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 ー深夜のバイオレンスー知的障害者の終わらない子育て。

知的障害者の息子は本にこだわりを持っています。事業所のお小遣いはずべて本を買います。支援学校の高等部までは親がすべてを管理してきました。
欲しいものは与えます。必要なものは親が用意して差し出すことが多いです。

事業所に入り、息子さんは働いて給料で欲しいもの買うことを初めて経験します。このことで労働意欲につなげます。しかし物欲に火をつけるので、大変かもしれませんと支援についての説明を受けました。

最初は「買う」という経験が乏しかったのですが、次第に好きなものを選び、欲しいものを買うというプロセスを経て、「本」を買うということにたどり着きました。すると給料をもらい、すぐに全部を使い果たすようになりました。
財布に紙幣がなくなると、私に買ってくれと迫ってきます。

事業所と相談し、支給額を本人と相談しながら週に1回お小遣いを分割支給してもらいました。するとまたすぐに使い果たすのです。欲しい本は今すぐ手に入れたいと、癇癪を起こすようになりました。

次に気に入った本を眺めていると、どうやらよだれをこぼすようで、それを水に濡らしたティッシュで、きれいにしようとするので、本の紙がめくれてくることが多くなりました。その箇所を修理してくれとせがむようになりました。
本を大切にしてくれるのならと、修理をしてきましたが、ある日修理が終わった本
をゴミ箱が捨てられていました。

お小遣いが支給されたので、新しく同じ本を買うから、汚れた本は捨てるということでした。苦労して何冊もの本を修理してきた私は激怒しました。

事業所と相談して、しばらくお小遣いを停止することにしました。本人を交えて話し合い、少しずつ工夫をしながら5年近く頑張ってきました。ようやく先月ぐらいから物欲が落ち着いてきたようでした。

ところが昨日、もう寝ようとしているときに、また本が破損したから修理して欲しいと言ってきました。しつこく命令してきますが、本を捨てる人は修理をしないという方針なので、拒否をすると、癇癪をおこし服を引っ張ったり、髪を引っ張ったりと暴力的な行動にエスカレートしてきました。

ついに私は長年の怒りが大爆発し、大げんかになりました。しかし180センチを超える息子とはまともに喧嘩にもなりません。私は顔中を引っ掻かれて流血しました。

「あんたのせいで、わたしの人生が変わった。あんたなんか大嫌い。20歳を超えたあんたの汚れた下着を手洗いして、爪を切ってるなんて、信じられない。」

わたしは長年、押し殺してきた感情を息子に叫んでいました。そして取っ組み合いの喧嘩になりました。むろん息子がいてくれたからこそ経験することのなかった世界は、デメリットばかりではありません。しかし負の感情は、ドロドロで厄介なほど溜まっていたようです。

口汚く罵りながら、自分の努力では、どうしようもない問題を日々誤魔化しながら、知らず知らずに堆積したしていることを自覚しました。こんな風に噴火するんだなぁと思い知りました。

私はよく人身事故のニュースを眺めています。見知らぬ人に対して、何かに耐えていた心にふと「魔」が差した瞬間なのだろう。おそらくこんなふうにプツンと命をたつものなのだろうと考えるのです。だれしにも起こりうること、他人事に思えないのです。

長年の経験から、夜中のうちに、事業所の方に、ことのあらましをメールで報告しました。自分で処理できない問題は、専門の方に預けるのがベストです。自分の限界を知るのです。「自分だけが、」耐えてもどうしようもない問題は、専門家か神か仏に預けるしかありません。これは私の持論です。

ある人から
「夫の仕打ちに耐えてきた、考えることもできない状態だった。あのままだと私は夫を刺していた。」こんな告白を受けました。
その人は、弁護士と出会い、そんな危機的状況から抜け出すことができたのです。

過酷な状況は、人から思考を奪います。まだ自分で考えることができるうちに、誰かに救いを求めること、これは大事なことだと思います。綺麗事では済ませない世界がここにあるのです。

息子は青ざめた顔で事業所に出ていきました。私は胸の内を書き記しながら、事業所からの連絡を待っている次第です。

書くことでスッキリした。英語の勉強を再開します。



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