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【グッド・オーメンズS2感想文】面白かったし続きは気になるが……

はじめに:本記事の閲覧前にご注意を

 まず、本記事を読んでみようと思って下さった奇特なあなたに、最大限の感謝とご注意頂きたいことについてお伝えしたい。

 本記事は、「『グッド・オーメンズ』シーズン2(以下S2表記)で物足りないと思ったところ」を中心にした感想文だ。
 
もしあなたが以下に該当する場合、本記事はご期待に添えない。わざわざご来訪頂いた中大変申し訳ないが、以降の内容を閲覧しないようにお気を付け頂きたい。

【本記事を読んではいけない人】
◯ 『グッド・オーメンズ』S1-S2のネタバレをされたくない人(本記事は特にS2の重要なネタバレを含む)

◯ 全肯定の感想だけをとにかく摂取したい人
◯ 全肯定ではない感想を見ると悲しい気持ちになってしまう人
◯ 自分と違う意見や解釈を見ると腹が立ってコメント欄で議論したくなる、SNSで晒上げたくなる人

 とは言え、私が『グッド・オーメンズ』のファンであることに嘘偽りはない。この感想文も、誰かと議論したいと思って書いたものではないし、肯定的な感想を批判したいという意図のものではない。
 この感想文は、自分が『グッド・オーメンズ』S2に対してどうして物足りなさを覚えたのか整理したくて書いたものだ。

 もしあなたが、「自分とは違う感想文を読んで面白がるのが好き」だったら、私の稚拙な感想文にぜひお付き合い頂ければ幸いだ。
 そして何か思うところがあったなら、ぜひこの記事のコメント欄ではなく、あなた自身のアカウントのSNSやブログなどで感想文を書き綴って欲しいなぁと思う。きっと、その方が楽しいから。




 さてさて。長い前置きになった。別に大したことではないが、『グッド・オーメンズ』S2を見て私が感じたことは次の通りだ。

1)ストーリーの規模が小さくなったが、面白さは変わらない
2)だけど『もう見た』概念ばかりだった
3)成長しないクロウリーとアジラフェル

 この3つについて、今回は取り上げていきたいと思う。


1)ストーリーの規模が小さくなったが、面白さは変わらない

 『グッド・オーメンズ』S1のストーリーの軸は、「地球を案外気に入っているという理由だけで、腐れ縁で付き合いの長い天使・アジラフェルと悪魔・クロウリーが協力して、ハルマゲドンを阻止しようと奮闘する」だった。

 何それ……?

 さすが、原作者がニール・ゲイマンの物語。こちらが思いつくわけもないドラマチックな筋書きだ。名作家が考えることは違う。私はこのトンチキなあらすじに興味を持ち、S1を鑑賞してとても楽しんだ。

実は小説も読んだ。

 これを踏まえて配信されたS2は、「記憶喪失で現れた大天使・ガブリエルを天国と地獄から匿うために、天使と悪魔が奮闘する」という物語だった。
 クロウリーとアジラフェルが守る範囲が地球からガブリエルだけになったこと、ロンドンのアジラフェルの書店を中心とした話の展開だったこともあり、S1に比べるとストーリーの規模はだいぶ小さくなった。(それでも天国と地獄が関係しているのは確かだが。)

 その分登場するキャラクターの人数が限られ、ストーリーラインがそれほど増えず複雑化しなかったおかげで、画面の中で何をしているのか把握しやすかった。S1はS2よりも西洋の宗教観への理解度が求められた感じがあったが(それはそれで楽しかった)、S2はさほど知識がなくても面白味を理解出来たのも有難い。

 これらを踏まえ個人的には、S1と比べS2の方が物語の小回りが効いていると感じた。単純に各話で起きている出来事だけを見れば、S1よりも面白いなと思ったくらいだ。もしかしたら、S1を踏まえて私にも少しだけ『グッド・オーメンズ』ぢからがついていたからかもしれないけれど。
 特に、『第3章:行き着く先 死体盗掘人』や『第4章:ヒッチハイカー ナチスの人食いゾンビ』のような、一話完結で楽しめるしメインストーリーに影響する話が見られたのは幸運だった。

