「before dawn」 / 角居康宏インタビュー①【曙光】
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「before dawn」 / 角居康宏インタビュー①【曙光】

青山泰文
白白庵では2020年10月9日(金)より金工作家・角居康宏 展「before dawn」を開催します。
今展覧会に向けての制作を終えたタイミングで「before dawn」出展作品、そして自身の制作テーマについてたっぷりと語って頂きました。
そのインタビュー記事を二回に分けて公開します。
まずは今回の主役となる作品『曙光』、そして角居の根源的テーマである「始まり」について。
『曙光』の制作風景は下記リンクよりご覧ください。
”長野県 頑張るアーティスト応援事業 テーマ型 対象事業動画制作”
制作動画「曙光 -shoko-」

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『曙光 I』(部分)

ーまずは今回の主役となる作品「曙光」についてお伺いします。

この作品を作るときに「よーし!太陽を作ろう!」と思ったんですね。
あらゆる文明に太陽神とそれにまつわる神話が存在します。
厳密に調べれば持たない文化もあるかもしれませんが、基本的に太陽と神話は切り離せない。
そしてその多くが「太陽神が一旦隠れて復活する」という物語。
これが現在のコロナの状況にとてもよく似ています。
僕が制作のテーマにしている「始まり」を追いかけると神話を生む素地に近づいていくし、現状はそんな神話が生まれたような状況に近い。
人間自体の営みにある普遍性は神話のレベルまで遡ると見えてくるんです。

コロナに関係なく、人間は行き詰まると一旦リセットしたくなりますよね?
僕は展覧会の直前には毎回ね、地震とか来てくれないかなぁ、と思うんですけど笑
本当にそんなことが起こればどれだけ悲惨であるかは、いろんな事を経験して分かっているのにそんな浅はかな事をいつも思ってしまう。
こんな世の中なくなって仕舞えばいいのに、という願いから始まる再生ですね笑

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『曙光 I』

でもね、再生するとわかっているから楽しいんです。
どん底で抱く微かな希望とかね。
どれだけ苦しんでも展覧会の初日は来るし、その時には笑っていないといけない。

コロナだってどこかで大きな犠牲はあるかもしれないけれども、生き延びた人間はその先の人生で笑わなければいけない。
もしかしたら自分は生き延びられない側かもしれないですけど、生き延びた人たちが笑うための希望や物語の「始まり」を作りたい。

きっと昔の人たちも同じように考えて、「再生の神話」を作ったのではないかと思います。

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『曙光 Ⅱ』(部分)

ー角居さんのテーマである「始まり」についてお聞かせください。

金属を溶かすのって本当にカッコいいんですよね。
学生の頃から何故そこに魅力を感じるのかわからないままそれでも金属を溶かす事を繰り返して。

金属を溶かすこのカッコよさには突き詰めると、意識の地下水脈で繋がっているような人類にとって普遍的な感動があるんです。
見た事はないですけど、地球が火の玉だった頃への根源的な記憶とか、太陽そのものへの憧憬と同じではないかと思います。
要するに本当に根源的な力、「始まりの力」が僕を動かしているんではないかと感じるんです。

そしてこうやって「始まり」をやっていると全部ストーリーで繋がるんですね。
最初はビッグバンがあって、命が最初におこる瞬間、意識が現れる、社会が成立する、ありとあらゆる事に「始まり」があって物語が繋がっていく。

こんな風に「始まり」について考えれば必ず”何かを作ろうとする根源的な意識”に突き当たります。
今回コロナに託けて「太陽」を作ろうと思ったのも「始まり」をテーマにする限り避けて通れないからでもありますね。
人間の作る物語には必ず太陽が登場するし、根源的な意識と密接に繋がっている。僕もそれを作らなければ次へ進めないと感じたんです。


ー実際に映像で観ると溶けた金属は色っぽいですし、それを地面に流し込む姿にはプリミティブな感動がありました。

地面にアルミを直接流し込むのと木型を当てて流し込むパターンの両方をやってるんですが、どちらも鋳物をやってる人からすればタブーみたいな事なんですね。
例えば鋳造ならば金属の全てをコントロールするためにシステムが組み上げられている。原型があればそれをそのままに再現しなければならないんですね。

僕の場合、そこに自分ではコントロールできない状態を作ります。
自分と素材の間に隔たりが欲しいんです。
僕が勝手に素材を神格化している部分もあるんですが、コントロールできない部分を作り出す事で素材との関係を再契約するイメージです。

作品に意味があるのは当然なんですが、作る側としては行為そのものにも意味があるし、より強い意味を与えたい。
ロジックを積み上げる事、わかっている部分を積み上げに積み上げて、最終的にわからないところを取り出したいんです。

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『曙光 Ⅱ』

ー木型と地面に直接流し込むのではどのような違いがありますか?

