BROTHER AGAINST BROTHER / Brother Against Brother
イタリアのフロンティアレコードが仕掛ける新プロジェクト、実力派ブラジル人シンガー2名、Nando FernandesとRenan Zontaによるユニットです。Renan Zonta(レノン・ゾンダ)はElectric Mobのボーカルで、新世代ボーカリストの星としてフロンティアレコードが売り出し中。クロアチアのDino Jelusick(ディノ・イェルシック)と並んで力を入れてプッシュされている印象です(DinoはDokkenのGeorge Lynchと組んだプロジェクトDirty Shirleyで2020年にフロンティアレコードからアルバムをリリース)。こういうフロンティアレコードのプロジェクトは押しなべて品質が高いので楽しみです。Nando Fernandes(ナンド・フェルナンデス)は初めて知りましたがブラジルでは知名度の高いシンガーの様子、Angraのライブボーカリストも務めたようです。実力派シンガー2名によるプロジェクト。それでは聞いていきましょう。
出身国:ブラジル
ジャンル:Melodic Heavy Metal
活動年:2021-
メンバー:
Nando Fernandes Vocals
Renan Zonta Vocals
(レコーディングメンバー):
Alessandro Del Vecchio:ベース、キーボード、バックボーカル
Jonas Hornqvist:ギター
Michele Sanna:ドラム
1. Two Brothers ★★★★
期待通りの壮大なスタート、いきなりハーモニーが出てくる。こういう見せ所が分かっている感じはいかにもプロフェッショナルなプロデューサー(Alessandro Del Vecchio)の作品、という感じがします。根底にあるのはフロンティアレコードらしいメロディアスなハードロックながら、歌メロ的には80年代正統派HMというか、味付けがDioにも近い、ボーカル力を活かした朗々と歌い上げるメロディ。ツインボーカル(カイハンセンを入れればトリプル)のHelloweenの新譜ももうすぐ出ますし、今年はこうした実力派ボーカリスト同士のハーモニー、コラボ作が増えるかも。やはり気持ちいいですからね、高音で重ねられる力強いハーモニーは。
2. What If ★★★★
ミドルテンポでじっくりボーカル力を聞かせるテンポの曲が続きます。期待に応える見事なボーカルパフォーマンス。作曲はノッて作っている感じはします。やはりこれだけ上手いボーカリストを2人使えるといろいろアイデアが沸くのでしょう。ただギターソロはけっこう弱め、お抱えプロデューサーの作品なので仕方がないですが、やや演奏はこじんまりしています。
3. City Of Gold ★★★★☆
ややアラビックというかオリエンタルな音階のイントロ。ZeppのKashimir以降導入された音階ですね。ボーカルが入ってきますがこの曲は緩急が強い、曲の起伏が増しました。これは作曲面でのチャレンジを感じる曲。コーラスで少しキーも変わります。バックバンドもこじんまりとはしながら手堅い演奏。主役であるボーカルを盛り上げます。ドラマティックな大曲感を出しながらもコンパクト(4:19)にまとまっているのも好印象。
4. Heaven Sent ★★★★
これもメロディが魅力的な曲、楽器隊のメロディとボーカルのメロディが絡み合います。ボーカリゼーションのすばらしさと共にプロデューサーのAlessandro Del Vecchio(本作は作詞作曲も担当)の才能も確認できる曲。楽器隊の技巧はそれほどでもないですが、技巧に頼らず、作曲能力・編曲能力で曲を盛り上げていきます。こういう、ロジカルに構築された音楽も好きです。
5. Haunted Heart ★★★★