(こういうイースターエッグ、グッと来る)


2)だけど『もう見た』概念ばかりだった

 これはどんなドラマのS2以降でもぶち当たる壁だと思う。S1は何もかもが新鮮だった。先述の興味を惹かれるあらすじをはじめ、『グッド・オーメンズ』のS1にはそれまで知らなかった概念がたくさんあった。

 例えば、歴史上の出来事の裏にアジラフェルとクロウリーが居ただとか、ヨハネの黙示録の四騎士がバイクに乗っているだとか。そもそも天使が書店を営んでいるとか悪魔がベントレーを乗り回しているのだって、『グッド・オーメンズ』S1で初めて見た景色だった。
 そしてS1の中でクロウリーがアジラフェルに対して叫んだ、
「宇宙は広いんだ、地球が(ハルマゲドンで)ドロドロに溶けても二人で逃げればいい」
 という思い。(『シーズン1エピソード3 - 不和』にて。)

 何これ……!

 私は、天使と一緒に居たいと思っている悪魔を初めて見た。こんな風に、見たことのないものをたくさん見せてくれる『グッド・オーメンズ』S1が私は好きだった。

 だが、S2はかなり新鮮味に欠けた。いや、別にそれはいい。S1の世界観を踏まえて続編が作られるのだから、今更新鮮なことなんてなくたっていい。ストーリーは十分面白いんだから、それを楽しめれば。
 しかし、S2の鑑賞中に「これ、もう見たな……」という感覚になったのは事実だ。

 特に「もう見た」を感じたのは、アジラフェルとクロウリーの価値観の話。そりゃ世界創世の時代から存在していて、知り合ってから6000年も経っている2人なのだから、たかがドラマの期間中で価値観が変わるわけはないのだけれど……。

 S2のクライマックス、『第6章:エヴリデイ』の展開に驚いた人は多いだろう。私だって驚いた。クロウリーが人間のカップルに「(アジラフェルと)話をした方がいいわよ」と言われて素直に動くのもそうだし、アジラフェルが天国のお偉方に任命されたのもそうだし、クロウリーがアジラフェルにキスしたのだって驚いた。

 でも、正直キスシーンは霞んでしまった。私が何より驚いたのは、S2の最終話なのに、一番盛り上がるべき場面で交わされた2人のやり取りが、『もう見た』ものだった点だ

 もちろん、S2の最終話までに起きた出来事は今までに見たことがない出来事ばかりだった。だが、出来事・行動の根っこにあって主張されている価値観は、結局何にも変わっていない。

  • アジラフェルは、(S2の中でわざわざグレーゾーンについて言及するエピソードがあったのに)「天国が光で善、地獄が闇で悪」という凝り固まった思考から脱却出来ない

  • クロウリーは、S1から一貫して「2人で逃げればいい」以上のアイデアがない

 クライマックスのキスシーンで驚きながらも、私は思った。
「この話、もうS1で見た……」
 だから正直なところ、一連の出来事や行為には驚いたけれど、もう知ってるなそれ……と肩透かしを食らった気持ちでいっぱいになった。


3)成長しないクロウリーとアジラフェル

 人間だって、たった数十年しか生きていない中で出来上がった価値観から脱却するのは難しい。途方もない長い時間存在して来たクロウリーとアジラフェルが、たった数日の出来事で価値観・思い込みを新たにするのは難しいだろう。
 それでも、これはドラマだ。散々待ち侘びたS2だ。S1と全く同じ状態の2人が、全く同じ思考で動くだけでは物足りない。私はそう感じた。

 私は貪欲なファンだ。どうしても、『グッド・オーメンズ』に新しさ・斬新さを求めてしまう。突然のキスシーンよりも、クロウリーとアジラフェルが(各自で、または2人で)新しい概念を生み出しそれを元に行動する姿を見たかった。
 
新しい何かに基づいていれば、S1と同じ行動をしていても新鮮味があったはずだ。

 そもそも、女性カップル(になる前の2人の人間)がクロウリーに言った「気持ちを話すべき」というのは、ただ単に、クロウリーからアジラフェルへの「地球がドロドロになっても2人でどこかへ逃げればいい」の再確認をしろということではなかったと思う。