単純な話、木型の場合は木が燃えます。
作品の泡になってる部分が燃えた煤とアルミが反応して色調が変わるんですね。焼物で言うところの強還元がかかった状態。

今回のだと小さい方が木型の作品で、大きい方が地面に流し込んだ作品。
どちらも最終的に表面の仕上がりを同じようにしたのであまり差はわからないけれど取り出した状態は違います。仕上がっている方が型に触れていた面です。

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(↑木型に流し込んで作られた『曙光 Ⅱ』の細部)
(↓地面に流し込んで作られた『曙光 I』の細部)

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ーアルミニウムという素材を使う意味は?

例えばブロンズは素材そのものの色気が凄いんですよ。何をしても雰囲気が出てしまう。素材が青銅器時代の記憶を持ってるので”なんちゃって”でその気になれてしまう。結果、表層だけを追ってしまいがちで、逆に真髄にたどり着けない。

それに対してアルミは軽薄です笑
まさに現代そのもの。作れば作るほど、仕上げれば仕上げるほど重みを失っていきます。そういう軽薄さが気づかせてくれる事もあるんですよ。
物理的にも比重はブロンズの三分の一。同じ重量で三倍の量感が出せるので制作の幅は広がりますね。

僕は最後の最後まで作品にコミットしたいんですけど、アルミは仕上げると本当に軽薄になる。形と僕、素材と僕のやりとりを続ける事でどこで止めるかを見極めないといけない。

コントロールすればするほどコントロールできない軽薄さが生まれる。
これが素材に教えてもらったことです。

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『曙光 Ⅱ』 背面部分

とは言っても、金属を型に流し込むだけだと単なる「現象」で終わっちゃう。自分が考えている「力とはなにか」とか「美しさ」にたどり着く手前で止まっちゃう。
だから流し込んでそこから仕上げる。もしかしたらバリ取りだけで終わるかもしれないけれど、少しでも手を下す事でそれが自分の作品になります。

ー大学卒業後は陶芸家の鯉江良二さんのところでお世話になっていたそうですね。

陶芸家の家でお世話になるんだから焼物をやるんだ、と思って行ったんですけどね。着いたら鯉江さんに「せっかく金属やってたんだからここで金属溶かして何かやりなよ」と言われまして。
でも何のために大学行ったのかわからなくなるくらいに何もできないんですね笑
学校や会社では設備があるからすぐできることでも、いざ自分でやろうとするとどうしたら良いかわからない。既にあるプロセスに従っていただけだったんです。「溶かす」という事から分からなくなってしまった。

だからもう自分には何ができるのだろう?と足元からおぼつかなくなってしまった。

まずは鯉江さんから「金属溶かせよ」って言われたのでとにかくそれだけを考えて。それに必要な道具を揃えていく。その環境で出来る炉の形を考えていく。そしたら不思議な事にそうするうちにやりたい形が決まってきたんですよ。
地球を雌型にして型取りしようと考えたのはその時です。
地球なら球体が良いから半球にしようといっぱい作りました。

この地球を型取りして反転させることは、新しい形が生まれることでありながら、reverseであり、同時にrebirthでもあります。
技術的なことを見直すうちにやりたいことが固まったんです。

「溶かす」という「始まり」を見つめることで自分のやるべきことが見つかったわけです。

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『曙光 I』

ーそこから物語が始まるわけですね

河合隼雄さんが「中空構造日本の深層」という本で書かれていたんですけども、古事記で最初に登場する神様「タカミムスビ・アメノミナカヌシ・カミムスビ」とイザナミ・イザナギが生んだ「アマテラス・ツクヨミ・スサノオ」うち、それぞれ真ん中のアメノミナカヌシとツクヨミが中心となるはずなのに何もしないしどういう神様なのか全然わからない。
この構造を神話として作った人は凄いな、と思います。
中心の神様が一番分からん。
結局のところ「世の中なんてわからんのだよ」という事を言い切るのが本当に凄い。


「文明」は世界を明晰化してその普遍性で覆い尽くそうとする力です。
「文化」とは限られたエリアの深い井戸の底みたいな状況ですね。
文明によってこの世界が分かった気になるのかもしれないけれども、「実際のところわからん」という余白を持とうとしない点が文明の一番弱いところ。神話というのはそれを分かっていてかつ普遍性がある。
普遍性があるが故にこの「結局のところわからん」という余白を作る。

