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ヴァジュラid / 我が青春のヴァジュラid

2000年、ノストラダムスの大予言を乗り越えた世界を祝って出したアルバム。21年ぶりにデジタルで配信。当時は自分でサイトを作ってフィジカル(CD-R)で通販していたことを思うとこの隔世の感があります。究音レーベル第一弾(QON-000)。

当時はインディーズマガジンというCD付の雑誌があって、同時代のインディーズバンドの音に触発された部分もあります。バキバキに割れた音にしたのは、たまたまコミケで手に入れたハードコアテクノのコンピ盤が「これおかしいだろ」という大音量で音が割れまくっているCD-Rで、それがかっこいいなと思って音声編集ですべての帯域をマックスまで増幅しました。

メンバーの共通言語は「筋肉少女帯」であり、大槻ケンヂのソロアルバム「ONLY YOU」や「UNDERGROUND SERCHLIE」をきっかけに80年代ハードコア、アングラシーンを掘っていた頃。先述したインディーズマガジンもそんな流れでリアルタイムのアングラシーン、ライブハウスシーンを知りたかったからだし、そこから殺害塩化ビニール(猛毒)とか、ガーリックボーイズとか、ヌンチャクとか、山嵐とかあたりも聞いていた記憶があります。とにかくヤバそうで、かつちょっとアッパーで開けた感じの音像を目指しました。

筋肉少女帯は大槻ケンヂが「(じゃがたらみたいな)ファンクがやりたかったんだけど、(演奏が上手いメンバーのお陰で)気が付いたらヘヴィメタルになった」と言っていましたが、こちらは「メタルがやりたかったんだけど(演奏が下手だから)気が付いたらハードコアパンクになった」という。

根本敬さんがインタビューで、
(すっごくマイナーなレコードを手元において)
「昔ね、こういうCD誰が買うんだろうって思ってたんですよ」
「数年たってね、気付いたの。ああ、俺だ、って」
「俺が買うんだって。そういう風にできてるんだなって」

そんな人向けのアルバムを目指しました。根本さんには気に入られないと思うけれど。

一曲づつ。

散々泣いた/気が付いたから/錆びたナイフ/ポケットで握り/期待外れ/倒れたら嫌いだなんて言うが/単身闘争/かなり嫌になり/顔に絡めるは来世の笑みで/微笑め野良/かもめだもの/冬が来れば去る/心当たり/洗いざらい行く/あと胸にも幸せを頂戴/笑う感で/腹から親にも似ずに生まれて/疎まれ汚れ小径歩かされて/山荒らした/天照し/灰と化す個体が/笑う罪に/妻等無い感情/寄る辺無い哀情押し寄せる/故意発信で/時代バラシ去来す/単調に抱える/明日春となれの/夢をくれた/凍り付いた空/切り裂いたら/黒ずんだ屋根が/崩れ落ちる/別れ際/酷な言葉/食らってお終いさ/高嶺の花/罪犯し堕ろされ/顔に絡めるは/来世の笑みで/微笑め野良

■イメージしていたのはCOALTAR OF THE DEEPERSとか、ああいうシューゲイザー的な音。歌詞はこの当時、こんな感じの言葉遣いをしていたバンドがいたんですよ、インディーズマガジンで知ったんだけど。名前を忘れてしまった。それを自分なりに解釈した歌詞。


『絶望するなら死んじまえ』なんて/昔の人は言いましたが/そうすぐに死に切れないから/まだ生きております/眠れないので/薬を飲んで/布団に包まって/何とか寝ている自分が嫌いで/嫌いで仕方がありません/カニは高いぜ/エビも高いよ/ああ可哀そうに/皿洗いだな/見てみな/風が出たぜ/早く陸に上がれ/水着を失くしたなら/気にせず/出ておいで/ヘイお天道様/見てくれていますか/僕の心を/突き刺した/思い出のハリガネが/あなたの背中に/せまっていますよ/気を付けてください/もうすぐ世界も終わるのですね/ああ救われる/裏は暗いぜ/だけど臭いよ/そんな顔しても/もう金が無い/いつかは気が付くさ/空っぽの世界に/明日は明日の顔で/夢なんか売ってら/素敵なカリフォルニア/心のカリフォルニア/輝くカリフォルニア/来たぜ僕等のカリフォルニア/馬鹿げた/心の果て/見せても構わないか/今さら笑わせるぜ/愛など殺しちまえ