アッパーなキーボードからスタート、そこからリフが入ってきてメロディアスな展開に。きちんとコードが展開していく、メロディが展開していくのがいいですね。ヴァースからコーラスにつなぐブリッジのベースラインが凝っています。コーラスが弱めというか、常套句の域を出ないのがやや残念ながら、プロとして手を抜かないしっかりとした作曲。ボーカルのパフォーマンスは期待値を超える、デモテープの域を超えていますが、楽器隊と作曲・編曲については基本的に一人、プロデューサーの脳内の域を出ない、いわば宅録感、個人が作ったデモテープもあり(録音などの音響はもちろんクオリティが高いですが)、こじんまりとしているというのはそういう意味。プレイヤー同士のせめぎ合う感じはありません。全体の調和がとれている。
6. Deadly Sins ★★★★☆
ボーカルの歌い上げる力で成り立たせている曲、この曲はちょっとIron MaidenのBruce Dickensonのソロ作にも近い空気感がありますね。節回しかな。メイデンファンとしては反応してしまうメロディラインです。お、ギターソロも過去イチで頑張っている。いい曲。
7. In The Name Of Life ★★★★☆
アコースティックな音像、RainbowのTemple Of The Kingのような、アコースティックな音像の中で力強いボーカルがハーモニーを奏でる音像。ただ、メロディは途中から独自色というか、フロンティレコードの色、Alessandro Del Vecchioの色が出てきます。途中の独特の節回しはRenan Zontaの独壇場。この曲はボーカル2人の特性と力量がはっきり出ますね。ギターソロならぬボーカルソロ的な見せ場があります。
8. Demons In My Head ★★★★☆
キーボードの音からボーカルが入ってきて盛り上がっていく、いかにもメロハーの王道的なパワーバラードながら、よくできた曲です。これはメロディが良い。ボーカルの力も前面に出てきます。バックの音がストリングス主体でバンドサウンドがやや引っ込み気味に。ちょっとほかの曲とミックスが違いますね。シングル向けなのかな? パワーより洗練を主体にした音像。
9. Whispers In Darkness ★★★★
こちらもキーボード音から、お、ギターのエッジが戻ってきた。やはりさっきの曲だけちょっとミックスが違いますね。ややスロウなテンポでヘヴィな始まり。ボーカルパフォーマンスが前面に出ます。Nando FernandesってDIOっぽい歌い方しますね。Renon Zondaの声はもう少し金属的。個人的にはGunsnRosesのAxelを連想します。この曲もオリエンタルな音階を活かした曲。ギターソロは目立ってテクニカルではないもののメロディを歌い上げるけっこう長尺のソロ。いい曲だけれどやや長めかな。
10. Valley Of The Kingssy ★★★★☆
キーボードフレーズから、リフが入ってきます。ミドルテンポが続いたのでややアップテンポなナンバー。終盤にクライマックスとして疾走曲を持ってくるのは定番ですね。次の曲はバラードかな。ときどき最後に一番の疾走曲を持ってくるバンドもいますが(Metllicaはそういうアルバム作りが多い)、たぶんバラードでしょう。繰り返されるコーラスがだんだんと気持ちを高める曲。
11. Lost Son ★★★★
お、まさかの疾走パターン! 最後に速い曲で締めるとはライブ的ですね。とはいえボーカルはじっくりと歌い上げるパターン、あまり速い曲、言葉を詰め込むと歌い上げるスタイルには合わなくなりますからね。アップテンポではありますが歌メロの起伏がやや薄目の曲。
総合評価 ★★★★
力作、いいですね。フロンティアレコードらしい良質な作品。ボーカル2人のパフォーマンスはもちろん、プロデューサーのAlessandro Del Vecchioの作曲・編曲能力も楽しめます。6~10の流れ、中盤が盛り上がりますね。どれも高品質ながら歌メロに意外性がないのと、突き抜ける曲がないのでこの評価ですがやはりRenan Zontaは個性があるボーカリストだなぁと再確認。期待に違わないバランスが取れた高品質な作品でした。Alessandro Del Vecchioがソロ名義でリーダーアルバムを出しているようなので聞いてみようかな、この人自身の作家性ってどんなものなのか気になります。
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