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あなたには価値がある|本当に目指すべきはルールの書き換えだ。起業家アンドリュー・ヤングが描く未来

水曜日、アメリカ。この日の一大イベントは2020大統領選、民主党ディベートではありませんでした。この日、アメリカのニュースはトランプ大統領の弾劾ヒアリング一色に。この日の弾劾ヒアリングにはアメリカのEU大使ゴードン・ソンドランドが証人として呼ばれていました。

ウクライナのゼレンスキー大統領がホワイトハウスでトランプ大統領とミーティングできる「quid pro quo」「見返り」として、2020米大統領選、民主党最有力候補、トランプ大統領のライバルであるジョー・バイデンの息子(ウクライナのガス会社の取締役)の”粗探し”をするために刑事捜査してほしい、という要求を突きつけていた事実があったことを、ソンドランド大使が認めたのです。「quid pro quo 」をオファーして刑事捜査を依頼するのは完全に違法。

弾劾ヒアリングでニュースが外交政策一色になった為か、ディベートの質問者が全員女性だったからなのかはよく分らないのですが、今回のディベートは外交政策より「育児」についての討論がいつもより積極的になされていました。

趣味で米大統領選を観ている私の一押しは、ユニバーサル・ベーシック・インカム(通称UBI)を掲げているアンドリュー・ヤング。

今回のディベートが開催されたジョージアでは、乳児1人あたりの1年間のデイケアの平均価格が8500ドル(約92万円)。これはジョージア州の4年制公立大学の学費より高く、子供を産んでも共働きしたい家庭や、共働きでないと家庭を維持できない家族にとっては、経済的負担がとても大きくなっています。この難題をどう解決するか、質問されたヤングはこう答えました。 

「新しく母になった人がいる家庭に対して、家族有給休暇(子供を新たに産んだ家庭に、政府からなんらかの育児手当てを出しているか否かという意味)を与えていないのは世界でアメリカと、パプアニューギニアだけだ。だから、そのリストからなるべく早くアメリカの名前を消さないといけないよね」(会場爆笑)

「我々は子供や家族へのサポートを始めから作り直さないといけない。プレKやキンダーに子供達が入れるぐらい成長してからでは、多くの場合ヘルプが遅れて手がつけられなくなっている。様々な研究結果が、子供の教育結果の2/3は家庭環境が大いに関係しているとはっきり示している。ストレスレベルや、子供の時にどれだけ言葉の読み書きを覚えられるか、どんな子供が近所に住んでいるか、両親とどれだけ一緒に過ごせるか、などが関係している。」

「我々はUBIを導入したその初日から、1ヶ月1000ドル(約11万)を全てのアメリカの大人に配ります。つまり、ほとんどの家庭では2000ドルがポケットに入ることになり、幼児のデイケアに使ったり、金銭的余裕を生み出すことで両親共に働きにでなくても子供と一緒に過ごすこともできる。我々はUBIをどう使うかは干渉しないが、多くの研究結果が親が子供と一緒に過ごす時間は多い方がいいと示しています。」

養育費や教育費が高騰しつづけ、政府からのヘルプが遅れてるなか、各家庭の経済的負担が大きくなっている…アメリカで育児手当が支給されていない背景には、子供を持たない家庭が増えていて、その家庭からも育児手当に充てる税金を取るのは公平さに欠ける、という考え方があるようです。この難題はアメリカだけに当てはまるものではなく、世界中どの家庭にも当てはまる問題で、公平に解決する手段の1つがUBIだ、とヤングはいっています。

ヤングのUBIや、第4革命についてはこちらにも書いています。

また、アメリカで中々解決しない大きな問題の1つは白人至上主義です。この問題に対してヤングは

「白人至上主義テロリズムは、国家のテロリズムだと捉える必要がある。私はアンタイテロリズムのアクティビスト、クリスチャン・ペトレミニと話たことがあります。彼はどうして10年もの間、過激な白人至上主義者となってしまったのか話てくれました。14歳のクリスチャンはとても孤独で、その孤独を紛らわす為に白人至上主義というヘイトグループに手を出してしまった」

