コロナ渦不染日記 #96
一月二十五日(月)
○今朝の体温は三六・〇度。
○こんな夢を見た。
何かを待ちながら、一時間くらい歯を磨き続けている。口をゆすいで吐き出すと、出てきたのは真っ黒な水である。
○仕事が忙しいので、いろいろなことを考えるのが難しくなってきた。頭がスポンジになったようで、一瞬でいろいろなものが吸い込まれていき、すぐにいっぱいになってしまうわりに、ぎゅっと握ればすぐに抜けてしまう。
○夜。映画『男たちの挽歌2』を見る。
闇取引の行われている波止場に、ジャンパー姿のレスリー・チャンが現れ、あのテーマ曲の流れるなか、スローモーションで銃撃戦をくり広げるシーンは、ほんとうに格好いい。
○本日の、全国の新規感染者数は、二七六四人(前週比-二一六四人)。
そのうち、東京は、六一八人(前週比-五八六人)。
前の週と比べて半分以下の数値になっているのを、単純によろこべないのは、感染者が報告されたさいに、濃厚接触者を追跡調査しなくなったという噂のためである。以前とおなじ計測方法ではないので、単純に数値を比較できない。
一月二十六日(火)
○今朝の体温は三六・〇度。
○『魔女たちの饗宴 現代ロシア女性作家選』を読む。
冒頭に収録された、ヴィクトリヤ・トーカレワ「重心」は、ベランダで凍死しようとした女性が、昔片想いしていた相手に似た外科医に出会ったことから始まる一夜の出来事を描いて、川原泉氏のマンガみたいなのほほんとした味わいである。恋愛がモチーフではあるものの、恋愛にとどまらない、人と人とのつながりの重要性を示すところに、普遍性がある。
○本日の、全国の新規感染者数は、三八五五人(前週比-一四六四人)。
そのうち、東京は、一〇二六人(前週比-二一四人)。
一月二十七日(水)
○今朝の体温は三六・〇度。
○夜に雨が降ったせいか、朝から大気があたたかい。大気中に水分があると、こんなにあたたかいものかと思う。巣穴のちかくの草むらは朝露に濡れ、コートのすそに珠の飾りをほどこした。
○帰宅途中、東京駅に寄って、イナバさんとラーメンを食べる。
いわゆる「二郎インスパイア」系のラーメンであるが、松戸にある有名店「とみ田」の系列店であるところが特色である。小ラーメンにライスが適当であるとイナバさんのすすめがあったので、そのようにしたが、とみ田系列というだけある、ガッツリ系ながらしっかりと調整されたスープを味わうのに、ちょうどいい分量だった。カウンターに並んだ調味料のびんのなかにお酢があり、これをひと注しすると、ガッツリした味が瞬時にさっぱり風味を加えて、いい味変になるのである。
○本日の、全国の新規感染者数は、三九七〇人(前週比-一五七九人)。
そのうち、東京は、九七三人(前週比-四九三人)。
一月二十八日(木)
○朝がまた寒い。
今朝の体温は三六・一度。
○昼過ぎから、冷え込みがきつくなり、雪が降るとの予報だったが、仕事を終えて現場を出る段には、大粒の雨かみぞれが降るばかり。傘を持たずに出てきてしまったので、駅までぬれて帰ることになった。
○本日の、全国の新規感染者数は、四一三九人(前週比-一五一四人)。
そのうち、東京は、一〇六四人(前週比-四〇七人)。
一月二十九日(金)
○今朝の体温は三六・一度。
○仕事が終わりかけたところで、翌週早々の現場に、次々と新しい案件が舞い込んでくる。しかも、その現場を、最近育成を担当している新人に任せなければならなくなってしまった。新人氏は、かつて約一年前のぼくがそうであったように、やる気はあれど不安も抱いているようすである。そばで見ていたものとしては、成長は認めるものの、このまま任せてしまっていいものか悩むところではある。
しかし、本人の覚悟を聞けば、任せるしかないと、こちらも覚悟を決めた。結局、自分ひとりでどうしようもない状況を打破するには、人を信じて任せるよりしかたがないのである。勇気のいることであるが、必要なことである。
○だが、これは、明日からの週末を、可能なかぎり、新人の準備サポートにあてる必要があるということである。できれば休みたい週末であるが、なんの武器も持たせずに、新人を戦場に送り込むのはこころ苦しいからには、ぼくじしんが、勇気をもって、覚悟を決めて、新人氏を送り出すために、こなさなければならないミッションでもある。疲れていても、やるしかない。
○現場を出てから、新人氏とやりとりをしていると、またもやどうぶつマッサージに間に合わない時間になってしまった。
○本日の、全国の新規感染者数は、三五三四人(前週比-一五一〇人)。
そのうち、東京は、八六八人(前週比-三〇七人)。
引用・参考文献
イラスト
「ダ鳥獣ギ画」(https://chojugiga.com/)
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