サプライチェーンのリスク管理
日経新聞で好きな連載記事の一つが「やさしい経済学」です。経済教室の紙面で1つのテーマが10回の連載になっています。「やさしい」とかいいつつ、大学の先生が書かれており専門用語も出てくるのでけっして簡単ではないですが一通り読むとある程度、トピックのエッセンスがつかめます。
テーマによっては、毎日読んだあと、あらためて1回から10回まで通読しています。
今回のテーマはサプライチェーンということで、先日、BCPのこともNOTEに書いていたましたので興味深く拝読しました。
全10回をざっとまとめるとこんな感じです。
第1回:SCMは各プレーヤーの相互連携が必要で、トヨタの生産方式、制約条件(ボトルネック)の理論も目指すところは全体最適化。
第2回:SCMをうまく機能させるのは困難。強い者が2度勝つWIN-WINになりがち。それはリスクがあるから。リスクは測定、予測が可能なもの。不確実性はそれができない「ブラックスワン=ありえないこと」。
第3回:SCMのリスクは自社内(プロセスリスク、コントロールリスク)、自社外(供給と需要のリスク)、SCMの外部(社会、自然、技術などの環境リスク)。これらに対するレジリエンスを高める必要がある。
第4回:自社のサプライチェーンのリスクを増幅させるものがグローバル化と集中化。集中化には開発、生産、部品調達の集中化がある。集中化が進むとリスクが増幅することとなる。
第5回:環境リスクの一つは景気変動。不況期こそ機会と捉えて、改善や発展の基礎を固めるべし。
第6回:東日本大震災の際に顕在化した製造業のサプライチェーンのダイヤモンド構造。そこからサプライチェーンの「見える化」に取り組み、BCP作成の重要性を再認識した。
第7回:コロナ禍において予期せぬ膨大な需要の拡大に対応することでお互いの強み、ノウハウを共有することになった船橋(名古屋)の事例。
第8回:サプライチェーンにおける利益やリスクの分配パターンにはバーゲニングモデルとシェアリングモデルがある。理想は、全体の利益最大化、リスク最小化を目指すシェアリングモデルである。
第9回:買い手企業がサプライヤーを育成・支援する「サプライヤーデベロップメント(SD)」の視点も重要。QCD(品質、コスト、納期)だけでなく、幅広い視野で、また、その先の仕入れ先にも目を配り、自社がリスクの根源とならないようにすること。
第10回:リスクへの対処法としては、BCP作成、設計企画の標準化、十分な在庫、生産・調達の分散・代替先の確保、地産地消が上げられる。サプライチェーンは、頑健なだけでなく半脆弱性(変化を味方にして自己再生する)をもつ仕組みを作る必要がある。
まとめ:
SCMを構築しようとすると無意識のうちに自社のリスクを軽減することに専念してしまうバーゲニングモデルになりがちです。パワーバランスの弱い部品会社等は経験値的にサプライヤーデベロップメントといわれて身構えてしまう、という悪循環なりがちです。サプライチェーン全体の利益最大化とリスク最小化に目的があることを「見える化」することが重要になってくるだと思います。
SCMについての理解を深めるにはよい記事だと思いました。
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