見出し画像

全国転勤 ~容赦なき「移動」の強制~

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

前回記事のとおり、配属から4か月で兵庫県姫路市へ異動となりました。これは、私が何か問題を起こした訳ではなく、姫路で総合職が休職となってしまい、その穴埋めのピンチヒッターという形になります。

このような不定期異動の場合、バリバリ働いているベテラン社員の異動は難しく、往々にしてピンチヒッターは「新入社員」になりがちで、今回も同様に新人の私が選定されたのです。

代打

ここで、全ての従業員が同じように全国転勤をするかというと、従業員の属性によってその事情は大きく異なりますので、以前からお示ししている4象限別で、各従業員の転勤事情について記載したいと思います。

※4象限分析については以下の過去記事をご参照ください。


①「最強」の転勤事情

四象限1

就業場所:本社(コーポレート) 、海外

コーポレート業務は本社に集中していますので、原則的に本社勤務となります。また、海外でも日本と同様にコーポレート系の業務が必要になりますので、一定数は海外転勤を経て更に市場価値を高めていきます。

このように、転勤事情を切り取っても「最強」にふさわしいキャリアを歩みます。


②「社内有名人」の転勤事情

四象限2

就業場所:地方、本社(事業統括)、海外

地方と本社(事業統括)を行ったり来たりするキャリアを歩みます。一部では海外勤務もあり、海外で日系企業に対して営業や損害サービスを実施します。したがって、海外に行ったからといって、必ずしもコーポレート系の業務を経験する訳ではありません。

とはいえ、海外では色々なことをやらないといけないので、コーポレート系の仕事を担うこともありますが、あくまでメインは自らの所属する事業部に関連する業務ということになります。


③「異端児」の転勤事情

四象限3

就業場所:本社(コーポレート)、海外

コーポレート業務は本社に集中していますので、①「最強」と同じく本社勤務になります。出世が閉ざされた人たちなので、そもそも本人が積極的に海外を希望しません。

一方で、海外でコーポレート系の人材が足りていない背景もあって、出世が見込めない異端児であっても、上司から海外勤務を勧められる人もいます。


④「諦め組」の転勤事情

四象限4

就業場所:地方(たまに大都市圏)

地方を転々としながら、たまに大都市圏にも赴任します。いわゆる「転勤族」というイメージどおりの働き方ですね。子供が中学生になる時期に家族の定住先が決まり、そこから先は単身赴任となる方が多い印象です。当人にお話を聞いてみると「たまに顔を合わせるくらいの方が家庭円満だったりするんだよ」という声が多かったりします。

なお、「諦め組」でも海外勤務の可能性も無くはないのですが、残念ながら低いと言わざるを得ません。会社は全従業員に対して「とにかく英語を勉強しろ!」と言いますが、TOEICやversantの点数を上げたのに、一度も使う機会がないという人もチラホラ・・・


カテゴリー別の転勤事情(まとめ)

転勤図

転勤事情をまとめると、概ね上図のような傾向があります。もちろん様々な例外がある(特に10年前後の選抜前の若年層)のですが、全て記載をすると注釈だらけになってしまいますので、ここでは省略しています。

余談ですが、大手企業の本社業務って、些細なことを指摘しまくる人が一定数いるんですよね(笑)。こういった指摘ピープルを上手く捌かないと、注釈が増えまくって資料の見栄えがどんどん悪くなり、最終的には何が言いたいのか分かりにくい資料ができ上がるという、大手企業あるあるです。

指摘ピープル


終身雇用とのトレードオフ

以下の記事の「新入社員の違い(日本と海外)」で記載のとおり、日本型終身雇用(メンバーシップ型)において、労働者は職務を定めずに各企業へ「就社」をします。

さらに、総合職は就業場所も決められていないことから、原則的には、会社側が労働者の就業場所を指定することができると考えられています。(ここでは、細かな法的解釈は止めておきます)

したがって、日本型終身雇用(メンバーシップ型)における総合職は、雇用が保障される代わりに、「どこで(場所)」「どのような職務(ジョブ)」というキャリア形成に重要な要素を会社側に握られており、会社の指示に従って全国転勤も受け入れなければなりません。

