第二言語習得と「自然実験」
2021年のノーベル経済学賞は3人の米経済学者が受賞したが、彼らに共通するのが「自然実験」という方法。
この方法は、第二言語習得の分野で中心になるべきなのでは?と思ったので、それについて書きたい。
自然実験とは、デジタル大辞泉によると次のように定義されている。
研究者が意図的に被験者を集めたり、条件を操作したりするのではなく、実社会に自然に生じた現象の原因と結果を観察することにより、因果関係を考察したり、ある条件の有無が結果にどのように影響するかを比較したりする実験。主に社会学・心理学の分野で行われる。
自然科学者は実験で原因を人為的に操作することで、結果への影響を観察して因果関係をとらえるが、経済学者など「社会」や人間の「心」を扱う分野ではそれができないことが多い。
それは、文系と理系の研究の違いから来るという話を以前、私はnoteに書いた。
例えば、文系の対象とする「幸福度」の考えるとき、その変数は膨大であるし、1つの変数が偶然的に大きな影響を与えることがある。資産や仕事での裁量、人間関係などいろいろ影響するだろうが、それぞれの要因も相互に影響しあっているので複雑だ。それに、「幸福度」というのも、最終的に被験者の主観に基づくため、これを時系列でとったデータや他者と比較して有意義なのかもわからない。
あるサイトに自然実験を用いた研究の例が出ていた。
米国では制度上の理由から10~12月生まれは1~3月生まれより義務教育期間が長い場合が多い。それを自然実験として教育が所得に与える因果関係を推定し、教育年数の増加は所得を増加させるとの結論を導いた。
これを状況を制御した実験で検証するのは不可能だろう。
さて、第二言語習得に目を向ければ、一般的な実験はほぼ有意義な結果を示さないだろう。
AとBの集団にわけて、Aには検証する学習法を試してもらい、Bにはそれをしないで、両集団の能力の推移を測るというようなもの。
実験期間中のAとBの行動はどこまで把握できるのか?
検証期間はどれくらいか?
能力をどう定義するか?
テストと検証するテストの関係は?
などなど有意義な結果を出すためには検討すべき大きな問題が多い。
だったら最初から、定義した語学力より上の人達を探して、その人達にデプスインタビューをし、誠実に過去の語学歴について語ってもらったほうが有意義なのではないか。
私は実際この方法で多くの語学成功者にインタビューをして、最強の学習法を探求してきた。語学版ナポレオン・ヒルのようなものだ。いつか、この成果を自然実験の研究成果としてまとめてみたい。
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