忘れられない雨の音。

あの海の向こうにはきっと、幾つものビルがあって山があって。
都会に憧れる私の胸に空いた穴を、いつも風が抜けていく。
彼が引っ越してどれだけの月日が流れたのだろうか?
私は今でもきっかけを探していて、向こうの生活の邪魔にならないように生きている。
赤い光が白く変わって、一本の道を海に写し出す。
しかし、その道が私を指すと言うことに、少しだけ自意識過剰な自分を見つけてしまい、落ち込んでしまう。
きっと、私のことを彼は忘れてしまうだろう。
けれどそれで良いとも思っている。
昨日の雨雲は、私の代わりに大雨を降らし、今日は消えて無くなってしまっている。
私は彼にとってそうありたいと思うと同時に、忘れられない雨になりたいと思った。

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