また、就業場所が一定のエリアで固定されている一般職であっても、やりたい「職務(ジョブ)」の実現可否に関する決定権は、会社側が握っています。

このように考えると、メンバーシップ型企業における人事部の権限がいかに中央集権的で強大あるかが理解できると思います。

一方、欧米のジョブ型では事前に就業場所と職務が決められており、会社が一方的に転勤を命じることはできません。また、やりたい「職務(ジョブ)」があるなら、その職務を募集している会社の選考を通過する必要があるものの、日本型に比べてある程度は自律的なキャリア形成が可能です。とはいえ、転職を繰り返していくことが前提となってきますので、日本型企業のように終身雇用が保障されていないというデメリットもあります。

画像8


終身雇用を享受するためのコスト(労働者の負担)

ここで、会社側の視点から「終身雇用の維持」を考えてみたいのですが、それは同時に生産性の低い労働者を抱え続ける余剰コストが発生すると考えられます。そうすると、生産性の低い労働者に対する賃金のバッファーとして、例えば10人でする仕事を8人程度に人員を抑える必要があります。

その結果、働かない人(コスパの良い人)が増えるほど、正当に働く労働者の仕事量がどんどん増えてしまい、それが労働時間あたりの収益率(要するに「時給」)を押し下げてしまう訳です。私の経験上、近年では「生産性を上げよう!働き方の改革!〇〇の活躍推進!」という声かけではどうにもならないレベルで人員が逼迫しているのではないでしょうか。外資系企業に転職した今だからこそ思うのですが、「終身雇用の維持コスト」の増大と共に、日本企業が徐々にブラック化している部分もあるように感じています。

まとめますと、終身雇用を享受するために労働者が負担をするコストとしては「就業場所を選べない(特に総合職)」「職務(ジョブ)を選べない」「低生産労働者の分だけ仕事量が増え続ける」といった点が挙げられます。もちろん、「職務(ジョブ)」については上司を通じて行きたい部署への異動を実現させるという手もあるのですが、それだったら転職した方が早いのでは、、、と思うくらいに社内の異動は簡単ではないですし、何よりその人事プロセスは完全にブラックボックスです。

ここまで見ると終身雇用の悪い点ばかり目立ちますが、当然ながら終身雇用が有用だった時代もあります。

特に高度経済成長期においては、日本企業が「Japan as No,1」と言われ、終身雇用と共に世界から称賛されていました。この頃の労働者の基礎となる考え方は、「終身雇用の有名企業でがむしゃらに頑張れば報われる」という昭和的根性論が隆盛していた時代だったと言えます。(かつて「24時間戦えますか?」というCMが流行ったのはご存じでしょうか)

しかし、経済が成熟期を迎えた現在の日本においては、「24時間戦ったところで将来の賃金で報われるかは不透明」「企業側も働かない労働者を抱える余裕が無くなってきている」等のデメリットが目立ち始めており、終身雇用の崩壊と共に日本もジョブ型雇用へ移行するのではないかとも言われています。


総合職と一般職の違和感

そして、2~3週間で準備を済ませ、私は姫路へ赴任をしました。大阪のときは大きな部署の一人に過ぎなかったのですが、今回は欠員補充での異動です。とっっっっても大変でしたが、新人ながらも多くの裁量を与えられ、様々な経験をすることができた、思い出の場所です。

その場所での先輩社員は「やなぎ君は総合職だから、大変だけどXXXという業務をやって、それからXXXもやって・・・」というように、将来を見据えて様々な仕事を与えてくれました。今でも本当に感謝しています。

しかし、この様子を見ていた私と入社年次が同じ一般職の人が、以下のようにつぶやきます。

全国型と地域型って、働く場所が違うだけと聞いて地域型で入社したのに、なぜ全国型のやなぎ君だけ優遇されているの?

当時、総合職は「全国型」、一般職は「地域型」という名称に改めたばかりだったのですが、会社の採用マーケティングとしては「全国型でも地域型でも、働く場所が違うだけ!」とアピールしていたので、この疑問は当然に沸き起こるものだったと言えます。

画像9

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?