ものづくりをやっていると、最終的には見る人に預けて、自分では物語を完結させようと思わないんです。
自分でも「わからん」ところを残しておいて、見る人にとってもわからないところを残す。
この「わからん」部分が結局のところ重要なんです。

新型コロナによって「わからん」状況をつきつけられると文明社会の人間はこんなにも弱くてですね。
この社会では経済とか強さとかで勝負して、芸術とか豊かさを省いているから逆に弱いんですよね。
もし仮に第三次世界大戦みたいなより大きな災いが起こるとして、それを止められるとしたら強さではなくて文化とかの弱い力です。
その根本として「わからんのだよ」という部分がブレーキになるはずです。

次回に続く

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『曙光 Ⅱ』

*

〜日はまた昇る 希望とともに〜
The sun will rise again, with the hope.
白白庵 オンライン+アポイントメント限定企画
金工作家・角居 康宏 展
『before dawn』

PAKUPAKUAN presents
Metal artist SUMII Yasuhiro solo exhibition
“before dawn”


【オンライン】
日時:2020年10月9日(金)午前11時~ 19日(月)午後7時
   *会期中の木曜日は定休日のため受注のみ。
会場:白白庵オンラインショップ《PAKUPAKUAN.SHOP》内特設ページ

【ON LINE】
DATE & TIME : 2020.10.9 FRI. 11:00am. - 19 MON. 7:00pm.
*only order correspondence for a regular holiday on Thursday during a session
VENUE : Special issues page on www.pakupakuan.shop

【アポイントメント】
日程:10月9日(金)~ 19日(月)のうち、金・土・日・月曜日 限定
   *火・水曜日はオンライン業務専従日、木曜日は定休日。
時間:午前11時~午後7時 の間で 一時間枠
   *一時間を上限とする来訪枠を設定し、各枠内で最大2名までの受付といたします。
   *3名様以上でのグループのご来訪はお断りします。
   *アポイントは訪問前日の営業時間内までの予約受付を必須とさせていただきます。(原則として電話受付)
   *マスク着用、入口でのアルコール消毒・検温必須。
     感染症予防対策を万全に講じ、事前予約のある方のみ来場可能とさせていただきます。
会場 白白庵(1階エントランスギャラリー)
   〒106-0072 東京都港区南青山二丁目17-14
   TEL&FAX 03-3402-3021
   www.pakupakuan.jp | info@pakupakuan.jp
【Appointment for visiting PAKUPAKUAN gallery】
DATE : Only FRIDAY, SATURDAY, SUNDAY and Monday during 2020.10.9 FRI. - 19 MON.
*Tuesday and Wednesday are online business days, Thursday is a regular holiday.
TIME : 1 hour during 11:00am. to 7:00pm.
*Only less than 3 people will be accepted in each time schedules.
*We do not give the permission to visit to our gallery if visitors will be over 3 members.
*Please call us if you hope to visit us, until in business hours (11:00-19:00) of the day before visit.
*Mask wearing, alcohol sterilization, the thermometry at the entrance are required.
VENUE : PAKUPAKUAN (Entrance gallery at 1st floor)
     2-17-14, Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, JAPAN zip 107-0062
     TEL & FAX 03-3402-3021
     URL www.pakupakuan.jp Mail info@pakupakuan.jp


突然訪れた深く長い暗闇の中、
うっすらと明けやらぬ先を見て
彼は何を思い、形にするのか。
白白庵での待望の初個展は、
コロナ禍における作家の苦悩の痕跡を隠さず
未だ見ぬ新しい世界への希望を込めた
メッセージとなるだろう。

What does he think about and give shape to?
His long-awaited first solo exhibition at PAKUPAKUAN will not hide the traces of the artist's agony in the aftermath of the corona plague, but will be a message of hope for a new world yet to be seen.


