「美味しそうだね。」 目の前には、ロールケーキと湯気の昇るコーヒー。 つけっぱなしのテレビからは、ローカルニュースが流れている。 少し肌寒いこの季節でも、少しだけ暖かく感じるこの短い時間の為に、僕はロールケーキを買ってきたのだ。 けれど彼女は、右手にフォークを持ったまま、考え事をしているのか、ロールケーキを見つめながら、ぼーっとしている。 「どうかしたの?何かあった?」 僕は彼女に尋ねる。 「ねぇ?どうしてロールケーキは3当分できるのかな?1を3で割ると、0.3333
煩わしい出来事や難しい感情が全てなくなったとして、最後に残っているものがあったとするならば、それこそが愛なのではないかと思う。 魂の重さが21gだったとして、それは重さであり軽さだ。 変わらないものなんてこの世界には何もなくて、だからこそ変わらないものを人は求めるのだと思う。 変化していくものを変わらない思い出にすることで、その変わらない思い出を誰かと共有することで安心したいんだと思う。 生きることは不安で不安定だ。 消費することで人は生きている。 それは例外なく命だって
夜に呑まれてしまいそうな夜がある。 忘れることと覚えること、どっちを人は先に覚えたんだと思う? 嫌なことを忘れられるように忘れることを先に覚えたとしたならば、どうしてそんなことをしてしまったのだろうか。 忘れたくないことってのが、昔の人にはなかったのかもしれないね。 忘れられないことなんてないはずで、時間が全てを解決してくれると思うのだけれども、酒を飲んで忘れようとすることで、酒を飲んだ記憶でさらに刻み込もうとするのは、ある意味自傷行為と同じなのかもしれない。 みんな緩やか
今日も悲しいニュースは大きく報道され、優しいニュースは静かに時間を過ぎていく。 いつものように朝が来て、眠れない私は大きく欠伸をする。 今日の天気だとか気温だとか、気にしたところでどうにもならないことは気にしないことにしているのだけれども、眠れないということは私にとって大きな問題だ。 現実を忘れる為に酒を飲んでいるのに、酒を飲む為に必要な睡眠時間が足りないということは由々しき問題である。 昨日も一昨日も、記憶がなくなるまで飲み続けている。 酒の前では誰でも平等だと思ってい
今日も変わらずに私は君を待っているんだけれども、一向に気配がない。 雨が降れば傘を差せば良いんだよ。 簡単なことなんだ。 私は雨が好きなのだけれど(泣いたとしても目立つことがないから)、傘を差すのは嫌い(人も自然の一部だということを忘れない為に)。 それでも人の目を気にして傘を差してしまう(雨が降ったら濡れることが当たり前なのだと思うけれど、どうやらそれでは人間社会を生きていくことは難しい)。 人から心配されることがとても苦手なのだ。 差し伸べられた手を払いのけ、それでもま
蛇口からポタポタと落ちる水滴をただ眺めてる。 手が届かないからという理由で蛍光灯を無視してる。 忘れたい思い出の中にしかない感情を背負って、あの娘に届かないようにと願いながら今日も歌ってる。 僕の願いはパピコをあの娘と一緒に食べたくて。 でもそんなささやかな願いさえ、叶うことはないでしょう。 あの娘が手にしてるパピコはどこにいくんだろう? その相手が自分でないことなんて、前世から知ってる。 ポケットの中の100円玉は汗が染みこんでて。 あの娘のいない帰り道に1人、石を蹴り
寂しいねと呟く君、今は何してる? 彼に会えないと嘆く君、今は何してる? 君の孤独を消したくて、僕は歌ってる。 君に会いたいと願いながら、声を枯らしてる。 寂しいことなんてないよ、そばにいてあげたいよ。 でも僕がそばにいたって、君はきっと寂しいんだろう。 ゴキブリ以下の人生だ、そばにいることもできない。 そいつが俺の人生だ、寂しいと思ってしまった。 ゴキブリ以下の人生だ、君の寝顔も見れないよ。 今度は君の人生に関われたなら良いのにな。 君のカケラを食べて、僕は夢を見る。
君に会えないと知っていて車を走らせてる僕は、どこに向かってるんだろう? 君を知って寂しくなって夢じゃ足りないからといって、どこに向かってるんだろう。 通り過ぎた日々を悔やんだりしても仕方がないのに、華やいだ日々はいつまで経っても覚えているのに、僕はどこにいるんだろう? 干からびたミミズが張り付いたあの日の石段に、戻れないから愛しくなるんだよ。 いつも忘れているのに。 通り過ぎた季節は変わらずに巡ってくるのに、残された僕はずっと変われずに月をただ数える。 君に会えないから
