コロナ渦不染日記 ＃24
六月二十日（土）
○朝から晴れ。六月とは思えぬ好天。
○午前中は日記を編集。
ここ二ヶ月ほど、週末に作業をする場合には巣穴の外のポーチで行っているが、今日のような好天だと、さわやかな風が吹きつけてきてたいそう心地がいい。ポーチにはひさしがついているので、雨の日も安心である。
○いよいよ特別定額給付金の給付申請をする。必要事項を記入し、身分証明書と口座番号のわかる書類（キャッシュカードでよい）のコピーを貼付するだけで、しごく簡単であった。
○風のうわさによれば、このたびの定額給付金が、申請してから振り込まれるまでには、現状でも二週間から四週間が必要であるという。
申請受付初期のような、人手不足や不慣れによる混乱は、いまはもう少なくなっているだろうから、そこは自治体を信用するにやぶさかではないが、しかし、申請用紙が届くまでの時間も含めて、これはあきらかに「遅い」といわざるをえない。
ぼくの仕事は、なん度か書いたが、緊急事態宣言下でも収入が減らなかった。しかし、世のなかにはそういう仕事ばかりでもあるまい。また、この災禍とその生みだした「コロナ渦」によって、仕事をなくしてしまった人もあったろう。そういう方々にむけた生活の支援が、この特別定額給付金の意義のひとつであったとすれば、この「スピード感」の時点で、このたびの給付金制度は失敗といってよかろう。
だが、失敗は、次なる施行の改善のためにこそある。そのような余裕をもつことこそ、豊かさである。ならば、この失敗をふまえて、次はもっと早く給付できるように準備してほしいものである。
○郵便ポストに投函し、帰宅時に巣穴のポストを確認すると、取り忘れていた住民税の支払い用紙が届いていた。
○夜。ししジニーさんと新宿で飲む。この災禍で、主に週末に、不定期で開催されていたオンライン飲み会の、ほんらいの姿である。
場所は、新宿は末広町の「呑者家[どんじゃか]」。寄席の「末廣亭」の並びにある、新宿飲み屋の名店のひとつである。
お店は五月末まで営業自粛をしていたとのこと。そうでなくても出歩けず、集まって飲みに行くのもはばかられた二ヶ月であったから、階段をあがり、鉄の把手の扉を開けて、笑顔のすてきなおやじさんに挨拶し、壁に貼られた手書きのＰＯＰ風メニューを眺めると、戻ってきたな、という感慨がある。
パングラタン、お刺身の盛り合わせ、ラム餃子……いずれも懐かしく、そしてまちがいのない味をたのしみながら、日本酒でおっかける。今月の酒として、大好きな三浦酒造の「モヒカン娘」があったのも、酒量に拍車をかけた。
○本日の、東京の新規感染者数は、三十九人。
六月二十一日（日）
○かねてから計画している翻訳のためのイラストが届く。大学時代の後輩でイラストレーターの「じゃすみん（仮名）」に頼んでいた、ラヴクラフト「ピックマンのモデル」（「Pickman's Model」）のイラストである。同作の大オチを思えば、ぼくの指示以外に具体的なモデルなしにここまで描けた、じゃすみんの腕は相当なものだ。この日記をお読みいただいている方々にも、早晩ごらんいただけるようになると思う。ご期待をいただきたい。
○夕方近くなって、イナバさんから「ユニクロでＳＦ映画Ｔシャツが売っている」との連絡があり、岬へ出かける（ぼくの住んでいるあたりはそこまで拓けたあたりでもないので、ユニクロはないのである）。
岬のユニクロにつくと、はたして、映画Ｔがずらりと並んでいる。
なかには『2001年宇宙の旅』のＴシャツもあり、しかも以前に出ていた映画Ｔシャツシリーズとは別デザインになっており、こちらもこちらで気に入った。以下のものを買う。
・『ブレードランナー2049』「Kとポリススピナー」Ｔシャツ
○その後、イナバさんと落ちあい、「魚正宗」で夕食。
お通しで寿司が出てくるのでまずびっくりし、ハムカツがメンチカツみたいな肉々しさなのにびっくりし、刺身の新鮮さにびっくりし、ひとしきり舌鼓を打ったあと、会計時に、酒も肴もリーズナブルなことにびっくりした。
○野田サトル『ゴールデンカムイ』二十二巻を読む。
収録作前半の洋上チェイスといい、後半の「ヒグマ男」のエピソードといい、野田サトル氏は映画、特にアクション映画がお好きなのがよくわかる。そして、ただ好きなだけでなく、自身の作風に上手く取りこんで、オリジナルな作品に昇華しているのが、クリエイターとして素晴らしい。
○本日の、東京の新規感染者数は、三十一人。
イラスト
「ダ鳥獣戯画」（https://chojugiga.com/）
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