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煌びやかで柔らかな風と共にモーニングルーティン【おはよう世界】(╹◡╹)☀️

なにかしらのモーツァルトの旋律が自動セットされた遠隔装置によりスピーカーから再生される。さながらに……とでも言いたいが、CD、レコード、蓄音機、生演奏と順に音質がグレードアップするものだが、私のソレは中国製の安物である。そもそもモーツァルトを聴いてはいない。

優雅に腹筋に力を入れ身体を起こしたいが、様々な衰え、特にヘルニアが作用し横に転がるように床に足を落とし、何故か網戸の内側に閉じ込められているカマキリをA4のコピー用紙を用い逃した後ベッドに戻った。

しばらくのち、別居している親の所に赴き
「朝に爪を切ると親の死に目にあえる! 朝に爪を切ると親の死に目にあえる!」
と叫びちらかしながら一心不乱に爪を切る。するとコーヒーが出てきたので爪切りをブチ投げコーヒーをテイクアウトし我が家に戻る。

「なにしてたの?」
「死ねぇぇぇぇ!!」
ベッドに横たわる妻の横にダニが居たような気がしたので勢いよくジャンプしながら激烈なエルボーを着弾させ、彼女の身体を浮き上がらせることに成功した。続けざまに高窓を開け閉めする棒を装備し天井にある電球を全て破壊した。

「戸棚の中にUFOあったじゃん。あ、焼きそばの方ね(笑)。でさ、UFOに入れるお湯、沸かすけん、ちょっと下降りてさ、お湯(笑)、沸かしてくるわ(笑)」

ふと冷静になる。私は今、冷静さを欠いているのではなかろうか? となると然るべき行動すなわち、一服をせねばならない。ドタドタと階段を駆け上がり、すっかりと平常心を取り戻していた。

「あ(笑)、調べものせんといけんかったわ(笑)」
【UFO 作り方】

「なにしてんの?」
「調べものっっ(笑)」

近所の野鳥が脱走(?)したのかと思うほど耳をつんざく音に苛まれる。そうか、私はお湯を沸かしていてその途中でお湯を忘れていて、すっかり沸いたからヤカンから笛の音が鳴ったのだ。

「そそいでくるわっ(笑)」

誰にでもあるだろう。この瞬間が好きだという瞬間。それが私にとってはどん兵衛にお湯をそそぐ瞬間なのだ。追随を許さぬということは、他メーカーの諦念をつぶさに感じ取れる。

「いつまで寝とん(笑)。コレ見て、朝(笑)」
口をつぐんでいる……ということは、高尚すぎて伝わらなかったとイコールである。いつも私は悩まされる。通常人と同じような会話をしたいのに、どうしてもエスプリがきいてしまう。私はオレンジレンジの『以心伝心』を心の中で無限リピートしながら吹き抜けから身を投げた。

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