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Dizzy Mizz Lizzy / The Alter Echo Japan Tour 2023@CLUB CITTA'2023.9.17

土曜はハロウィン、日曜はDizzy Mizz Lizzy(以下DML)。なんて週末だ!
ということで観てきましたDML。ライブで観るのは初。川崎クラブチッタも久しぶり。前に来たのはコロナ中に敢行されたMetallizationでした。2年ぶり。

DMLと言えばやはりデビューアルバムの衝撃が大きくて、Gloryは個人的な90年代を代表する名曲の一つ。ただ、Rotatorで少し行き詰まり(1stの衝撃を超えなかった)を感じていたら解散。その後2000年代に復活したものの復帰作Forward In Reverseにもそこまでハマれず。むしろティムクリスティンセンのソロ作や、まるごとポールマッカトニーのRAMをカバーした「Pure McCartney」を一番聞いていたのでした。そんな自分が再度DMLに強い興味を持ったのは最新作「Alter Echo(2020)」。アルバム全体が丸ごと1曲の組曲のような作りになっていて、ペンタトニックスケール(レミソラド)を中心としたどこか土着的で自然体なメロディを軸に強靭なギターサウンドとバンドアンサンブルが織り成されていく。まさかここにきての強烈なプログレ化を果たして俄然興味が再燃した次第です。

入場。ソールドアウトだったそうですが意外と余白がありました。僕は前の方に攻めたので後ろの席は分かりませんでしたが、そんなにギチギチではなかった。ライブがはじまって前の方に圧がかかることがなかったですからね。みな落ち着いて見ていた。スペースに余裕があったのは個人的には助かりました。昨日のハロウィンでのライブ(というか物販待ち)でずっと立っていたのでまだ足に疲れが。ステージセットはシンプルな幕、Alter Echoのジャケットをモチーフにしたビジュアルのみ。

ライブはほぼ定刻通りにスタート。今回はバンドメンバー3人の他にキーボード・コーラスのサポートメンバーがいます。計4人。Rushのように「3人でやること」にこだわらなかったんですね。

1曲目からいきなりAlter Echoの後半丸ごとを占める20分強の大曲Ameliaでスタート(ただし、アウトロの5分ぐらいのアンビエントなパートはカット)。ここで思ったことは「ギターの音がいい!」ということ。最初はアルペジオで静謐にスタートし、途中からディストーションがかかってリフが展開していくのですがこのギターの音がカッコいいんですよ。切り込んでくるような音。

最近、90年代のDMLを聞いて「やっぱり90年代のバンドだったんだなぁ」と感じていたんですがライブを観てますますその感想が強まりました。だって考えてみたら構成もニルヴァーナと同じだし。当時のグランジ・オルタナムーブメントも咀嚼しつつ、ビートルズであったりアバであったり、欧州音楽、北欧(デンマーク)のメロディを組み合わせたのがDMLの特性だったのでしょう。

90年代にロックに起きた変化はいくつかあると思いますが、僕が感じているのは「ギターサウンドの多様化(エフェクターの進化)」※これが極端に出たのがシューゲイズ と「いかにもギターで作ったコード進行」。いかにもギターというのはたとえばニルヴァーナのスメルズライクティーンズスピリットみたいな。あれ、ギターだと自然な運指ですけど、キーの概念からするとちょっと外れている。DMLにもそういう感覚がありますよね。特に昔の曲は。音楽理論的に説明できればいいんですけど、うーん、G-F-C-E♭-Fみたいな。これ、ギターで弾くと同じ指の形の平行移動で行けるんですよ。SmellsはFm-B♭-A♭-D♭ですね。DMLの曲で言えば今回のライブでやった11:07 pmとかはすごく当時っぽいコード進行だなぁと思いました。サビがC-G-D-A7sus4と来てその後C-D-Eと来る、このEが凄く90年代っぽい。

コード譜を置いておくのでもしギター弾く人は弾いてもらうと分かる、かも。僕にとってこういうコード進行って「90年代的(グランジオルタナ的)」と感じます。

Nirvanaは「チープトリックをリバイバルしたかった」とカートコバーンが話していた通り、70年代からこういうコード進行ってたぶんあったんですけれどね。僕の主観的には90年代にこういう響きが増えた。コーラスとか曲の終わりの着地がキーから外れる、みたいな。日本だと奥田民生が多用していた印象があります。

