見出し画像

セミは幼虫から成虫に

私はセミが大好きだ。

毎年夏にしか見る方のできない貴重な存在

私は小学生の頃にセミの幼虫を見つけた。地面に穴が空いていて、棒を突っ込んだらそのまま釣れた。自分で釣れたという嬉しさでそのまま服に乗ってもらい、家まで連れて帰った。時期はちょうど夏休み。そう、自由研究がある。セミの幼虫が成虫になる様子を自由研究にしようと思ったのだ。

セミを外の網戸にくっつけて夕飯を食べては見て、お風呂に入っては見てと、過保護なくらいセミの様子を伺った。しかし、全然成虫になる様子がなく、私は諦めて寝ることにした。夜、父が私を起こしてくれた。寝た私を気遣ってセミの様子を代わりに見てくれていたのだ。

外に出ると暗く、虫がなく音とたまに通る車の音しか聞こえなかった。夜に外に出ることはあまりなかったから私はとても心臓がドキドキした。少し悪いことをしているような気分で。夜の外は少しだけ涼しくて風が心地よかった。

網戸に目をやると、セミの幼虫の背中が少し開いていた。中から白い何かが見えた。今夜成虫になるんだ!と思った。しかし、セミの動きはゆっくりでずっと眺めているとまた眠くなってきた。父が、また様子が変わったら見ようと言って二人で家の中に戻った。自由研究をするためにカメラを用意して、冷たい麦茶を飲んだ。夜のテレビは不思議な感じがした。

少し経って外にカメラを持っていくと、なんとセミの頭が出ていた。きっともうすぐ成虫になると思った私はそれからずっとセミを見続けた。ゆっくりと確実に成虫になろうとしている様子を見て、がんばれがんばれと心の中で応援した。父も一緒にいてくれた。

セミの体全体が出て羽を乾かしている姿がとにかく幻想的で綺麗だった。普段見ているセミの色と全然違う。白くて透明で、玄関の灯りに照らされて。

自由研究のために写真を撮り、夜も遅かったため私はそのあと寝てしまった。

朝起きると外からはセミの大合唱が聞こえた。網戸を見てみると、幼虫だったころの抜け殻を残してセミはいなくなっていた。元気に飛んで行ったんだなと安心したと同時に昨日の幻想的な出来事を思い出してなんとも言えない気持ちになった。

毎年セミの時期になると私は地面に空いている穴を探す。今年の夏はどんな出会いがあるのか楽しみだ。

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは、私の夢である絵本作家になるための活動費に使わせていただきます。