■Slipknotの1stアルバムに「Eyeless」という曲があって、「You can't see California without Marlon Brando's eyes」というフレーズがある。それがタワレコで聞いた時「California Kill Motherfxxker Die」に聞こえて、こいつらゴリゴリだなと思って歌詞カードを見たら違ったのでじゃあ自分たちでそういう曲を作ろうと思って作った曲。最初のフレーズはギターのハーモニクス。


登校拒否して/壁紙を見つめてた/アイツらみんな死んじまえばいいな/女子高校の生徒会長に惚れ/満員電車でそっと胸に触った/カメラもね/買ったけど/仕掛けたら壊された/月明かり照らされて/夜を歩く/この闇の中なら/嫌われないさ/窓から漏れてる灯りと/ベルの音/受話器の先には/無言の僕/「留年するぞ」と/先生が家に来た/迷惑そうな/ツラをぶら下げていた/ムカつくから/猫の首送ったら/犯罪行為と警察にチクられた/人一人死んだって/誰一人気付かない/月明かり照らされて/夜を歩く/この闇の中なら/嫌われないさ/悲鳴と足音/次の日/記事になり/TVの外から見ている/僕/月明かり照らされて/夜を歩く/この闇の中なら/嫌われないさ/抱き締めて/押し倒し/口を塞ぐ/この闇の中なら/気付かれないさ/月明かり照らされて/君が光る/綺麗なものだから/汚したいのさ/月明かり照らされて/我に返る/見慣れた壁紙に/人型の朱

■もともとYMOっぽいオケをメンバーが作ってきて、そこから発展して作った曲。「どうしてこうなった」とはそのメンバー談。


この道の果てへ行けば/幸せになれるぜ/空には果てがあるが/この道に果ては無い/夜を燃やして/明日へ進め/シラケた恋が弾けて/取り残されちまった/無様なツラなど/いつまでもさらすな/何処までも行く/力尽きても/夢なぞ売れないからね/必死に抱え込んで/何処まで行けばいいんだ/そんなの知らねぇが/エンジン燃やせ/明日は何処だ?/向かい合う事なんて/嫌いで仕方ねぇ/見えるのは何だい?/何も見えやしねぇさ/荷物は俺だ/重いが走れ/そこらに愛想振りまき/挙句に倒れこんだ/いつしか心の中が/砂まみれになってらぁ/エンジン燃えろ/タイヤも壊せ/欲望に限りは無い/故に限界もない/昨日の明日は/つまり今日じゃねぇか/今日を殺して/明日へ向かえ/何処までも何処までも/続いた荒野にも/終わりはあると言う/そこまで行けるだろう/心は砂漠/扉を開け/ゴーゴーゴーゴー/赤いサイドカー

■同じリズムループをだんだん早くしていく、というオケがあって、そこにギターリフとかを即興で足していって作った曲。歌詞も即興。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな世界観を出したかった。


君は覚えているか?/緑の地球を/君は忘れてないか?/明日の笑顔を/心に病みをもたらす/悪のエロース軍団/今こそ守れ!/愛の力で/超獣バビヨン/火を噴く竜神/レーザー警棒/受けてみよ!/今だ/いくぜ/必殺サンダー・サイクロン!/みんな持っているはずさ/愛の心を/宇宙高機動警察☆アガペー/君は覚えているか?/平和な世界を/君は忘れてないか?/熱き血潮を/愛の心を忘れた/悪のエロース軍団/今こそ守れ!/君の力で/巨大ガイオス/怒りの魔神/ハイパー拳銃/火を噴くぜ!/そこだ/炸裂/必殺ファイヤー・トルネード!/みんな持っているはずさ/愛の力を/宇宙高機動警察☆アガペー/宇宙高機動警察☆アガペー

