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Metallica / S&M2

Metallicaのオーケストラ共演作第2弾、第一弾(S&M)は1999年リリースだったので21年ぶりの企画です。前回はオーケストラとメタリカがせめぎ合うというか、音がまじりあうというよりぶつかり合う感じだったのが、今回はかなり融合しています。オーケストラの団員もメタリカ好きが多そう。考えてみたらもうメタリカも40年近いキャリアがあり、アメリカンロッククラシックの一員とも言える。小さいころからメタリカを聞いて育った世代が団員に多くいることでしょう。メタリカの音楽に対する敬意と親愛を感じると共に、「異質なものがぶつかり合う感じ」は薄れています。今回はCDではなくブルーレイ、映像版でのレビュー。メジャーな曲よりむしろ個人的にはあまり聞きこんでいない曲(「The Day That Never Comes」や「The Outlaw Torn」など)の方がオーケストラアレンジで生まれ変わっている気がしました。せっかくなので映像付きの曲をどうぞ。スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Ecstacy of Gold
オーケストラによるイントロ、壮大で忠実ではあるが比較的軽快な音像
前のS&Mよりもオーケストラの音が軽やか
これはオーケストラと指揮者の違いが出ている気がする
★★★

2.The Call of Ktulu
バンドも参加してスタート
オーケストラのアレンジがよりバンドと融合している
メタル音楽とオーケストラの融合もさまざまな実験が行われてきて手法が確立したのだろうか
インスト曲なのでボーカルはまだ入ってこないが、ドラム、ベース、ギターの音もオーケストラの音も聞こえる
ラーズのリズムとメタリカのバンドサウンドのリズムが核にありつつオーケストラを含めて渦を巻く音の塊
サウンドレイヤーが細かい、ふだんはギター2本、ベース、ドラムの4つの音で渦を作っているわけだが
数十のプレイヤーが増えることで情報量が格段に上がっていて、各パーツの装飾音が増えている
オーケストラもひと固まりなわけではなく、オーケストラも複数のパートに細かく分かれていてバンドと有機的にかみ合っている
娯楽性が高い
バンドが同じフレーズを反復しオーケストラが緊迫感を高めていく
ツインリードにオーケストラも絡みハーモニーが多重化され、さらに別のメロディが管楽器のパートで加えられる
1960年代後半にスタートしたロックとオーケストラの融合は50年を経てここまでたどり着いたかという感慨
★★★★

3.For Whom the Bell Tolls
だんだんとボルテージが上がっていく、前奏がかなり長い
音だとあまり聞こえないが映像だと最初で鉄琴、マリンバを叩きまくっているのが見える
オーケストラの各パートはかなり手数が多く音を足しており、それがダイナミズムを生んでいる
ボーカルが入ってくる、コーラスでは観客のレスポンスが入る
画面分割してそれぞれのメンバーを映すカットがいくつか入る
前奏部分が長くアレンジされていたが歌は短い、楽器パート長めに編曲されている
1曲目だしまだあまり声は出ていない、慣らし運転
★★★★

4.The Day That Never Comes
バンドのアルペジオからスタート、バイオリンの一群がゆっくりと入ってくる
ボーカルがしっかり入ってくる、バッキングはオーケストラも加わりなめらかでゴージャスな音像
どちらかといえば地味でミドルテンポな曲だがオーケストラがじっくりと世界観を作っていて雄大
ジェイムスの歌声、中音域の魅力が活きる曲
オーケストラによってメロディが大量に加えられ、曲に起伏を与えている
途中からアップテンポに、この曲はあまり印象にないがどのアルバムの曲だろう
中間部の感想はヨーロピアンなツインリードが入る
間奏部の楽器の掛け合い、トゥルージロも加わり弦楽器隊がユニゾン、オーケストラも加わって緊張感を増していく
カークのソロが入る、ギターヒーロー然としている
クラシカルなフレーズ、オーケストラの面目躍如
★★★★☆

