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「脳の健康」を考える

脳の健康は、個々人にとって深刻なものであるだけではなく、社会的にも切迫した問題であることは、前回までのテーマとして超高齢社会の現在地という切り口で書いてきました。

家族が直面した脳疾患という個人的な体験から、テクノロジーとビジネスを通じてブレインヘルスケアを社会に浸透させ、課題解決を目指す。という、これまでのお話ですが、今回は「脳の健康」についてさらに掘り下げていきたいと思います。


WHOが定義する「brain health」とは?

世界保健機関(WHO)は、brain health(ブレインヘルス:脳の健康)について「認知、感覚、社会感情、行動、運動などの脳の機能が正常に維持される状態で、人が生涯にわたって自分の可能性を最大限に発揮できること」と定義しています。

上記リンクのなかでWHOは、脳の健康を保つためには身体的健康・健康的環境・安全と安心・生涯学習・社会的つながりなどの要因に注目し、生涯にわたる“ブレインヘルスケア”の促進と予防の戦略を提案しています。

しかし、これまで脳の健康つまりブレインヘルスについては身体の健康に比べるとあまり意識されることがなく、現状は社会的リソースも少ない状況ともいえます。

それはなぜか?

自覚しづらい、脳のコト

脳の健康にとって、最大の影響因子は加齢とも言われていますが、30~70代の方に対して実施した意識調査では、特に予防したい疾患について「脳卒中や脳梗塞」「認知症」が上位にあげられました。これらは脳の健康に直結する疾患です。しかし、実際に脳の健康を意識した生活を送っている人の割合は13%~33%と低いのです。

例えば、理想とする健康な身体づくりのために毎日体重を測りながら、適度な運動を心がけたり栄養バランスに気をつけた食事を考える、また健康状態を調べるために年に1回は健康診断や人間ドックを受けたり、特定の病気を早期発見するためにオプションをつけるという方は多いと思います。

つまり、日々の暮らしの中で健康を維持していくために、まずは自分の身体の本当の状態を知ることが大切ということは浸透しているともいえます。

しかし、脳の健康は目に見えにくいため、身体の他の部分と比較して自覚が薄い場合があります。痛みや不調がない限り、多くの人は脳の状態について、あまり気にかけないことが多いのです。特に無自覚となると今すぐに対策を取る必要性を感じにくく、先延ばしにしてしまうのです。
これこそ「脳の健康」が意識されにくい理由ではないでしょうか。

脳の健康を保つには?

若い世代や中年層は、脳の疾患や認知症は高齢者になってからの問題と考える傾向があり、将来のリスクに対する予防意識が低い傾向にあります。また、高齢化社会とはいえ同じ実年齢の方を数十年前と比べてみると、現在の高齢者の方がはるかに若々しく元気であることは間違いありません。しかし、人間の健康寿命には限りがあり、長く生きるということは即ち機能的に弱っていく自分の体とのつきあいがより長くなることを意味しています。

以前のnote記事でも書きましたが、脳の可塑性が注目されています。

脳に悪い環境に自分自身を置けば知らぬ間に脳は衰えていき、逆に脳に良い環境に自分自身を置けば、脳の健康は保たれます。あるいは、その機能は向上するということも明らかになっています。脳の神経系の活動の程度によって、脳内の神経細胞の新生は活発になったりならなかったりするということです。実際に、国内外の多因子介入研究の中では、栄養管理や有酸素運動など、さまざまな活動によって認知機能の改善や維持の研究結果が報告されています。

なぜ、ブレインヘルスケアが重要か

脳の可塑性とは、脳が学習や経験によって構造や機能を変化させる能力のことです。脳卒中や神経疾患のリハビリテーションにおいて、機能回復の可能性を高める重要な要素で、以下のような種類があります。

  • 構造的可塑性:脳の細胞や組織の形や大きさが変化すること。

  • 機能的可塑性:脳の細胞や回路の働きが変化すること。

  • 認知的可塑性:脳の情報処理や学習能力が変化すること。

脳の健康に無自覚な段階、すなわち特に不安のない段階から意識をすることが、脳の健康を保つ手がかりとなります。バランスの良い食事、定期的な運動の継続、脳に刺激を与える行動や活動、社会的なつながりの確立など、日常の生活習慣に注意を払っていくことで、身体の健康と同時に脳の健康を維持し、認知症や他の脳疾患のリスクを低減できる可能性が広がり、予防につながるのではないでしょうか。

もちろん、医療技術の進歩も大いに期待されています。新しい治療法や薬の開発が進めば、患者さんとその家族にとって希望をもたらすでしょう。だからこそ、人生が続く限り、そして高齢化社会が進む限り、何よりも「脳の健康」に対する社会的な意識の向上が欠かせないのです。

人や社会とのつながりの中で

よく、Splinkという社名の由来を聞かれますが、Splinkとは源・根源を意味する「Spring」と、つながり・絆を意味する「Link」に由来しています。Springという「源」、Linkという「つながり」、この二つを合わせた「つながりの源」。人の「つながり」を最後の瞬間その時まで、病気から守り続ける、その源であるということを目指しています。

Spling(源)+Link(つながり)=Splink

病気によって、人と人のつながりが失われることのない世界を目指して
人生を通じて、つながりの中で生きられる社会を目指して

最期の瞬間その時まで、自分らしく大切な人とのつながりの中で生きられる、その源でありたいという想いが込められています。

人と人、人と社会のつながり(Link)を病気から守る、その源である、
「すべての人につながりを、その日まで」このビジョンに向かって、日本発のテクノロジーで世界の高齢化の課題に貢献していきます。

「脳の健康」に向き合うために

脳の健康に早い段階から向き合うことで、将来のリスク低減につながる可能性がある、と書いてきましたが、脳の健康を保つことは一朝一夕にできることではありません。日々の積み重ねが必要です。

まずは自分の脳の状態を知り、脳に良い生活習慣や環境を整え、脳を活性化する活動を継続的に行っていくことが脳の健康を保つことにつながり、ひいては豊かな人生にもつながっていくのではないでしょうか。

創業8年目を迎えた2024年、産業自体の転換期を迎えながら医療AIが盛り上がりを見せるなか、会社経営の深さを噛み締めています。脳の健康に不安のない段階からの予防、そして発症後の病気と共生できる社会へ―これまで以上にブレインヘルスケアを世界へ広めながら、脳の病気の課題解決に貢献していきます。


X(Twitter)ではブレインヘルスケアへの想い、起業家としての”現在(イマ)”、関連ニュース etc 毎日呟いています。
青山 裕紀 | 医療とAIの起業家 @splink_aoyama


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