#エッセイ 『準備しなくちゃ』

   私達人間は多くの場合、何かにつけ生活の中で次に向けた目標に向かって準備をしますよね。身近な例で言えば旅行の為の準備。これは楽しい時間をこれから過ごすための行為(準備)ですからウキウキしますよね。旅行の為に新しいお洋服やカバンを買うのだって大切な準備!コレも、もしかしたら旅行の楽しみの一つかもしれませんよね。まだ旅行に行ってないのに(笑)。また、人生を賭けた準備だってありますよね。受験勉強なんてそんな感じですよね。一年後の入試に向けて頑張るなんてことを多くの人は経験しているのではないでしょいうか?このように私たちは子供の事から常に前もって準備をするという事が、半ば習慣になっているし、当たり前になっている感じですよね。ちょっと調べてみると、ボーイスカウトなんかでは標語として『備えよ常に』なんて言うそうですね。

  “準備する”という事で私の記憶をたどるなら、社会人になりたての頃を思い出します。当時の私の上司は四十前の人で、毎日何かしら怒鳴られていたもんです。あの頃は溢れる程の仕事量を毎日抱えて、どうしてもこなしきれない日々が続いていました。まだ二十代半ばで会社にも仕事にも慣れていない事もあり、アセッて処理をかけてしまっていたんですね。色々やらかしたもんです。まぁ連日懲りもせず上司から説教をされるのですが、その中でよくその上司が怒りながら言っていた言葉があるんですね、
『仕事はな、段取り七分や!』
これを叱られながら聞いて思ったのですが、この上司の場合“段取り”とは“準備と”いう意味で使っていたようです。確かに段取り(準備)が出来ていたら進みは早いと思います。“それが出来れば苦労せんわ!”とは当然言えず、むしろそのお叱りを聞きながら“まぁおっしゃる通りですねぇ・・・”と思って聞いていたもんです。これも今となってよくよく考えると、この“段取り”は準備ではなく普通に仕事になっているのではないかと思うのですけどね・・(笑)。この話は私の若いころのちょっとした苦い思い出で、例としてはあんまりいい話ではないかもしれませんね。実はこの話を今になって思い返すと当時の失敗(準備が出来なかった事)の原因がよく分かるんですね。あの頃の私は入社したばっかりで、自分のやっている仕事の内容の深い所と大切なポイントが今一つ理解できていなかったのですね。その上司に一つ一つを丁寧に聞ければよかったのですが、チョッと怖くて聞けない雰囲気と、目の前に積み上がる書類でまずは処理をかけなければという感じでした。分からぬところは後でまとめて聞こうと思ったら時間が経ちすぎて今更聞けず・・・なんていう砂を噛む様な思いで過ごしていました。まぁ準備をしようにも出来ないといった感じだったのですね(笑)。物事をちゃんと理解しなければ、あの上司のいうところの準備すら出来ないという事ですね。恥ずかしい限りですけど・・。ともあれ人はみな準備の良し悪しでその後の展開が変わるという事はよくあると思うんです。何事にも段取り(準備)のいい人っていいますよね。テキパキして、そういう人って気持ちがいいですよね!

  ところがそれとはまた逆の話を聞く機会があり、その話を聞いて考えさせられたことがあるのです。私には八十を超えた父親がいるのですが、その父親と数年前に話をしていた時の事です。話の内容は私の仕事の話だったと思います。その話の流れで、
『やっぱり仕事はさ、何事も準備が出来ていないとアカンね!』
と私が言った時だと思うのですがそれに対する父親の返答が思いがけない内容でした。『そりゃ何事にも準備が出来ているのはいい事だな!でもな、実は世の中はそうもいかない事が多いいぞ。極端な事を言うならな・・・そうだな・・例えば大きな地震が起きた時でもいいよ。多くの人は普段からリュックに非常食でも詰めて、準備と称してそれを玄関にでも置いてたりするだろ!』
『まぁそうだね!それすら俺はやってないけどね(笑)』
『でもお前よく考えてみろ!地震はいつ来るか分かんないんだぞ!お前が電車に乗ってる時とか、家から遠い街の中を歩いている時に来るかもしれないんだぞ!その時に走って取りに帰るのか?(笑)』
『そりゃ難しいわな!』
『何に対して準備をするかにもよるが、いつ起きるか分からないものに対しては準備はやりようが無かったりするんだぞ。』『・・・・・』(そりゃそうだ!と思いつつ絶句)
『この手の話で大切な事はだな、何か事が起きたらな、その起きた出来事に対してだな、その場に臨んでそこで出来ることをしていくしかないという事なんだよ。人はみな生活の中で、準備されたことに対処するより、実は突発的な出来事にその場で対応している事の方が多いんだぞ!』
『・・・なるほどね・・』

   この会話の後、少し考えてしまいました。来るべき未来に備えて何事も“準備しなくちゃ!”と考えがちですが準備が出来る事と出来ない事がやっぱりあるなぁという事を。誰もが人生で必ず迎えると分かっている未来の事に対しては準備をして構えることも出来るでしょうが、突発的に起こる事は予想なんかできないですよね。その場に臨んで何かをしなければならない時は、それまでの人生経験が大いに役にも立つでしょうし、それこそ今までの人生経験では間に合わない事もあるでしょうね。あまり固く考える必用は無いとはおもうのですが、そう考えるとやっぱり柔軟性って大切かなと思います。言葉一つ(今回は“準備”ですね)を取り上げて抽象的に考えを巡らせるのもいかがなもんかと思ってしまいますね!




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