Nuernberg_schedel_地図

仕事の流儀5 地理・建物・暮らし②

人の作ったものは、人にフィットするようになっています
上手くフィットできなかった失敗作もたくさんありますが、フィットする狙いで作られています。
建物も同じ。その土地の気候・風土にフィットし、使用する人の目的にフィットするように作られています。

キリスト教のカソリックに大聖堂と言われる建物があります。司教がいる聖堂です。司教というのは、カソリックの教区のとりまとめ役で、広い区域の監督役です。その下に司祭などがあり、そっちのは聖堂。
ヨーロッパにいくと、聖堂でもかなりデカイのがあって驚くけど、これが大聖堂となると人間が作ったものとは思えないほど巨大だったりします。ドイツ・ケルンの大聖堂は夜見ると巨大な怪獣のような存在感を感じます(昼見ても圧倒的ですが)。さすが世界最大のゴシック建築。

画像1

大聖堂にはいくつか役割があります。その一つが「人を集める」です。広い区域の大勢の信者が集まるのに十分な広さを持ちます。

では、大勢の人が集まるための建物には何が必要でしょうか?

これは現代の建物でも同じです。

大勢の人が通れる入り口
入り口が開く前に人が溜まる空間

二つ目は例えば駐車場なんかもそういう役割です。写真はケルン大聖堂を上から見たグーグル航空写真。

キャプチャ3

大聖堂左側の空間が大きく空いてるのがわかります。
これはカソリック以外でも同じで、例えばイギリス国教会のロンドン・ウェストミンスター寺院は建物北側と西側(グーグル航空写真の上と左)が大きく空いています。

画像4

キャプチャ4

ところが、例外があります。フランス南部アルビにあるサント・セシル大聖堂。世界最大級の煉瓦作りの建物です。

画像5

威圧的なほどデカイ建物ですが、入り口とその前の空間が非常に狭いのです(写真左。航空写真左)。

キャプチャ5

キャプチャ2

しかも玄関へ通じる道は細い、高低差10メートルほどある坂道になっています。ゴシック建築としてみたら窓が少なすぎ、大聖堂としてみたら前の空間が狭すぎる。明らかに異様な建物です。

これが建築当時のこの地にフィットしていたのです。

キリスト教で異端と言われるものの一つにカタリ派がありました。カタリ派は三位一体、幼児の洗礼、免罪符、階層的な教会組織などをした禁欲的な派。堕落してたカソリック教会にうんざりしてた一般の人、南フランスの諸侯人たちが入信しました。アルビは12世紀~13世紀、キリスト教異端のカタリ派の中心地でした。それでアルビジョア派などとも呼ばれました。
ローマを中心にしたカソリック教会にすれば穏やかではありません。自分の権威を真っ向から否定するわけですから。南フランスを支配したかったフランス国王と組んで十字軍を送り込みます。これがアルビジョア十字軍。1209年のことです。

20年に及ぶ激戦の末アルビジョア派は滅ぼされました。

そのあとにカソリックが建てた大聖堂がサント・セシル大聖堂。大聖堂の権威を保ちながら、再びやってくるかもしれないアルビジョア派に備えてる建物で、窓はできる限り少なく、人が入りにくいよう入り口は小さく、集まりにくいよう正面の空間は狭くなってます。つまりこの大聖堂は要塞でもあったのです。
建物の見方がわかると、その地の歴史も理解しやすくなります。

それが創作をする時に大きな手助けになるはずです。

このカタリ派を使った世界的なベストセラーがあります。ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?