5.The Memory Remains
MCを挟んでボーカルとギターからスタート、そこにバンドとオーケストラがなだれ込んでくる
テンポや歌いまわしがちょっとブルージーな曲だが、うまくグルーヴを出している
バンド単体より音の迫力は増しているが、オーケストラが入ったことでヘヴィさより軽快さ、ノリの良さが足されている
シンガロングパートはオーケストラも入ることで壮麗に
重なり合うメロディのレイヤーが絡み合ってクライマックスへ、2回目のコーラス
カークのギターソロへ、ワウギターが泣く
観客の歌声とオーケストラが混ざる、オーケストラはけっこう冒険的なアレンジ
それが観客の声と絡み合ってポリフォニーを生み出している
観客の歌声だけが残る
★★★★

6.Confusion
鳴りやまない観客の声を少し抑えて次の曲へ
ドゥーム、サバス的なうねるようなスローなリフ、打ち鳴らすリフにオーケストラが合わせる
やや解放されてテンポチェンジ、ギターリフの刻みが細かくなっていく
ラーズのドラムはヘヴィでどっしりしている
めっきり手数が減り、メタルドラマーとしては物足りないところも出てきたが、今回はその余白を埋める音が多いのでむしろシンプルで力強いドラムが活きている
バンドのテンポアップよりもオーケストラのテンポアップが入る
各パートそれぞれでエンジン、速度制御できるのがすばらしい
たとえるなら8~10基ぐらいのエンジンを持ったモンスターマシンで、それぞれの制御を個別にしている感じ
今回はこのエンジンをふかしておこう、出力を上げよう、という形でいろいろなところから常時エネルギーが放出される
ジェイムスもルックスはだいぶ老けてきたし、やけくそな勢いは感じなくなったが音程のコントロールが正確に
ボーカルもすっかり暖まってきた
カークは昔ながらのロックヒーロー像、ギターヒーローを体現している
トゥルージロはそれほどアクションが激しくはないが、プレイも含めてしっかりボトムを支えてエネルギーを出している
★★★☆

7.Moth Into Flame
前の曲に比べるとテンポアップ、小刻みなギターリフ、情報量が多い
オーケストラも小刻みにユニゾンし音の壁を厚くする
テンポアップしてツービートで疾走、とはいえしっかりオーケストラがメロディを奏でられるスピード
2番、オーケストラのメロディが足されて冒険感が増す
バンドの演奏が熱を帯びる、ラーズもたたきまくる
だんだんとテンポアップしていく、前のめり
バンドにエネルギーが満ちてくる、若返ってきた
だいたいバンドはライブ中に若返る
★★★★

8.The Outlaw Torn
矢継ぎ早に曲が繰り出される
ヘヴィでインダストリアルなリフからスタート
オーケストラも一部が音の壁に入ってくる
リフの展開と共にオーケストラが盛大にメロディを鳴らす
ドラマチックな音楽、ベースがうねり、リズムを作る
語り掛けるような、問いかけるような中低音域のボーカル
貫禄のあるスクリーム、堂々としている
しかしジェイムスも横幅が広がってレスラーのような体形になったなぁ
ボーカルに導かれテンションが上がっていく
オーケストラの熱量、音量があがっていく、パートの絡み合いが複雑になっていく
中間部、やや静謐なパート、トーンを抑えたカークのギター、アンビエントのように響く
少しテンポが上がっていく、ヘヴィなギターが戻ってくる
こうして聞くとメタリカはギターリフ主体の音楽ではなく各楽器がせめぎ合うロック、70年代ロックに回帰していったのだなぁ
この曲はどの楽器が中心ということなく、各楽器、今回はオーケストラもだが、それらが絡み合って曲を作っている
もはやギターリフが主導するわけでもなく、疾走するドラムが主導するわけでもない
この曲はメタルにとどまらず普遍的なロックの魅力を備えている
★★★★☆