ポケットの小銭を握りしめて、ぼんやり乾燥機を眺めている。 去年は押入れに入らなかった、布団が乾くのを待っています。 近所の小さい焼鳥屋で小さいビールと烏龍茶で、ねぎまのネギだけ食べていた頃が幸せだったなんて思います。 ベランダでタバコをふかしながら、少し欠けた月を眺めます。 足りない部分を埋めるように、結局酒を飲んでしまいます。 近所の小さい焼鳥屋で大ジョッキのビールを流し込み、ねぎまを一串注文すると、やけに煙が目に染みて困ります。 やけに煙が目に染みて困ります。
窓の隙間から差し込む光。 タバコの煙は砂時計のよう。 マナーの悪い食卓のように、散らばった服が会話をしている。 ワイシャツが君の背中を隠す。 ネクタイをすると君は、他人になる。 君の背中のホクロを、どれだけの女が知っているのだろう? 私は涙を目に溜めながら、君の背中にそっと唇を寄せる。 窓の隙間から差し込む光。 私は一人蛇口をひねる。 残された二つのグラスが、孤独で溢れて涙を流す。 君の背中のホクロを、どれだけの女が知っているんだろう? 私は吸いかけのタバコに、火をつ
いつも考えています。忘れられないことが多すぎて。 今も考えています。昨日も今日も明日も。 歌にしてみても、伝えたいことが多すぎて。 どうせ届かないのに、声を枯らしています。 退屈な日々の中で風に舞う花びら。 夢でもしも逢えたなら、どこにも行けないように小指を結んで消えないで。 さよならなんて今の僕に言えはしないだろう。 遠く儚く悔しい気持ちの中で。 あの頃の気持ちは消えはしないだろう。 それでも、進め(進め)進め(進め) 愛してるだなんて言えやしないだろう。 どうか、想
あの頃の僕らはきっと眠ることがもったいなくて、帰るなんて言い出せずに、朝を待ってることが多かった。 昨日の記憶を思い出してもあんまり覚えてなくて、それでも楽しかったことだけは忘れないで覚えていた。 季節は変わることもなく冷たい雨は止むことなく、逢いたい気持ちは褪せることなく、だから僕は歌にするんだ。 きっと失ったものは僕だけで、君は笑いながら今日も生きている。 君の笑顔を見るだけで僕は苦しくて、遠くに行ってしまいたくなるけど、失ったものが多すぎて僕は笑い方を忘れちまった。
昨日の夢の続きも見れずに、タバコをふかしながら頭を掻いている。 空を見上げるのは煙を吐く時くらいで、明日を信じられずに今日を生きている。 季節外れの雪が降ったみたいで、テレビをつけたまま僕はいびきをかいている。 消えない手首の傷を掻きむしって、綺麗に治るはずの傷で傷を作っている。 つぎはぎだらけのアスファルトに、小さな水たまりができている。 僕はカサブタを何度も剥がしては、昨日の続きを探す。 消えない傷どうにもなんないねって、そうやって笑って抱えて生きてりゃ良い。 言えな
自分の不甲斐なさにつくづく嫌気がさして、温くなった缶ビール片手にタバコ吹かします。 吐き出した憂鬱が消えていく先にあったものは、それはとてもとても悲しい程に綺麗な空でした。 僕と同じクズなのに空の星たちは、どうしてあんなに眩しく見えるのだろうか? 今日も酒を飲んで管を巻いているだけど、それが明日を生きる為の糧になっていくのでしょう。 だから今日も忘れるのが勿体無い日にしよう。 そしたら毎日を思い出にして生きていけるのでしょう。 あると少しだけ嬉しくて、無いととても寂しく
私は君にとって、最後の冬になりたいと思った。 全ての物事がファッションのようになってきて、きっとそれには流行り廃りがあったりして。 でもそれによってヲタクと呼ばれる人達が今まで以上に追いやられてしまっていることに君は気づいてる? 私は干渉したいんじゃないんだよ。 ただ、好きなものを好きで居たいだけなんだ。 売り切れることが当たり前になってきている人気商品。 売り切ることが目的になってきているんじゃない? 料理は胃袋や心を満たす為に在って、衣類は心や体に春を齎す為に在る。
君はいつだって猫のように勝手に甘えてくるくせに、飽きてしまったら何処かへ消えてしまう。 君は一人でも生きていける人だと私は知っている。 だから私は君のことが好きなんだと思う。 人を甘やかすことができる人は、一人で生きていける人なんだと思う。 そして、甘えることができる人もそれは同じだ。 一人で生きていけない人は、甘えることも甘やかすこともできやしないんだよ。 傷を舐め合うことが共依存だとして、それが甘えだと言うならば否定する気はさらさら無いし、舐め合うことでしか癒すことがで