 クロウリーとアジラフェルが相互理解すべきなのは、お互いを憎からず思っているということではない(そんなのとっくにわかってるだろうから)。だからあの場面でクロウリーがアジラフェルにキスしたのは、成長と言うより暴走に近いように思う。
 2人が話し合うべきは、すれ違い続ける「天国が光で善、地獄が闇で悪」というアジラフェルの偏見と、クロウリーの「2人で逃げればいい」という執着についてではないだろうか。そして、初めてこれについて真剣に意見交換してお互いに歩み寄れた時、2人は成長したと言える気がする。

 クロウリーにとって「2人で逃げればいい」は最善策かもしれないが、天国に反することは悪だと思っているアジラフェルからすれば、クロウリーの提案は悪そのもの。乗るわけにはいかない。それと同じように、アジラフェルからクロウリーに言った「一緒に天国に戻ろう」も、クロウリーには同意出来ない話だ。だって2人とも、「自分の領域に来てくれたら一緒に居られるのにどうして来ないの?」で思考が止まっているから。
 お互いの提案にまるで乗れないのに、離ればなれになるのは悲しい。2人はこの一点においてちっとも噛み合わない。
 ……でもそれって、S1からわかってたことでは? なぜS2でも同じ話をするの……?

 クロウリーとアジラフェルは成長出来ず、S2でも平行線をたどったまま終わりを迎えてしまった。
 この結末のためにわざわざS2作ったの? 違うよね? 他にもっと語りたいことがあって、そのためにS2があるんだよね? そう思った。

(頭の中から離れない、と自覚したのは成長だったのかもしれないけれど……)


おわりに:なんやかんやで続きが気になる

 こんな感じで、私は『グッド・オーメンズ』S2に対して肩透かし感を覚えた。だからこそ、続きが気になって仕方がない。
 わざわざS1と同じ価値観や概念を6話かけてもう一度観客に見せたのだから、(もしも実現したら)S3はそれを踏まえたとんでもないどんでん返しがあるんじゃないか……。そう思ってしまう。

 ちなみに、ニール・ゲイマン本人はファンとのFAQでこんなやりとりをしている。
Q.「シーズン2へのGOファンダムの期待を心配していますか? 人々が期待するものと違っていて、反応がネガティブになることを心配していますか?」
A.「少なくとも私は自分が気に入ったものを作ったことになる。(脚本を読んだ人以外は誰も何を期待していいのかわからないと思うから、100%みんなが期待しないものになると思う)」
 この安定感がニール・ゲイマンのいいところ。安心する。

 わーわーあれこれ書いたけれど、結局私は、『グッド・オーメンズ』が好きだ。だからこんなにあれこれ考えてしまうし、この後どんな展開があるんだろうかと思ってしまう。
 S2に対する自分の満足度は100点満点ではなかったけれど、それでも次シーズンがあればいいなと今でも願っている。だって、あの天才ニール・ゲイマンがこの程度で終わらせてくれるわけがない。SFファンタジーの面白みは、きっとこの先にある。

 ちなみに、続編が製作されるかどうかは、最初の2週間が特に大事で、「再生数(視聴時間)」と「最終話までの完走率」によるとニール・ゲイマンが回答していた。2023/8/12頃までの数字が、Amazonプライム側の関心事らしい。結構短期間で意思決定がされるのだなと驚いた。

 よいニュースを聞ける日が来ますように。そんな風に願うのは、天国宛てがいいのか地獄宛てがいいのか。悩ましいところだ。


 そして、最後に改めて。
 この感想文は誰かと議論したいと思って書いたものではなく、自分が『グッド・オーメンズ』S2に対してどうして物足りなさを覚えたのか整理したくて書いたものだ。

 もしあなたが、私の稚拙な感想文を読み終えて何か思うところがあったなら、ぜひこの記事のコメント欄ではなく、あなた自身のアカウントのSNSやブログなどで感想文を書き綴って欲しいなぁと思う。
 その方がきっと、楽しいから。



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矢向のドラマ感想文はこちら(本記事が初のドラマ感想文です)。

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© 2023 Aki Yamukai

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