コロナ渦不染日記 #84
十二月二十一日(月)
○今朝の体温は三六・〇度。
○米国の、製薬会社大手「ファイザー」が開発した、新型コロナウィルスのワクチンに、アナフィラキシー反応が出たという。調べると、今月上旬にも、ワクチンによるアレルギー反応は報道されていた。本邦にて、ワクチン接種が開始されれば、同様の事態は起きるであろう。なにごとも急すぎていいことはないのである。
○今週で仕事納めになるように、仕事量を調整した。来週の月曜の有休も申請した。
○現場で、取引先(現場にとっては上層部だ)への愚痴を聞く。と同時に、こちらに対するお小言も頂戴した。個人的には、お小言をもらった件に対して努力するにやぶさかではない。しかし、根本原因は、取引先の体制にあるので、それが変わらない限り、現場レベルではいかんともしがたいものであると考える。しかし、それは相手もおなじであろう。愚痴を言いたい相手に言えずに、現場レベルで言い合っているのであるから、まったく悲しいことだ。それだけ、相手には余裕のないものと思われる。さいわい、ぼくには余裕がある。
○上記のように、みずからの状況に困ってしまった人が、相談をしたり、愚痴を吐きだしたりすることは大切であると、ぼくは考える。しかし、それを聞く人は、余裕のある人に限られるのだから、実は、「困った人の話を聞く人」などという「役割」は存在しない。なぜならば、誰もがいつでも余裕があるわけではないからである。余裕がないのに、役割だからとて、それをやらされて、うまくいかないと責められるのでは、たまったものではない。
人にも(もちろん知的生物にも)、社会にも、余裕があるのが大切である。ただでさえ、おそるべき災禍のさなかこそ、余裕がほしいものである。
○本日の、全国の新規感染者数は、一八〇一人(前週比+一一九人)。
そのうち、東京は、三九二人(前週比+八七人)。
毎週月曜日は、新規感染者の報告が少なくなるものであるが、それでも、先週と比べて、増加傾向にある。
十二月二十二日(火)
○今朝の体温は三六・一度。
○朝からなんとなくいやな気分があるのは、昨日とおなじ現場に、新人を同行するからである。昨日のお小言が、こたえたものと思われる。そのプレッシャーに背中を押されて、いろいろと張り切って行動した。結果は、そこそこの成果をあげたものと思うが、プレッシャーはいやなものであるから、プレッシャーなく成果を得られる現場作りが必要であると痛感する。
○仕事は、個人より前から存在し、個人の誕生の後から個人に付属する。ということは、仕事は個人のためのものではない。個人が生きざるをえない場としての、社会のために存在するのである。
だから、仕事は、個人が生きるために存在するのであって、仕事のために個人が存在するわけではない。仕事なんかなくたって、命は、生きていこうと思えば生きていけるのである。それができないのは、人が、社会のなかで生きていかざるをえない存在だからである。
だから、せめて、個人が、仕事のために存在するなどということがないようになればと思う。仕事が、個人のために存在するという認識を、誰もが持つべきなのだ。そこからなら、本来であればその仕事をやらなければならない人が、その仕事を選び、果たしてくれたことに対するリスペクトが生まれるはずである。
縦の糸はあなた 横の糸は私
逢うべき糸に 出逢えることを
人は 仕合わせと呼びます
――中島みゆき「糸」より。
と、中島みゆきはうたったが、この伝でいけば、
縦の糸はあなた 横の糸は求め
逢うべき糸に 出逢えたときに
人は 仕事をするのです
ということなのだ。
○本日の、全国の新規感染者数は、二六八八人(前週比+二六三人)。
そのうち、東京は、五六三人(前週比+一〇六人)。
十二月二十三日(水)
○朝、巣穴を出ると、先週よりすこしばかり、空が明るい。冬至をすぎて、春のきざしがやってきた。
今朝の体温は三六・〇度。
○担当区域外に代行したので、ふだんとは違う駅をとおることになった。押上で乗り換えることになったので、駅前のラーメン屋で、はやめの夕食にした。
チャーハンにかまぼこが入っているのがうれしい。セットにすると、ラーメンのサイズは「小」になるが、麺がちゃんと入っているので、かえってちょうどいい大きさになった。
○本日の、全国の新規感染者数は、三二六八人(前週比+二七六人)。
そのうち、東京は、七四八人(前週比+七〇人)。
ついに、全国での、一日の新規感染者報告が三〇〇〇人を超えた。
十二月二十四日(木)
○今朝の体温は三六・〇度。
○午前中は在宅で勤務し、午後は現場を巡る。
現場の、仲のいい取引相手と、遅くまでやりとりをしたが、
「今日ってクリスマスイブなんですよね。全然そんな感じしませんね」
と言われて、ようやくそのことに気がついた。
クリスマスチキンのかわりに、立ち食いそば屋のとり天そばを食べた。
○帰宅すると、母うさぎと下品ラビットがおでんを炊いていた。
白ワインを飲む。
○白ワインで酔っぱらったが、明日の仕事納めのために、持ち帰り仕事をする。どうあっても、明日で仕事を納めねばならぬ。そうでなければ、たのしい年末休みを満喫できないのである。すべてはぼくじしんの心の平穏のためだ。
○本日の、全国の新規感染者数は、三七三九人(前週比+五二九人)。
そのうち、東京は、八八八人(前週比+六七人)。
全国での新規感染者報告が三〇〇〇人を超える日が、二日続いているうえに、東京での、一日の新規感染者報告がこれまでにない八〇〇人を超えるなど、いよいよ感染規模が拡大している。これは、クリスマスとクリスマスイブをひかえて、人々の出足が増え、買い物先に集まったり、飲み会が開催されるなどしているからではなかろうか。
十二月二十五日(金)
○今朝の体温は三六・〇度。
○朝から、あれもこれもこなして、ついに仕事を納めた。社内では二十八日までが営業日であるが、有休の札を切っているので、これにて一年の仕事納めとなる。
○クリスマスディナーなので、山かけ丼を作った。赤(まぐろ)と白(米ととろろ)と緑(青のり)で、クリスマスカラーなのである。
○本日の、全国の新規感染者数は、三七三九人(前週比+九〇三人)。
そのうち、東京は、八八四人(前週比+二二〇人)。
一日で、全国で四〇〇〇人弱、東京だけで九〇〇人弱の新規感染者が出ている現状は、さすがに看過できない状況であると思うが、とはいえ、それに対してどうするかを、国民個人こじんに委ねて、政府がおしまいにしてしまう、というのは、自主性を重んじるという以上に、責任の放棄ではあるまいか。
もちろん、経済的な補助はできかねるだろうし、そうしたなかで、外出に関して、「自粛を要請する」のではなく、「自粛を強制する」ことなどできはしまい。しかし、そのような手でも打たない限り、感染拡大をとめることはむずかしかろう。
一方で、国民も、例年どおりの年末年始など、迎えられないことを覚悟すべきであろう。
引用・参考文献
イラスト
「ダ鳥獣戯画」(https://chojugiga.com/)
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