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【楽曲解説】クロラ

連続リリース三曲目。
この曲は語るところ多すぎる。

連続リリースの曲たちを考えて作っていく中で意識していたのは、各曲ごとに今までにない武器を取り入れていくというコンセプトだった。

そういえば我々、ハネてる曲ないんでは...?
というふとした思いつきからそういうのやりたいなぁと漠然と思っていたもののそう簡単にはしっくりくるものは捻り出せず。

にっちもさっちもいかないそんな時、

これからスタジオ練習だ、シャワー浴びようと風呂場で髪を洗ってる時にメロがズドーンと降ってきた。

今かい!という時に曲のアイデアが、それも風呂場で降ってくるというのは作曲する人あるあるではなかろうか。
風呂場には不思議な魔力がある。

そんなことはおいといて。

サビメロの8小節が丸っと降ってきて、これはいけると即確信が持てた。不安症な自分にとっては割と珍しい瞬間。

この直感は当たっていたようで、スタジオでさっきこんなん思いついて...と弾き語りで聞かせたらめちゃくちゃ反応良くてそのスタジオで早速曲作り始まってヨッシャ!となった記憶がある。

ここまでたわいもない話してきたからちょっとこっからは真面目に。

ハネてるちょっとダークな曲、というやりたかった像に見合うよう歌詞はとにかくシニカルな言葉選びを。

連続リリース前2作が凄く「清い」曲だっただけに、バランスを取りに行きたさもあったというか...

散々自分の思考のベースになってるとこれまでの記事でも書いてきた「二元論」じゃないけど、光あるところ闇あり、でそこは人間らしいナマモノとして曲は生み出していきたいって考えがよく出てるなーと思ったり。

話を少し戻して。

この曲名には「crawler」、つまるところ「這いつくばる者」を意味する言葉をチョイス。

正しさを求めて這いつくばるも、答えすら見つからず光一つない夜の中をただ彷徨う自分とそんな姿を嘲笑うどこか俯瞰した自分との二項対立を表現した、ってのがこの曲の歌詞世界。

やっぱり歌詞の中における二項対立をどう演出するか考えるのが自分は好きみたい。

ちなみにお気に入りの歌詞は2サビの「箱庭で飼い慣らした虚栄の刃で 鈍色の僕をさぁ抉(えぐ)って見せて」という一節。

曲名をクロウラー、ではなくクロラとなぜしたのかにもいくつか理由はあって。
今回はその中でも一番大きいものを語ろうかと。

この曲の中において、さっき言った「這いつくばる自分を嘲笑う自分」を明確な対象として描きたかった。

あえて一人称で進んでいくシナリオの中でちらつくその「誰か(=もう一人の自分)」、
具体的に誰かというのは語らずに「クロラ」という人名的な固有名詞に語りかける形式を取ることで二項対立の図式に落とし込んだというのがギミックというわけなのです。

何を言ってるんだと思われるかもしれないけど、これは昨今の流行歌に対するアンチテーゼでもある。

個人的な考えとして、ストレートすぎるがゆえに一回聞いてわかる歌詞というのは確かに商業音楽的には非常に良いアプローチとは思いつつ、そんなのは詩として成立していないと思ってしまっていて。

批判を恐れず言うなら、そんなの歌詞じゃなくて日記帳じゃんとか思ってしまうタイプの人間なわけです。

日本人的な「隠す美学」を描いているようで実は剥き出しの感情表現が全面に出ちゃってたり、
些細に感じられる曲中のメタファーがパズルのピースみたいにぱちっとハマって曲が持つ本質が炙り出されたり...

そういう届け手と受け手で解釈のせめぎ合いが起きるのが理想で、だからこそ「日本語の歌モノ」をやりたいなと思いながらいつも作詞をしてるのです。

というエゴをいつか聞いてくれる人に話したいと思い続けてたので、今回良い機会だなと大放出。

ヒットチャートには飽き飽きだ、という捻くれ者の皆さん、こうやって裏の裏を読み取ってくれたら本当に嬉しい。

締めの言葉となるけど、シープとして最後の連続リリースではこの曲の反響がダントツでデカかったです。

今後もこういう良いエゴに塗れた曲を書いていきたいな、

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