9.No Leaf Clover
オーケストラからスタート、ヘヴィなユニゾンから幽玄なパートへ
そのフレーズをギターがなぞり、ドラムが入ってくる
刻みリフと重厚なオーケストラ
いきなりクライマックスのようなボーカルライン
ジェイムスのかけ声でバンドとオーケストラの熱量が上がりカークのソロへ
ミドルテンポで進軍するようなリズムに
★★★★

10.Halo on Fire
重厚なスタート、ヘヴィなリズム、美しいツインリードで始まるメロディアスなリフ
キングダイアモンド、まーしふるフェイト的な始まり方
オーケストラ、オーボエやフルートだろうか、優美なメロディをヴァースに加える
バイオリンが入ってくる
気が付けば画面分割がなくなった、集中して見れて良い
管楽器もいいところで入ってくる
少しテンポチェンジして弦楽器隊がフレーズを奏でる
感想、メロディアスで変拍子なギター、オーケストラがハーモニーを加える
カークのソロへ、オーケストラとジェイムスのギターが一丸となってリフを刻む
アルペジオの静謐なパートへ
ふたたびバンドに戻り熱量が上がりつつシンガロングパート、観客の歌声がだんだん大きくなる
★★★★

11.Intro to Scythian Suite
オーケストラの組曲?をやるようだ、ラーズがMCで比較的長く話して客を煽る
オーケストラの紹介、マイケルケイマン? 前回のコンダクターかな
前回の指揮者だったマイケルケイマンがオーケストラの紹介をする
ああ、ここからは彼がタクトを振るようだ

※いや、マイケルはマイケルでもマイケルティルソントーマスだ
 どこかで見たことがあると思ったら彼が降ったマーラーのCDを持っていた
 スター指揮者

Scythian Suite, Opus 20 Ⅱ:
The Enemy God And
The Dance Of The Dark Spirits
のしのしと歩くような、比較的ヘヴィなオーケストラ曲
リズムがなくなり、緊迫感ある弦楽器隊のフレーズ、オーボエ、フルート、管楽器など吹きモノが入ってくる
音が飛び回り優美ながら複雑怪奇な音空間に
プログレロック的な語法を感じる曲、作曲された時代が分からないのでこちらが先な気もするが
けっこうモダンな感じの緊張感がある
★★★

12.Intro to The Iron Foundry
The Iron Foundry,Opus19
続けてバンドが戻ってきて余白が多めのギターの反復リフ、オーケストラが間を埋めるように細かいパッセージを弾く
ラーズがヘヴィなリズムをたたき出し、オーケストラのリズム隊もユニゾンする
ファンファーレが鳴り響く
スターウォーズのサントラにありそうなスペーシーな音空間
ちょっと組曲なのでどこで途切れるかいまいち不明瞭だが、一度ブレイクを挟んで場面が展開した
★★★★

13.The UnforgivenⅢ
ゆらぐ、夜のとばりのようなオーケストラの音
和音、ハープシコードの響き、オーロラのようなライトアップ
オーケストラだけで夜の森のような、なにかが動き、潜むような音
ボーカルが入る、オーケストラバックに歌う
ギターを持たずに歌うジェイムズはレア、手が手持無沙汰
完全にオーケストラのみをバックに歌い上げる
★★★★

14.All Within My Hands
指揮者が元に戻った
バンドはアコースティックセット
オーケストラも静謐な音世界を描く、バラード
静謐で美しいが少し不穏、不協和音感も混じる
コーラスが入る、専任コーラスが一人追加、あとはカークとトゥルージロ
Avi Vinocurという人がゲストらしい
テンポチェンジして少しアップテンポに、歌の掛け合い
元のリズムに戻る
★★★

15.(Anesthesia) - Pulling Teeth
チェリストが出てくる、ソロでチェロを弾き始める
完全にソロでかなり長時間弾き続ける、会場を支配する
その後、ラーズがドラムで入ってくる
ドラムとチェロのみの演奏
観客も好意的に盛り上がっている
こうしたオーケストラ側の見せ場がきちんとつくられているのは好印象
互いへのリスペクトを感じつつ、メタリカが一つのメンバーとしてオーケストラを使いこなしている感もうける
★★★

