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【本】芸術・文化がもっとワクワクする場所へー「森美術館のSNSマーケティング戦略 シェアする美術館」

洞田貫 晋一朗さん「森美術館のSNSマーケティング戦略 シェアする美術館」を読みました。アート好きの自分としては、美術館のマーケティングって?シェアする美術って?と興味深く本を手にしました。読み終えて、感じた事は、SNSという方法を取っているものの、美術館のミッション、あり方、そして訪れる方との関わり方というのは ブランディングを基本としたマーケティングと変わらないのだ、と感じた1冊でしたので記録します。

 美術館、と言ったら皆さんはどこをイメージしますか?世界的に有名なニューヨークメトロポリタン美術館?ルーブル美術館?オルセー美術館?。。。。いずれにしても歴史深く、そして世界的にも有名な美術館ですよね。
 著者である洞田貫 晋一朗さんは六本木 森美術館のマーケティング担当者。大変失礼になってしまうかもしれませんが、「森美術館」はそこまで世界的に知名度がある、あるいは常設で有名な作品があるという美術館ではないと思います。ですが、著者は、その森美術館にいかに来ていただくか、来ていただいた人にどれだけ感動してもらえるか、そして森美術館のファンになってくれるか、を日々考えてSNS戦略を考え、実行していらっしゃいます。著者のこの気持ちやマーケッターとしてのミッションが、SNS戦略を語る上であちらこちらに滲み出ていて、深く共感できる1冊でした。内容もとてもわかりやすく、さくっと読める本です。

 ネタバレはしたくないので、詳細はここでは語りませんが、美術館で今までタブーとなっていた、「写真を撮る」というのをOKとしただけではなく、それをシェアしてもOKとした事、そして森美術館が展示する作品が現代美術作品が多く、作品と対話が出来るものが多かったというのがSNS、シェアする事との親和性が大きかったと感じます。

  著書の中で 特に私が感動したのは、創立者、森稔さんの考えです。

森美術館の創立者である森稔は、都市において人やモノ、資金を引き寄せる力を「磁力」と呼びました。東京の再開発プロジェクトを考える中で、その都市に欠かせない要素として文化の大切さを理解していました。(中略)こうして六本木ヒルズ森タワー最上階の53階に、森美術館が完成しました。(中略)収益性を考えれば、上層階はオフィスとして賃貸事業のフロアにする事を想定します。しかし、森稔は、再開発のシンボルであるタワーの最上層に美術館を作ることにこだわりました。(中略)それでも森稔は、「文化・芸術は経済より上にあるべきものだ」と語り、文字通りタワーの最上層に森美術館を設置したのです。
シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略
太字変換はちびこ

 著者はSNS戦略について、「コツコツ信頼を積み上げて、将来的にユーザーに来館してもらう道を選びました」とおっしゃています。主要であるインスタグラムとTwitterで役割も変えてメッセージを伝えていらっしゃいます。時に話題になる、中の人が目立ちすぎてもダメだし、極端なバズを狙っても長続きしません。森美術館のインスタグラムを拝見しても、作品の写真がほとんどです。そして、著者はSNSで発信する事が大事なのではなく、その目的の先にある志が非常に大事だと。「目的」の先にある「志」にフォロワーは集まります。「自分たちがつたえたいこと」(目的)は来館者を増やす事であり、でも、森美術館がミッションとして持つものは「その先にあるもの」(志・理念)であり、それは文化的な情報やアートの力で、自分の心や人生を少しでも豊かにしてもらいたい、というものなのです。

札幌 芸術の森美術館  「キース・へリング展」

 また下記は自分の忘備録の為に。

 社内でSNS担当になった際に大事な事は、進捗報告する事が大事。
①期間を定める
②投稿の記録をとる
③インプレションを積み上げてグラフにする
発信していないと知ってはもらえない。知ってもらえないと、やっていないことと同じ。


  最近はコロナ禍で美術館もフラッと訪れる事が難しくなってしまったので、「予約して美術館に行く」、少しハードルが上がってしまった気がします。ですが、芸術は我々の心を豊かにしてくれますし、何より作品との対話できるのは、このコロナ禍、VUCAの時代にとても貴重な時間&経験なのだと感じました。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。何かのお役に立てれば幸いです。

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