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しょくざい

2
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#短編小説

しょくざい 2

しょくざい 2

以下の記事の続きです

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 ポケットからキーを取り出して、愛車であるミラジーノのドアを開けてふと思い出す。その馴染んだシートの感触に背中を包まれると記憶が少しずつ鮮明になっていく。今の姉さんではない、ずっと昔のまだ小さかった頃の姉さん。金魚、月明かり、陸で溺れる姉さん……イメージが頭の中を駆け巡る。

--私はもしかしたら魚の生まれ変わりなのかもしれないわね--

 遠い記憶がフラッシュバック

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しょくざい 1

しょくざい 1

 窓辺に置かれた水槽に金魚が一尾泳いでる。儚く揺蕩う尾ひれからはあなたの残り香が匂い立つ。窓枠が切り取った暖かな十二月の陽光に浮かぶのは、あなたの笑顔。

 テレビでは今日も悲惨なニュースが流れている。血を吐いて倒れる人々、泣き叫ぶ人々。そうして生まれた見えない悪意を【死神】と呼んだ。こうして人々の中に敬虔さが芽生えた。

 私は今日も祈る。死を司る神がその鎌首を私にもたげることを、次こそは自分の

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