫に似て、何かがおかしい!」と訴える母親は、逆に大丈夫かと疑われたのです。
娘のお陰で元夫も発達障害だと分かりましたが、こんな調子でしたから、見えない障害を周囲に理解してもらうのは、ほぼ無理なことでした。ただ結婚以来、元夫に悩まされ続けていた私の我慢の限界がきていたのは確かでした。
人を怒らせる天才
娘は、親に向かってよくそんな生意気な口が利けるなと感心するほど、有り得ない言動を取る子供でした。道徳がなかなか身につかないスペクトラムの特性を持つ子供にはありがちなことで、それは困っているサインでもありました。自分の言動がどういう意味を持つか、なぜいけないのか、全然分からなかったのです。
スペクトラムの事が分かってくると、娘同様、私も変わらなければいけませんでした。どんなに腹の立つことを言われても、怒ってはいけないのでした。おまけに、その言動のどこがどのようにいけなかったのか、娘に分かるよう「簡潔に」説明しなければならなくなりました。
けれど、あーだこーだと文句を言われ何から何までさせられて、挙げ句の果てに、元夫同様偉そうに振る舞われるのですから、許せなくなってしまうのでした。
「聖人君子じゃあるまいし!」と、怒ったり、反省してまた頑張ってみたり。その繰り返しをずっとしていたように思います。人は知ることで変わることができると思っていますが、私と娘はお互い本当に少しづつ、ぶつかりながら時間をかけて変わってきたように思います。発達関連の本は、何冊読んだか分からないくらい読んで勉強し、娘とのやりとりを細かく記録して、どうしてそうなったかを説明するようにしました。面倒でしたが、会話の記録は、やり取りの整理に役立ちました。
挑発的な発言はもちろんですが、うちの二人とは、ただ話しているだけで敵と話しているような気分になりました。彼らは私に同調もしなければ、同調されていることも気づきません。「同調の欠如」はコミュニケーションの誤解を招きますから、何を話しても嫌な気分になるという訳です。
と、ここまで散々悪いことを書いてきましたが、娘は同調の大切さを知って、家でもほどほどに私に同調してくれるようになりました。(忘れる事もありますが)
表情などの非言語情報が分からない
彼女が一番苦手なのは、言葉以外の非言語情報を汲み取ることです。コミュニケーションにおいて、非言語情報とは、その時の状況や表情、身振り手振り、言い回しや口調、抑揚など、視覚的な要素と聴覚的な要素のことで、人の会話の90%以上を占めていると言われています。
それが苦手ということは、会話の真意が伝わらなくて当然です。娘は非言語の意味をひとりでは気づけないので、サポートが必要になる訳ですが、それもやはり簡単ではありません。彼女がその時、何に困っているかは、本人も説明できないことが多いからです。
更に良いのか悪いのか、外でうまく出来ることもあるけれど、それは過剰適応にもなるので、注意が必要になりです。サポートと言っても何が必要なのか、その時になってみないと分からないのは、いまだに悩みの種です。
リアルな自分を知る
特性で認知の歪みというものがあります。自分のことを客観的に捉えることが苦手なことです。自分の事が分からないということは、何をしたいか、何に向いているのかも分からないわけで、高3の進路決めの今かなり苦戦しています。
とにかく本当の自分を理解すること、誰であろうと人と真摯に向き合うこと、感謝を忘れない態度を習得すること、に努力して下さいと言い渡してあります。いろいろあるけど、人としての基本は一番大切なことと思います。
そして、彼女をサポートする母親である私の心構えは、大変でも諦めないこと(自分を犠牲にし過ぎないー分かっていても、犠牲にならないといけないことが多いけど)、娘に本人責任で考えさせるようにガイドすること、関わりすぎず、放置しすぎず、適当に手を抜くこと(これが多分一番難しい)、人に相談すること、ユーモアを忘れないこと。笑顔はどんな時も大事です。脳の癖から、すぐに不機嫌、怒りに繋がる人たちなので、笑う為の努力は惜しまないようにしたいところです。
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