2018年長野市中条に表現者の交流や制作の場として設立された「中条アートロケーション《場》」の中心メンバーとして角居康宏は自身の作家活動とともに地域の人々との交流にも力を注いできました。
全国各地で評価の高い彼の錫(すず)の道具は、日本酒のための器をはじめ日用のカップ、花器、近年では茶道具としても展開され、長く重宝できるものとして愛用されています。
他方、彼のアーティストとしての側面を大きく反映するオブジェの制作においても、美術館での個展など幅広く活躍しています。
白白庵の企画でも2013年から登場し多くのファンを獲得してきましたが、満を持しての初個展となる今回。
奇しくも新型コロナウィルスが蔓延する世界における「新しい日常」が叫ばれる中、現代に生きる作家としての矜持を示す機会となるでしょう。
8月に「長野県 頑張るアーティスト応援事業 テーマ型 対象事業動画制作」としてリリースされた制作動画「曙光 -SHOKO-」には
中条における貴重なオブジェ制作風景の一端が収録されており、今回の個展の主役としてその実作品が登場する予定です。
もちろん、幅広い世代に支持される酒器や食器、花器なども新作を多数揃えてお見せします。
一つ一つが高い美意識と実用性を持ち、確かな技術に裏打ちされた逸品を、是非この機会にお試しください。

SUMII Yasuhiro has focused on his own artistic activities as well as interaction with local people as a core member of NAKAJO ART LOCATION "BA", established in 2018 in Nakajo, Nagano City, as a place for exchange and production of artworks by artists. His tin utensils, which are highly regarded in various parts of Japan, have been used for sake cups, pitchers, daily cups, vases, and in recent years, tea ceremony utensils. His works can be used for a long time and are cherished.
On the other hand, he has also been active in the production of objects that reflect his artistic side, such as solo exhibitions at museums. He has gained many fans since his first exhibition at PAKUPAKUAN in 2013, but this is his first solo exhibition after a long wait. This will be the opportunity to show his pride as an artist living in a world where a new type of coronavirus is spreading and people are calling for a "new normal".
The video "-SHOKO-" released in August under the title "Nagano Prefecture Project to support hardworking artists themed type Target Project Video Production" contains a part of the production of his objects made in Nakajo. And the actual artwork is scheduled to be the main feature of this solo exhibition.
Of course, there will be many new pieces of sake cups, tablewares and vases, which are popular with people of all ages. We hope you will take this opportunity to try these masterpieces; each work is highly aesthetic and practical, and is backed by solid technique.


【出展作家】 Artist
角居 康宏
金工作家・彫刻家 / 長野県在住
【略歴】
1968 石川県生まれ
1993 金沢美術工芸大学美術工芸学部産業美術学科工芸デザイン専攻 卒業
【近年の主な出展】
2015 個展(志賀高原ロマン美術館 / 長野)
2016 個展(関口美術館 / 東京)
    個展「層」(ギャラリー川船 / 東京)
2017 個展「野辺」(as baku B / 金沢)
    個展(信州高遠美術館 / 長野)
2018 「シンビズム」(信州ミュージアムネットワーク選抜展)
    「金工 角居康宏展」(アートサロン光玄 / 愛知)
2019 白白庵リニューアルオープン記念企画「南青山大茶湯」(白白庵 / 東京)
    「夏の宵茶会」「煎茶上等 リターンズ」「大縁起物展」(白白庵 / 東京)
2020 「春爛漫 百花繚乱茶会」(白白庵 / 東京)

SUMII Yasuhiro
Metal work artist, sculptor / resident in Nagano pref.
〔Brief Personal Histroy〕
1968 Born in Ishikawa Japan
1993 Graduate from Kanazawa University of Art and Craft
〔Major exhibitions in recent years〕
2015 Solo Exhibition [Shigakogen roman museum] (Tokyo)
2016 Solo Exhibition [Sekiguchi Art Museum] (Tokyo)
    Solo Exhibition [Gallery Kawafune] (Tokyo)
2017 Solo Exhibition [as baku B] (Kanazawa)
    Solo Exhibition [Takato Museum of Arts] (Nagano)
2018 Shinbism(Selection of Shinsyu Museum Network)
    Solo Exhibition [Art Salon Kogen] (Aichi)
2019 PAKUPAKUAN Reopen after renovation Event“Minami Aoyama Great Tea Party”(PAKUPAKUAN / Tokyo)
    "Summer Night Tea Party”, “SENCHA JO-TO / Returns”, "Great exhibition of lucky charm" (PAKUPAKUAN / Tokyo)
2020 "Hundred flowers blooming in profusion" (PAKUPAKUAN / Tokyo)
web site https://www.yasuhiro-sumii.com/


【企画・ディレクション】Direction
石橋 圭吾 (白白庵) ISHIBASHI Keigo (PAKUPAKUAN)


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青山泰文
白白庵 マネージャーPAKUPAKUAN Maneging Directorhttp://www.pakupakuan.jp/japanese.html