「彼は今、グループから抜け、自分と同じように白人至上主義になりそうな若い人を助けています。彼は14歳の時に、誰かが手を差し伸べてくれれば孤独から救われた、といっています。学校の先生か、地域の人か、誰かが手を引いてくれれば…ヘイトグループには参加しなかった、と。」

「我々は根本的に社会を作り直さないとならない。まさに今、孤独の隙間に落ちそうな若者達が前に進める道をつくらないといけない。銃乱射事件の加害者は96%以上が若者だと我々は知っています。それらの若者や、その家族を経済的に立て直しヘイトから抜け、健全に彼らが前に進める道を作らなくてはなりません。」

このスピーチを聞いたクリスチャンは、「俺の経験を話してくれて、ありがとう!ヤング」とツイート。

とりあえず”育児手当”を出したり、とりあえず”時短勤務”や“残業禁止”を作り家族と過ごせる時間を作ったところで、家庭内経済が良くなったり、仕事自体の生産性の向上にはならないことは、みんな実感していると思います。

本当の意味で、少子化対策し、今起きている白人至上主義テロリズムや、AI化により加速する失業問題に、どう対応するのか?ヤングは今回のディベートで「rewriting the rules」「ルールを書き直そう」という、言葉を何度も使っていました。

「私は2人の子供の親ですが、子供の将来の不安を口に出せない親御さんはいませんか?我々の子供達は、大丈夫なんかじゃない。なぜなら、我々は自分達が生きてきた環境よりも、より厳しい環境(経済格差問題、気候変動問題など)に子供達を残してしまうことになるからです。加速する第4革命は、取り残された我々をますますサイドに押しやります。私は大統領になりたいから、この選挙に参加した訳ではありません。そんな凄い奴じゃないしね。」

「ワシントンD.C.(ホワイトハウス)にいる人達は、この第4革命問題には触れない。彼等は自分達が解決策を持っている問題にしか触れないのです。私は大統領になりたいから、大統領選に参加しているわけではなく、私は今日ここにいる皆さんと同じように子供の親であり、アメリカという国を愛する1人だから大統領選に出馬しました。そして、子供達の未来を考えると、とても受け入れられるものではありません。我々は前進し、より前に進める方法を作る必要があります。我々と一緒に、21世紀の新しいルール(rewriting  the rules) を作りませんか?」

今の政治をディスプラウトすれば、子育てや、経済格差、失業者問題、人種差別、など様々な問題を根本的に解決する道がみえてくる。

ワクワクしませんか?!

「未来」という言葉は、漠然としていて実は今ある幸せを一番感じにくくしているな、とよく思うのですが、例えば「老後に2000万円必要です」とか「年金は減ります」「国民健康保険は破綻します」「所得税が税源にならないので、消費税増やします」「お金のある人だけ英語教育受けられます」などと先の不安ばかりを政府があおると、その不安から「韓国はNOだ」「自分達と違う奴らはNOだ」とか本来なら解決できる問題が、更に複雑化しているように思います。そもそも、年金が必要な歳まで生きている保証はないし、それまで地球が今のように住める状態である保証もない。私は不安ばかりをあおるのが「未来」という言葉のパラドックスのように感じていて、その「未来」という言葉”だけ”を使っているのが、今の日本の政治だと、どうしても思ってしまう…

ヤングは現時点で、来月のディベート出場資格を獲得できておらず、もしかしたら今回が最後のディベートになる可能性がでてきています。今回のスピーチの最後は今までで1番人間身のある熱いメッセージで締めくくられていました。

「我々と一緒に新しいルールを作ろう!それをメイクすることで、子供達の目を見てこういえるんだ。君達は大丈夫だって。そして信じていいんだ。君達の国は君達が大好きだし、君達にバリュー(価値)を与える。そう、君達は大丈夫なんだ」

なんだか胸に熱くこみ上げてくるものがあって、ウルっとしてしまいました。

「未来」を語るならこれぐらいの意気込みで取り組みたい。


Bibliography:民主党ディベートハイライト

Bibliography :アンドリュー・ヤング 第5回ディベートフルハイライト









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