■『昔のアニメソングに「ピコポン!」みたいな効果音あるじゃん、あれやろうぜ』ということで、「ピコポン!」のためだけに作った曲。どうせなら特撮主題歌っぽくしようということでそれっぽい曲にしました。


「私に勝ったらチューしていーよー」/その一言に心打たれたこの俺/人生とはバーリ・トゥード/マウント・ポジション取るか取られるか/だけどトゥーシャイシャイボーイなこの俺/しかし/ある男が言った/「攻撃こそ最大の防御なり」/な~るほどネェ!/OK/涼子/好きだ/愛してるぜヒャッホゥ!/「ゴメンネ 私 他に好きな人が出来ちゃったぁ」/燃えたよ...燃え尽きたよ/白い灰のように/だが/俺は立ち上がる/人生はフリーノックダウン制だから/立て!/立つんだ俺!/死ぬまで戦い続けろ!/それも又、一興/「君ィ、栃木に転勤してくれたまへ」/その一言に心打たれたこの俺/人生金網デスマッチ/無制限一本勝負/だけどトゥーシャイシャイボーイなこの俺/しかしある男が言った/「攻撃こそ最大の防御なり!」/な~るほどネェ!/そうだ/俺はNOと言える日本人!/「君、解雇」/燃えたよ...燃え尽きたよ/白い灰のように/だが俺は立ち上がる/人生はフリーノックダウン制だから/立て!/立つのだ俺!/倒れても立ち上がれ!/あー戦え/Fight With Me!/人生を戦え!

■「私に勝ったらチューしていーよー」は当時のCMで広末涼子が言っていたセリフ。音像的にはスカパンクというか明るい熱血なメロコアをやりたかった。メンバーが管楽器をプログラミングしてきて、「おお、それっぽい!」と盛り上がりました。


ある五月の日曜日/ゴスラモジラに出会った/寂しそうな街並みと/夜の闇を憎んでた/街はあっさり火の海/合成ライン丸見え/自衛隊に志願して/彼に会おうと決めた/鱗粉放射能/原子力で動き/東京電波塔/全部壊してくれ/目の前の敵と戦い/疲れ果て海へ帰り/ごく稀に海を渡る/切り裂かれ/焼け爛れ/ただ敵を倒すのみ/生まれてから死ぬまで孤独/サーチライトに照らされ/ゴスラモジラは進み/防衛線を突破し/止まれない街を止めた/やる気の無いエキストラ/逃げ遅れそこで終わる/島を6つ吹き飛ばし/やっと彼に会えたんだ/鱗粉放射能/もとはイグアナさ/東京新都庁/全部壊してくれ/原子力発電所/近付けば敵が出る/仕方なく街を壊す/噛まれたり蹴られたり/でも敵を倒すのみ/生まれてから死ぬまで孤独/たとえ彼が去っても/第二第三の彼が現れて/街を壊す/憎しみと怒りだけ/その胸に抱え込み/生まれてきた理由を探す/僕等ここで死ぬけど/君は君で生きてけ/まだ間に合うかもしれない/切り裂かれ焼け爛れ/ただ敵を倒すのみ/生まれてから死ぬまで/孤独

■当時、アニメや特撮モノのオマージュというか、独自の解釈でカヴァーしたアルバムがいくつか出ていて、たとえばかなり先鋭的な曲も入った手塚治虫トリビュートだったり、大友良英の「山下毅雄を斬る」だったり。その中でジャイアントロボのテーマがあって、「これかっこいいな!」ということで似た感じの雰囲気をオリジナル曲で作りたかった記憶があります。始終爆発音とかがサンプリングされてるのはその影響。


