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2024年3月の記事一覧

土くれを踏むだけ

 土くれを踏みつけて、思ったよりも軽く弾けるような、まるで空気の抜けるような感触で意表を突かれる。水分という余裕を失った塊の瓦解が思いがけず衝撃だったので、少しだけ足を止める。そして、もう一度踏み込んでみる。すでに散開した砂埃たちは土くれだった頃よりもむしろ頑丈に反発する。いや、散開したというのが間違った表現だったのかもしれない。こいつらはもっと大きな、地球という土くれに同化したのだ。そして地球ほ

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「裸足」がテーマの文章を書く裸足の人

 パソコンの前に座り込んだとき真っ先に思い浮かぶ言葉が「寒い」、そんな季節に文章を書こうというのが間違いなんだ。

 アスファルトが夏の日差しでちりちりに熱いところを裸足で歩く。飛び出た小石の尖ったのだとしても、熱さと判別つかない。白線を踏んで進むことは子どものお遊び以上に足裏を救う意味を持つ、裸足のときに限るけど。

 とにかく速さが求められるときに、足が降り立つ先に何が落ちてるか気にしている暇

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インターネットが壊れた

 インターネットが壊れた。

 ルーターのランプが赤点滅することってない。もうこれは壊れてるに決まってる。ケーブルが壁の奥に消えたその先が全部吹き飛んで、インターネットとはもう会えないのだ。

 陰湿なインターネットはその陰湿さ故に僕と仲良しだった。僕は誰のことも傷つけたくない割に、皮膚にカッターナイフが生えそろっている。ほとんどインターネットみたいなもんだ。

 タッチパネルに向かって指を押し付

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