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#マンガ感想文 はるな檸檬「ダルちゃん」

本棚の整理をしていて、久しぶりに再読したので感想を少し書いてみようと思う。

あらすじ
ダルダル星人のダルちゃんは、派遣社員のマルヤマナルミという女性として、人間のふりをして生活をしている。
むりやり窮屈なストッキングとハイヒールを履き、会社に勤めている。
ダルちゃんは小学生時代にはいじめられ、派遣社員生活の中でも生きづらさを感じている。そんなダルちゃんが自分の居場所を求め探す物語。

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この物語でいうダルダル星人とは、一見するとわかりづらい、マイノリティである存在を指しているようだ。
擬態とは、マジョリティっぽく振る舞うということらしい。
そのマジョリティも、どこかで押し付けられたようなイメージだったりするのだが。

「生きづらさ」「普通って何?」といったテーマを描いていたようだが、ダルちゃんは、「素の自分を好きだと思えたら擬態も苦痛じゃない」という結論に至る。
ダルちゃんに寄り添ってくれたサトウさんも、結婚によって救われたという展開に、もやっとした。
更にサトウさんは、子供ができない体だから結婚できないと思っていたら、それでも良いと言ってくれる相手と結婚することになり、そしたら妊娠できた、よかった、というオチ。
物語全体的に「女性の幸せは恋愛、結婚、出産です」と言っているように見えてしまったのは、私だけだろうか?
生きづらさ(特に女性の生きづらさ)がテーマに描かれている作品として、結局は男性に認めてもらうことが、彼女たちの求めるものとして描かれていることがひっかかる。

サトウさんは結婚をして妊娠をして「普通」の世界へ行けたのでよかった。
ダルちゃんは自分を好きになれたから苦痛を受け入れ、擬態を続けている。

これは、このようなテーマの物語として、ハッピーエンディングなのだろうか。

結局、マイノリティの生きづらさを変えるのは「社会が変わるコト」ではなく、「自分が変わるコト」なんだ、として描かれているような気もする。
自分が変わるコトも大事だけれど、現実的な救いなのかもしれないけれど。

ダルちゃんは結果的に作詩という分野で才能を評価された。専門誌に作品が掲載されるほど、承認された。
自分にあった職場を見つけることもできた。

みんなと一緒じゃない。けれどこれといった特技や能力もない。
そんな人はどうすればいいんですかね?
それじゃだめなんですかね?
なんて思いがチラついてしまった。

そんなことを考えさせられたことも含めて「もやっ」を感じる結末だった。

〈文・見出しイラスト/犬のしっぽヤモリの手〉
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<© 2023 犬のしっぽヤモリの手 この記事は著作権によって守られています>

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