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「言葉で送る応援歌」脳出血患者さんから得た学び
どうして、私はこんなにもインタビューが好きなのだろうか。2021年の冬、ライターになると決意してから、インタビューと出会い、その魅力にすぐに引き込まれた。
インタビューは、人の想いに触れることができる手段のひとつだから、魅力的に感じたのだと思う。人は誰しも想いがある。自分が考える想いや信念のようなものに突き動かされ、行動が始まるように感じる。
私の想いは、【応援したい】である。
そう感じた原点である、看護師1年目の経験を記録として残したい。
一瞬で人生が変わる
【人の役に立ちたい】その気持ちから医療職を志し、看護師になった。
配属された病棟は、脳卒中センター。病棟には、脳出血や脳梗塞(脳の血管が詰まる)を発症し、寝たきりになってしまった患者さんや、言葉がでなくなってしまい自分の気持ちを表現できない患者さん、目しか動かせない患者さんなど本当にさまざまな方がいた。
脳出血や脳梗塞を発症する際、頭痛などの前兆がある場合もあるが、何の前触れもなく唐突に発症することもある。
病気を発症した途端、もう二度と会話をすることができなくなるかもしれない。その人自身と家族の人生が大きく変わる病気。そんな病気を抱える人達が治療をする病棟だった。
受け持った方の中でも、特に印象に残った患者さんがいる。脳出血を発症した40代女性のAさんだ。彼女は、刺激にほぼ無反応で寝たきりの重症だった。
自分で体の向きを変えることも、指も1本も動かせないし目も開かない、発語もできないし、食事は経管栄養だった。(鼻から胃にチューブを入れ栄養剤を注入する)
意思表示はできないけど、想いはある
意思表示ができないだけで、私たちとは何も変わらない。
この病棟に配属が決まったとき、この気持ちを大切に看護をしようと決めていた。
体を拭いたりオムツ交換をするときなど、彼女に触れるすべての動作の前に声をかけ続けるのに加え、今日のニュース、天気がいいなど自分の身の周りにあった出来事を彼女に話し続けた。
「〇〇さんは、どう思います?」と質問をしてみたり、ここだけの話なんですけど~!なんて恋愛の話もしていた。記憶は定かではないが、半年くらいはこの状態が続いていたと思う。
自分が患者さんの立場にたったとき、景色がずっと変わらず、天井を見上げ続ける生活はすぐに飽きると思う。それに、担当看護師が無言でもくもくと作業をしているだけなのは寂しく感じるかもなとも思った。
辛くて長い治療と向き合う患者さん。たとえ、意思表示が難しくても、考えていることや想いはあるはず。少しでも楽しい気持ちや明るい気持ちをもってくれたらと思い、今日の小話!なんて話をしていた。
生きたいと願う気持ち
いつものように声をかけていた時、突然彼女と目が合った。焦点が合わないようなぼんやりとした目ではなく、その眼差しからはっきりと意思を感じた。
「え・・・?Aさん!?わかりますか!?」
ゆっくりと彼女が瞬きをしたとき、驚きと感動で思わずナースコールを連打した。涙が止まらなかった。先生も先輩看護師も、みんなが彼女の様子をみて驚き、とても喜んでいた。
この日を境に、Aさんは劇的に回復していった。指が動き、体の向きを変えられるようになり、経管栄養を卒業し、介助を受けながらも食事をとれるようになった。
定位置だったベッドから離れ、車いすに乗り、日中はナースステーションで数時間過ごすことがお決まりだった。その頃には、ゆっくりではあるが、「モモちゃん」と私の名前を呼ぶようにもなった。
寝たきりだったAさんが、ここまで回復したのは医療やリハビリ技術の他に、彼女自身の生きたい、回復したいという強い想いもあったのかなと考えるようにもなっていた。
応援、ありがとう
しばらくして、彼女の転院が決まった。
体の機能を回復させるため、リハビリテーション専門病院へ転院することになったのだ。
転院する朝、挨拶に伺ったとき彼女からこんな一言をもらった。
「モモちゃん、応援、ありがとう」
新しい病院へ向かう彼女の背中を見て、じんわりと目頭があつくなった。
私、応援してたんだ。Aさんは、私の応援に精一杯応えてくれようとしたのかな・・・。そんな風に思った。
彼女からは、本当にたくさんのことを学ばせていただいた。諦めず、必死にリハビリをすること。懸命に生きたいと思う気持ち。その努力や回復までの過程を見れた経験は、一生の宝物だ。
私の想いの原点である【応援したい】は、Aさんが気付かせてくれた。
私は、インタビューを通して記事にするという形で、その人が持つ想いを応援したいのだと思う。
Aさん元気ですか?私、インタビューライターになって、色んな人や企業を応援することにしました。またいつか、どこかで会えたら嬉しいです。
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