※歌詞は聞き取れるので割愛

■「やっぱりアルバムに1曲はバラードがないとね」という、謎なメタル脳で入れた曲。ボーカルが朗々と歌い上げるので録音中に笑いを堪えるのが大変だったという記憶。


それは自主的努力の促進を抑制する大人のカンヅメ/学校帰りの路地裏/ゴミ箱漁って拾った/知らなきゃ一生後悔すれども/言わなきゃ絶対バレない/七光りエクゼクティブ/でも学校じゃ僕油蟲/眠れぬ夜は禁断症状/その関係は後ろ向き/それは中毒的依存の危機を有する大人のカンヅメ/絶対秘密の屋根裏/ラベルの裏側書いてある/開けたら一瞬後悔すれども/開けたら一生ダメです/一生涯モラトリアム/でも家の中じゃ僕油蟲/にごった朝はそうだろ少年/Yes I Do/僕、少年/少年は何故キレるのか?/狂った社会のアンチテーゼ/いつもそうだね終わった後にカミングOUT!/ウソツキ野郎の掃き溜め/取り出したるはバタフライ・ナイフ/こいつで一発昇天させて殺ろうか?/それは自主的努力の促進を抑制する大人のカンヅメ/脱獄ロスタイム/でもこの世界じゃ僕油蟲/腐った社会は大人のカンヅメ/さぞや気分良いでしょうね/少年は何故キレるのか?/ウジ蟲の群れの世の中/いつもそうだね終わった後にハラスメント/生ゴミ野郎の掃き溜め/取り出したるは金属バット/こいつで一発昇天させて殺ろうか?/大人のカンヅメ開けてみたけど/子供だからぼくよく分かんないや/大人のカンヅメ開けてみたけど/子供だからぼくよく分かんないや

■飛び道具的な曲。ベースラインから先に作ったのかな。ちょっとヒップホップ感というか、そういうものも出したかった。最後の「イエー」はちょっとそれ。


今朝あの子が消えたよ/バケツいっぱいの血を流してさ/僕は空っぽの部屋で/毛布抱き締めて寝てた/外は真昼の闇に/覆われているのでとても怖い/人の道から外れた/ヒトゲノムからはぐれた/強くて痛い刃が/闇夜で空に笑う/こんな気持ちどうやって消せばいいんだろう/分からない/朝日が昇る時まで僕がなく/もう終わりにしたのさ/泣き叫ぶ君をおいかけるのは/そして空っぽの部屋で/消えない罪に怯えた/やがて気付くはずだよ/ポッカリと空いたココロの隅で/どんなに血を流しても/二度と君は戻らない/痛くて脆い刃が/闇夜で空に笑う/こんな気持ちどうやって消せばいいんだろう/分からない/夜に沈み込めなくて/肉を斬る/僕のチェーンソー/グルグル回って/闇にチェーンソー/ギラギラ光って/これっぽっちの空を/切り取って/思い出ばかりの/胸と骨に貼ってる/朱く/深く/沈んで行く君に/僕は/今は/悔やむ事しか出来無い/逃げてみても駄目だろ/どうせ同じ夜に包まれて/アタッシュケースの中で/モルモットが泣いている/さぁそれじゃ消えようか/胸いっぱいの愛を残してさ/汚れた窓の先から/雨が耳に突き刺さる/脆くて錆びた刃が/罪世で空に笑う/こんな僕をどうやって消せばいいんだろう/分からない/だから僕はこの闇を/許さない/僕のチェーンソー/グルグル回って/闇にチェーンソー/ギラギラ光って/僕はチェーンソー/グルグル回して/夢も/愛も/全てに空を貼り付ける/今朝あの子が消えたよ/バケツいっぱいの血を残してさ

■一番メタリックな曲。ギターリフの重みを出すためにミキシングで波長をこねくり回しました。途中「僕がなく」というフレーズはMoonridersの「ボクハナク」から。音楽的にはほとんど影響ありませんが、Moonriders的な物語性のある歌詞を目指していました。


僕は真実を求めて/今日も彷徨っているよ/人は後ろ指を指して/僕を嘲り笑う/タラポネスの囚人達が/僕を捕えて離さない/タラポネスの囚人達が/僕の心を離れない/叫んでいる/叫んでいる/「ここへおいで」と/僕は安らぎを求めて/今日も悩み込んでいるよ/人は後ろ指を指して/僕を嘲り笑うが

■数年前からあった曲の再録(だから’2000)。もともとは「ソクラテスの弁明」という曲名だったかな。ツインリードのソロを入れてみたくて入れた曲。

それでは良いミュージックライフを。

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