ライブで見て改めてそんな「90年代のバンド」感を感じるとともに、最新作「Alter Echo」での曲作りは「音の選び方がかなり意識的になっている」と感じました。ペンタトニックスケールが主と先に書きましたが、最初は使っている音程が少ない。手数が少ないということではなく、使っている音階です。90年代的なパワーコードで展開し、キーを曖昧にする(つまり違うキーの音程も使う)手法ではなく、むしろ音程を絞っている。絞った音程で曲を展開した後、ここぞというときに音程が展開するようになりました。前からそういう意識があった作曲家でしたが、最新作ではそれが特に顕著。一聴するとシンプルで反復されるメロディのように感じるんですよね。実際にはかなり展開していくのだけれど、そうした「一つのメロディを記憶に残す手法」が劇的に深化している。

で、今回ライブで前作(フォワードインリバース)からの曲を聞いて、Alter Echoでの劇的な変化の予兆は前作にもあったんだなぁと気づきました。前作の最終曲「Say It To Me Anyway」はAmeliaの原型的な曲ですね。静謐にスタートしてだんだん盛り上がっていくバンドアンサンブルの盛り上げ方は近い。

ただ、Alter Echoの方が「音程の選び方」がかなり意識的、作為的になっています。やっぱり前作はどの曲も多分単曲で完結する、メロディも自然に展開していく、内側から湧いてきたものを曲にしていた。Alter Echoは厳密に設計図みたいなものを考えて、それぞれに必要な展開や音程さえもコントロールしている気がします。同じアーティストだから通底するセンスや演奏は共通しているのだけれど、その表現の仕方がガラッと変わった。

改めてライブを観て感じたこと。

・ティムクリステンセンはめちゃくちゃギターが上手い。もしアメリカで活動していたら90年代を代表するギタリストと言われていたかもしれない。(し、逆に埋もれていたかもしれない…)

・ローテイターからの曲は一部ギターが複雑すぎる曲も。弾きながら歌うのに限界がありそう、この路線で行かず、より自然体な方向を模索してたどり着いたのがAlter Echoなんだろう。

・ベースの音がかなりブリブリしていて腹に響いた。地響きのような超低音を響かせる曲もあり、ギターもベースも音響が凝っていて気持ちいい。

・ドラムとベースとのアンサンブルが素晴らしい、けっこうリズムは揺れるというか、有機的に早くなったり遅くなったり、3人のアンサンブルが呼吸が合っているからそのあたりが自由に変化していった、少人数トリオかつ互いの息が合っているからできる芸当(そうしないと単にグダグダしてしまう)

セットリストはこちら。

1.Amelia Part1-4 (Alter Echo)
2.The Ricochet (Alter Echo)
3.I Would If I Could But I Can't (Forward In Reverse)
4.Brainless (Forward In Reverse)
5.Glory (Dizzy Mizz Lizzy)
6.Made To Believe (Forward In Reverse)
7.The Middle (Alter Echo)
8.Love Is The Loser's Game (Dizzy Mizz Lizzy)
9.11:07 pm (Rotator)
10.Rotator (Rotator)
11.67 Seas In Your Eyes (Dizzy Mizz Lizzy)
12.Waterline (Dizzy Mizz Lizzy)
13.Say It To Me Anyway (Forward In Reverse)

Uncore
14.Thorn In My Pride (Rotator)
15.Silverflame (Dizzy Mizz Lizzy)

全15曲。アルバム別にみると

Dizzy Mizz Lizzy(1994) 5曲
Rotator(1996) 3曲
Forward In Reverse(2016) 4曲
Alter Echo(2020) 3曲(Amelia組曲を4曲とすれば6曲)

全アルバムから選ばれていますがRotatorが少し少な目。4枚のアルバムの私的な感想として、1stで天才的な才能を発揮、2ndはネタ切れというか方向性に迷って行き詰まり(1stの方向性を先に進めようとしたのだけれど行き過ぎてしまった)、20年の時を経てその間の経験や音楽的挑戦を盛り込もうとしたけれど過渡期だった3rd、そしてそれらを踏まえて音楽を一段階深くコントロールして見せた4th、みたいなイメージを持ちました。

ライブ終わって大団円

余談ですが、ティムがあきらかにメタルメタルしたTシャツを着ていたんですよね。ちょっとロゴがはっきり見えなかったんですが、たぶんRevocation(USのデスラッシュバンド) 意外とゴリゴリのを着てるんですね。

RevocationのTシャツ

でも今週はAmorphis、Helloween、Dizzy Mizz Lizzyとそれぞれ魅力が違うバンドを観れて最高の日々でした。それぞれ個性が違って独自の音世界があり、ライブの物語がある。最近はライブ中の熱狂より、あとから反芻して読み解けたり沁みてきたりすることが増えました。「いいライブだったなぁ」と。いいライブを観ると活力がもらえますね。今日の記事の最後はライブのエンディングを飾ったSilverflameを。

それでは良いミュージックライフを。

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