16.Wherever I May Roam
幽玄なバイオリンの響きからオリエンタルなギターリフをカークが奏でだす
ドラムが入りバンドとオーケストラが入ってくる、音圧が大きい
まだ手数は少ない
テンポアップしてギターの音数が増える、オーケストラがいくつかのパートに分かれてうねる
バンドサウンドが主体、オーケストラは溶け込んでいるが音の渦がだんだんと複雑化していく
だんだんドラムの手数やギターの刻み、各オーケストラのパートなど盛り込まれる手数、装飾音が増えていく
ボーカルも熱を帯びていく
トゥルージロのコーラス
★★★☆

17.One
オーケストラの打楽器がさまざまなノイズを出す、低音のドローン音がなり続ける
ラーズが打楽器の演奏者と戯れながら音を出している
かなりコミュニケーションが密なようだ、コラボレーションに際してはこういうシーンは大切かも
ギターが入ってくる、アルペジオのフレーズが始まる、カークのソロ
オーケストラは雄大なフレーズをゆっくりと奏でている
兵士の映像がスクリーンに映し出される
ヴァースを経てギターソロへ、あまり声は聞こえないが観客も歌っているようだ
オーケストラの音移動が激しくなってくる
途中からテンポが切り替わり疾走パートへ、カークのギターソロ
変拍子に合わせてオーケストラも複雑なパッセージを決めてくる
ツインリードでメロディアスなフレーズ
ツインリードシーンでリズムギターが不在になっもオーケストラがあるのでぜんぜん音が薄くならない
後半は音の渦
★★★★

18.Master of Puppets
観客の歓声を煽り、ドラムのカウントから一気に曲になだれ込む
高速ギターリフとユニゾンするオーケストラ
比較的原曲に忠実だが音圧と優雅さ、メロディの複雑さをオーケストラが足している
ラーズもタイトにリズムを刻んでいる
突進しては立ち止まり、を繰り返しながら疾走していく
いったんブレイク
美しいアルペジオからスタート、ツインリードのギターフレーズ、観客の合唱が起きる
じわじわとドラマが盛り上がってくる
カークのギターソロ
オーケストラは最高潮にエンジンをふかしている
★★★★☆

19.Nothing Else Matters
カークの指弾きアルぺジオからスタート
オーケストラが静かにはいいって来る、もともとオーケストラ入りの曲なのでなめらか
忠実に、ドラマを丁寧に歌い上げて終曲
★★★☆

20.Enter Sandman
いよいよラストソング、ふたたびマイケルティルソンが指揮している
ミドルテンポで突進力が増している、ミドルテンポの曲がオーケストラとの相性は良いようだ
トゥルージロが観客席に降りて煽っている
観客が総立ち
いったんブレイクし、オーケストラがうねるような音階を演奏する
リフが戻ってきてバンドが入る、マイケルティルソンはなにかシンセドラムのようなものを操作しているな
コンダクターは先ほどまでと同じ若手のようだ
熱が上がり、ブレイクを挟んでさらにテンポアップ
終曲、ライブも終わり
★★★★☆

総合評価
★★★★
素晴らしい、前作よりオーケストラとの融合度が上がっている
ロックとオーケストラの融合の最新系
ロック、メタルもさまざまな楽器や音を取り入れて発達してきた
さまざまな積み重ねを経て、オーケストラの融合は「実験的」ではなく「娯楽」として十分に楽しめる
今回はオーケストラもスピード感と軽快さがあって良かった
途中、オーケストラとバンドのからみ、チェロのソロなどエンタメ性、イベントならではのお楽しみもあった
大御所の風格を感じた
世界中からファンが集まってきて、それぞれの国旗を掲げていたのも印象的

ブルーレイ作品、映像

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